次々にスター選手の招集に成功しているWBC米国代表を支える元エンジェルスGMの辣腕
【スター選手が続々参加表明するWBC米国代表】
来年3月に開催される第5回WBCに向け、連覇を目指す米国代表が順調にスター選手の招集に成功している。
現地時間の8月29日にはMLBは、JT・リアルミュート選手(フィリーズ)に次ぐ第2の捕手としてウィル・スミス選手(ドジャース)が米国代表に加わることを正式発表した。
これで7月18日にチーム主将として最初の米国代表入りが明らかになったマイク・トラウト選手(エンジェルス)から計12選手のロースター入りが決定している。すでに日本でも大々的に報じられているように、まさにオールスター級の選手ばかりが揃った豪華メンバーだ。
とりあえずポジション別に見てみると、以下の通りだ。
・捕手:JT・リアルミュート選手、ウィル・スミス選手
・一塁:ピート・アランソ選手(メッツ)、ポール・ゴールドシュミット選手(カージナルス)
・二塁:トレバー・ストーリー選手(レッドソックス)
・遊撃:ティム・アンダーソン選手(ホワイトソックス)
・三塁:ノーラン・アレナド選手(カージナルス)
・外野:マイク・トラウト選手、ムーキー・ベッツ選手(ドジャース)、ブライス・ハーパー選手(フィリーズ)、セドリック・マリンズ選手(オリオールズ)、カイル・タッカー選手(アストロズ)
【米国代表の編成を担当しているリーギンスGM】
豪華メンバーは選手だけではない。すでに全陣容が明らかになっているコーチ陣もかつてのスター選手たちが名を連ねている。
監督は選手としてWBC参加経験のあるマーク・デローサ氏が務める他、ベンチコーチにホワイトソックスとメッツで9シーズン監督を務めたジェリー・マニュエル氏、投手コーチにヤンキース黄金時代を支えたアンディ・ペテット氏、打撃コーチにMLB屈指のスターで殿堂入りも果たしているケン・グリフィーJr.選手等々、過去の米国代表以上のメンバーを揃えている。
この米国代表の編成を担っているのが、7月14日に同チームのGM就任が発表されたトニー・リーギンス氏だ。就任発表からわずか4日後にトラウト選手の代表招集に成功するなど、ここまでリーギンス氏の辣腕が光っている。
【選手育成の手腕が評価され2015年にMLBへ】
リーギンス氏がWBCの米国代表にかかわるのは初めてのことだが、すでにチーム編成担当者として数多くの実績を残している。おそらく彼の名前に馴染みのあるMLBファンの方もおられるはずだ。
直近では昨年開催された東京五輪の米国代表でもGMを務め、マイナー選手とNPB所属選手しか招集できない不利な状況ながら侍ジャパンとの決勝戦まで駒を進め、見事銀メダル獲得に成功している。
ただ米国代表のGM職はあくまで臨時であり、リーギンス氏はエンジェルス時代の選手育成の実績が評価され、2015年にユース育成プログラム担当副社長としてMLBに迎え入れられた。現在はMLBで育成担当最高責任者を務める傍ら、各世代の米国代表を統轄するUSAベースボールの理事会メンバーに名を連ねている。
【低迷前のエンジェルスを支えたリーギンス氏】
またリーギンス氏は、エンジェルスのフロントスタッフ時代にもGMを務めた経験がある。
選手育成担当ディレクターを担当していた際に、マイク・ナポリ選手、ケンドリス・モラレス選手、ハウィー・ケンドリック選手等々、次々に選手をメジャーに送り出した実績を評価され、2007年にGMに抜擢された。就任当時MLB史上5番目となる黒人GM誕生と話題を集めたりもしていた。
リーギンス氏のGM在任期間中、エンジェルスの通算成績は363勝285敗と大きく勝ち越しに成功。2008年には現在もチーム最多勝記録となっている100勝を記録するとともに、2008、2009年と地区連覇に導いている。
編成面では長年エンジェルスで主力を務めたトリイ・ハンター選手の獲得に成功したほか、トラウト選手をドラフト指名したのもリーギンス氏だった。また同氏は、松井秀喜選手や高橋尚成投手の獲得にも尽力している。
だが2011年シーズン開幕前に選手獲得を巡りアルテ・モレノ・オーナーと確執が生じてしまい、同年9月にGM職を辞することなった。それ以降現在に至るまで3人の人物がGMを務めてきたが、2014年にポストシーズン進出を果たしただけで、低迷を続けている。
今更「たら・れば」を語るべきではないのだろうが、もしモレノ・オーナーとの間で確執が起きず、今もリーギンス氏がエンジェルスのGMを務めていたとしたら、現在のような低迷期を迎えていただろうか。
結局モレノ・オーナーは球団売却を検討するほどの事態に陥ってしまう中、エンジェルス・ファンにとっては今更虚し過ぎる仮説なのかもしてない。