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史上最強の棋士・羽生善治九段(51)負ければA級陥落の鬼勝負で現棋界4強・永瀬拓矢王座(29)と対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月4日。第80期A級順位戦8回戦がおこなわれます。対戦カードは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)

▲斎藤慎太郎八段(7勝0敗)-△豊島 将之九段(4勝3敗)

△糸谷 哲郎八段(5勝2敗)-▲佐藤 天彦九段(4勝3敗)

▲菅井 竜也八段(3勝4敗)-△佐藤 康光九段(3勝4敗)

△永瀬 拓矢王座(3勝4敗)-▲羽生 善治九段(2勝5敗)

△広瀬 章人八段(3勝4敗)-▲山崎 隆之八段(1勝6敗)

 A級も最終盤を迎え、名人挑戦権争いとともに注目されるのは、残留をめぐっての戦いです。

 降級2枠のうち、すでに1枠は山崎八段と決まっています。

 残る1枠に入らないための争いは熾烈。

 名人位通算9期を含め、A級通算29期のレジェンド羽生九段は、次の8回戦で敗れれば降級決定という大ピンチを迎えています。

 将棋界において、A級は特別なクラスです。大棋士のA級残留、陥落については、常に大きな関心事となってきました。

 中原誠16世名人は52歳、谷川浩司九段(17世名人資格者)は51歳でA級から陥落しています。森内俊之九段(18世名人資格者)は46歳のときに陥落が決まったあと、自らの意思でフリークラスに転出しました。

 大山康晴15世名人(1923-92)はキャリア晩年、A級から陥落した場合には引退すると公言していました。そして何度かのピンチをしのぎ、69歳で亡くなるまで、終生A級の座を維持しています。

羽生九段は残留自力の立場

 羽生九段がピンチであることに変わりはありません。しかし前節で残留を争う永瀬王座も敗れたため、残り2戦、永瀬王座、広瀬八段に連勝すれば、自力で残留を勝ち取ることができます。

 A級1期目の永瀬王座は2連勝でスタートしたものの、その後は星が伸びず、現在は降級の可能性を残しています。現棋界「4強」の一角に数えられ、各棋戦でコンスタントに好成績を残している永瀬王座ほどの実力者であっても、陥落してしまうかもしれないあたり、A級の怖さが示されています。

 羽生九段と永瀬王座は過去に15回戦い、羽生4勝、永瀬11勝という成績が残されています。

「絶対に負けられない」というフレーズは、ともすれば安易に使われる傾向にあります。しかし「史上最強の棋士」ともいわれる羽生九段がA級の座を維持するためには、本局は文字通り、絶対に負けられない戦いとなりました。多くの羽生ファンにとっては、祈るような思いで終日、戦況を見つめることになりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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