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米メディアも期待を寄せる史上2人目の満票選出によるイチロー氏の殿堂入り

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
史上2人目の満票選出で殿堂入りの期待がかかるイチロー氏(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【本格始動した2024-25年ストーブリーグ】

 ドジャースが4年ぶりにワールドシリーズを制覇した翌日から、MLBは正式にストーブリーグに突入している。早速11月4~7日にはオフシーズン最初のビッグイベントであるGMミーティングが開催されており、今後も様々なイベントや、各種規定の締め切り日が控えている。

 FA市場に関しては、早くも数人の選手が契約合意するなど確実に動き始めているが、11月22日にノンテンダー(いわゆる日本でいうところの戦力外通告)の締め切り日を迎えるため、まだ完全にFA選手が出揃っていない状況だ。

 現時点でFA市場に名を連ねている日本人選手は菊池雄星投手、藤浪晋太郎投手、菅野智之投手の3人だが、さらに在籍NPB球団からポスティングによるMLB移籍が容認された佐々木朗希投手、小笠原慎之介投手がポスティング公示後にFA市場に加わることになり、日本では彼らの去就に注目が集まりそうだ。

【大谷選手の史上3度目のMVP満票受賞はほぼ確実?】

 ところで日本人ファンにとって今オフの関心事の1つは、DH選手として史上初のMVP受賞を目指す大谷翔平選手の行方だろう。

 ここまで米メディアの報道をチェックしている限り、大谷選手の受賞はほぼ確実といったところで、しかも史上初となる3度目の満票受賞を疑わないメディアも相当数存在している。

 ちなみに通算3度目のMVP受賞はMLB史上2位タイであり、3年連続受賞もバリー・ボンズ選手の4年連続(2001~04)に続く史上2位(こちらは単独)となる。

 来シーズンから二刀流復活により貢献度という面で他選手を圧倒できることを考えると、もちろん負傷を含めた活躍次第だが、常にMVP有力候補の1人に挙げられる存在だ。史上最多受賞記録もボンズ選手の7回なので、来シーズン以降大谷選手がどこまでボンズ選手に近づけるかにも注目したいところだ。

【投票1年目で殿堂入りが確実視されているイチロー氏】

 さらに日本人ファンとして今オフ絶対に注目すべきことは、来年1月に発表される全米野球記者協会(BBWAA)による殿堂入り選手の投票結果だ。すでにご承知の方も多いかと思うが、今年投票対象選手にイチロー選手が加わっているからだ。

 記者投票による殿堂入りについて簡単に説明しておくと、BBWAA在籍10年以上の記者全員に投票権が与えられ(ただし投票は任意)、各年の全投票数の75%以上の票を得られれば、自動的に殿堂入りすることができる。

 また75%未満に終わったとしても、得票数が全体の5%以上だったならば、翌年も投票対象としてリストに残り、最大で10年間投票対象者に残り続けることができる。

 ちなみにイチロー選手は米メディアの間で、投票1年目で75%以上の得票数が確実視されており、日本人MLB選手として初の殿堂入りは間違いないと見ていいだろう。

【イチロー氏の満票選出が順当だと主張する米メディア】

 ただイチロー氏に対する米メディアの関心はそれだけに止まらない。単なる殿堂入りではなく、2019年に殿堂入りを果たしたマリアノ・リベラ氏以来となる、史上2人目の満票選出を期待する声が上がっているのだ。

 実は11月15日に公開されたESPNの「Baseball Tonight」ポッドキャストで、興味深いやりとりが行われている。

 番組ホストのバスター・オルニー記者とレギュラーキャストであるポール・ヘンビキディス・プロデューサーは、イチロー氏の満票選出は妥当だとした上で、オルニー記者がヘンビキディス・プロデューサーに対し、「もしイチローに投票しない人がいるとするならば、その人物に何を伝えたいか」という質問をした。

 するとヘンビキディス・プロデューサーは以下の4点を指摘し、イチロー選手は満票選出されるべきだと説明している。

 1. イチロー氏以上の安打数+盗塁数を記録している選手は、ホーナス・ワグナー選手(1897年デビュー)、タイ・カップ選手(1905年デビュー)、エディ・コリンズ選手(1906年デビュー)の3人しかない。

 2. イチロー氏が樹立した年間262安打と10年連続200安打は、未だ誰にも破られていない。

 3.  マリナーズ在籍11年間で97の捕殺を記録し、その間送球エラーは9つでしかしてない。

 4.  2001年から2012年までで計911試合に出場。その出場率は98.3%に達し、他の誰よりも高い数値を残す。また24歳以降にデビューした選手で3000安打を達成したのはイチロー氏のみ(ちなみにイチロー氏は27歳デビュー)。

 果たしてヘンビキディス・プロデューサーの説明について、どれだけの記者が同意するのだろうか。

 個人的にはイチロー氏の満票選出を楽しみに待っている1人だ。ぜひ来年1月に公表される投票結果に注目して欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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