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【じっくり解説】佐々木朗希の契約合意が来年1月15日になると予想したコミッショナー発言の意味するもの

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
米国で連日のように報道が続く佐々木朗希投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【コミッショナーが佐々木投手について考察】

 千葉ロッテにより今オフのポスティングによるMLB移籍が容認された佐々木朗希投手だが、そのニュースが米国にもたされて以降、FA市場最大の注目選手の1人として連日メディアが取り上げる状況だ。

 そんな中、現地時間11月20日にメディア対応したロブ・マンフレッド・コミッショナーが、佐々木選手について興味深い発言をし、多くの主要メディアがその内容を報じている。

 それらの報道によると、コミッショナーは佐々木朗希投手の契約合意は「次期プール期間になりそうだ」という私見を述べている。

【国際FA選手と国際アマチュア選手の違いとは?】

 MLBにおける現在の佐々木投手の立場について、日本でもたびたび報じられているので説明は不要だと思うが、彼はMLBの規定により「国際FA選手」と認定されないため、「国際アマチュア選手」として扱われることになる。

 念のため国際FA選手について説明しておくと、①MLBが認定する国外リーグ(NPBも含まれる)に6年以上在籍し、なおかつ②年齢が25歳以上であることが条件になっている。

 佐々木投手は①、②ともにクリアできていないので、どう足掻いても国際FA選手に認定されることはない。そして国際FA選手に認定されたなかった選手はすべて国際アマチュ選手として扱われ、全30チームは「国際選手契約プール金制度」に則って契約しなければならないのだ。

 マンフレッド・コミッショナーが発言した「次期プール期間」とは、この制度のことを示している。ちなみに各シーズンにおける国際アマチュア選手の契約期間は、統一労働規約(CBA)により1月15日から12月15日に設定されている。

 つまりコミッショナーは、佐々木投手の契約合意は来年の1月15日以降になるだろうと考えているということを意味している。

【2025年のプール金上限額は755万5500ドル】

 MLBすべてのチームは国際アマチュア選手と契約する場合、最初の契約はマイナー契約しか提示できず、契約金も毎年設定される国際選手契約プール金の枠内に止めなければならない。

 2025年のプール金の上限額は755万5500ドルに設定されているので、佐々木投手と契約するチームはこれを超える額の契約金を支払うことは規則違反となる。そのため千葉ロッテに支払われる譲渡金(年俸+契約金の20%)も、自ずと限られてしまうことになるわけだ。

 ただ前年シーズンの国際アマチュア選手の契約状況等により、全30チームが同額のプール金を得られるわけではなく、2025年に上限額のプール金を得ているチームはレッズ、タイガース、マーリンズ、ブルワーズ、ツインズ、アスレチックス、マリナーズ、レイズの8チームのみだ。

 ちなみに米メディアが佐々木投手の契約先として有力視しているドジャースに関しては、514万6200ドルが上限となっている。

【国際選手契約プール金もトレードが可能】

 だが現時点でのプール金は参考程度にしかならない。というのも、プール金もチーム間でトレードできるためだ。

 つまり今後ドジャースが選手を放出することでプール金を獲得すれば、リーグ設定の上限額まで引き上げることが可能だということだ。

 今回の報道を受け日本では、主に国際選手契約プール金が使用される中南米アマチュア選手の契約に影響するなどという記事が散見されるが、佐々木投手と契約できるチームは1チームだけであり、その1チームにしても2025年のプール金が厳しくなる程度だ。

 とでもではないが佐々木投手が全体的な中南米選手市場に大きな影響を及ぶはずもなく、あまりに誇張すぎてはいないだろうか。

 ただコミッショナーの私見通り、契約合意が1月15日以降になるとすれば、ポスティングの契約交渉期間が45日に設定されていることを考えると、千葉ロッテからMLBにポスティングが公示される日時は影響を受けることになるだろう。

 とりあえず今後の経過に注目してほしい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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