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NBAファイナルを控えて

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
ナゲッツが地区ファイナルに進出したのは2度目だった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4連勝を飾って西地区王者となったデンバー・ナゲッツを祝うセレモニーが始まると、ロスアンジェルス・レイカーズのスターである"KING"レブロン・ジェームズは、失意の表情でコートから控え室に向かって歩き出した。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 地区7位から這い上がったレイカーズは、何度も「万事休す」と思われてから息を吹き返したが、ファイナル進出は叶わなかった。東地区はボストン・セルティックスが3連敗後に3連勝し、ついに最終戦を迎える。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 5月23日にファイナルの切符を手にしたナゲッツには十分な休養と、調整時間を持てた。セルティックスが勝とうが、マイアミ・ヒートがファイナルに進もうが、疲労困憊していることは間違いないので、ナゲッツ有利という見方が出来る。

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 ナゲッツのセンター、ニコラ・ヨキッチは、地区ファイナルのMVPを獲得。トロフィーを手にした彼は柔らかな笑みを浮かべ、チームメイトからの祝福を受けた。ヨキッチは地区ファイナル第4戦で、30得点、14リバウンド、13アシストのトリプルWを記録した。

 リーグ在籍47シーズンで、NBAファイナルに進出したことがなかったチームの大黒柱となっている。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ヨキッチは言った。

 「私はチームのために、応援して下さる方々のためにプレーしている。私たちがどのように戦い抜いたかを考えると、無上の喜びを感じる。誰からも注目されなかった過去の日々を忘れはしない。ボールが弾む音は木霊したが、ファンの姿は無かったんだ」

 

 ナゲッツはプレイオフの第1ラウンドでミネソタ・ティンバーウルブズに4勝1敗、第2ラウンドではフィニックス・サンズを4勝2敗で下した。シーズン中からデンバーは圧倒的な強さを誇っていたにもかかわらず、オッズメーカーからの支持は得られなかった。ナゲッツはそれを受け入れるしかなかった。

コールドウェル・ポープ
コールドウェル・ポープ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ガードのケンテイビアス・コールドウェル=ポープは言った。「俺たちは負け犬だと思われている。自分たちがやっていることが、十分に評価されない。しかし、あまり話題にならないからこそ、怒りのエネルギーを使って、周囲の間違いを正したいね」

ケガから復活したマレー
ケガから復活したマレー写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ナゲッツは2021年4月に、スターガードのジャマール・マレーが左膝の前十字靭帯断裂に見舞われた。ナゲッツのコーチ、マイケル・マローンによると、マレーはその翌日、涙を流しながら「ナゲッツは俺をトレードするのか?」と訊ねたそうだ。

 が、マローンはマレーを抱きしめ「NOだ。お前さんは、ナゲッツの人間だ。我々はジャマール・マレーを愛している。だからこそ、もっともっといい選手になるんだ」と応じた。

 マレーは同シーズンの残りと、昨季を全欠場したが、今年のプレイオフで、ナゲッツの忍耐と哀しみは報われた。マレーは負傷前と遜色ない状態になり、ヨキッチも不動のエースとして堂々たるプレーを続けた。12月に西地区1位に浮上し、一度も首位から転落することはなかった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 デンバー・ナゲッツは、万全を期してファイナルの舞台に立つ。その相手となる東地区王者の座を射止めるのはボストンか、マイアミか。今季のNBAも本当に熱い!

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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