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世界の平均健康寿命の実態をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 健康な生活を送れる年齢が健康寿命。(写真:アフロ)

・WHOの公開資料によれば平均健康寿命のトップはシンガポールの76.17年(※)、次いで日本の74.81年(2016年)。

・60歳時点の平均余命もシンガポールがトップの20.98年、次いで日本が20.91年(2016年)。

平均健康寿命は日本がトップ

日本は平均寿命が長い国として知られている。一方、寿命の概念には生存していればカウントされる「寿命」の他に、健康的な状態でいる年齢を意味する「健康寿命」も存在する。今回はWHO(世界保健機関)の公開データを元に、健康寿命(Healthy life expectancy (HALE))の実情を確認する。

WHOでは健康余命について「病気やけがなどで完全な健康状態に満たない年数を考慮した、『完全な健康状態』で生活することが期待できる平均年数」と定義している。調査時点でゼロ歳における健康余命が健康寿命となることは、寿命の概念と同じ。WHOではこの概念を2000年に提唱したため、データベースでは2000年当時の値と直近値として2016年の値が収録されている。

そこでその値を用い、2016年時点の平均健康寿命の上位国を精査した結果が次のグラフ。

↑ 国別平均健康寿命(上位国、WHO公開値より、年)(2016年)
↑ 国別平均健康寿命(上位国、WHO公開値より、年)(2016年)

日本は平均寿命ではトップレベルにあることはよく知られているが、平均健康寿命は低いのではとの話も多々見聞きする。しかし実際には平均健康寿命でも他国から群を抜く形で上位にあり、しかもその状態は概念の提唱年である2000年から変わっていないことが分かる。直近の2016年ではシンガポールに次ぐ74.81年。

健康寿命は日常的に医療や介護に依存せずに、自分自身で生命を維持でき、自立生活が可能な状態の生存期間を意味するから、平均寿命に対して平均健康寿命の比率が高いほど、健康に暮らしている期間の割合が高くなり、医療費や介護費が少なく済むことになる(もっとも同時に医療費や介護費が多々必要になる高齢者数も増えるので、国全体としての金額の話は別問題となる)。

2016年の平均健康寿命のトップはシンガポールで76.17年、次いで日本の74.81年、スペインの73.81年と続く。上位陣は大よそ単純な平均寿命上位国と変わらないのが特徴だが、ある意味当然の結果でもある。なおイギリスは71.93年、アメリカ合衆国は68.51年、中国は68.67年となっている。

いくつかの指標を算出

よい機会でもあるのでいくつか関連する値を確認していく。まずは2000年から2016年にわたり、平均健康寿命がどのような変化をしたかについて。2016年時点の上位国を対象に計算した結果が次のグラフ。2016年時点の順位をそのままにして並べている。

↑ 平均健康寿命上位国における変化(2016年の上位国における2000年の値との差異、WHO公開値より、年)
↑ 平均健康寿命上位国における変化(2016年の上位国における2000年の値との差異、WHO公開値より、年)

韓国の伸びが一番高値で5年近く。続いてシンガポール、アイルランドなどが続く。日本は2.28年のプラスと伸び方が低いが、これは元々の値が高めで伸びしろが少ないのが要因。

もう一つは平均健康余命。ゼロ歳時の平均健康余命が平均健康寿命となるが、今件では60歳における平均健康余命を算出したもの。例えば日本では20.91年とあるので、2016年時点で60歳の人は、あと21年ほどは健康な状態を維持できるであろうと試算されている。

↑ 国別平均健康余命(上位国、60歳時、WHO公開値より、年)(2016年)
↑ 国別平均健康余命(上位国、60歳時、WHO公開値より、年)(2016年)

60歳時の平均健康余命でもシンガポールがトップ。次いで日本、フランスと続く。随分と差が出ているように見えるが、縦軸の最下部分が18年なので、実のところ上位20カ国でも差異は2年足らず。とはいえ、日本が高い値を示しているのも、また事実ではある。

なお健康余命の定義にある「完全な健康状態」に関する注意点を。いくつかの方法が提唱されているが、国によって採用するものが異なり、さらに同じ方法論でも国により判断基準が異なっているのが実情。よって今件の平均健康寿命の値は、同一国内における経年変化はともあれ、国ごとの比較に関しては、あくまでも指標値の一つとして参考程度に見ておいた方が無難かもしれない。

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健康寿命だけで無く寿命そのものの表現の単位には「年」「歳」の双方が使われるが、今記事では厚生労働省の寿命関連の報告書で多用されている「年」を用いる。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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