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デジタル技術がアトピー性皮膚炎治療を変える!最新研究から分かったこと

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【アトピー性皮膚炎治療におけるデジタル技術の進化】

アトピー性皮膚炎は、日本でも多くの人が悩む慢性的な皮膚疾患です。最近の研究によると、スマートフォンアプリや遠隔モニタリングなどのデジタル技術が、患者さんの自己管理や生活の質(QOL)の向上に役立つことが分かってきました。

アメリカでは、子どもの25%、大人の5.4~5.6%がアトピー性皮膚炎を抱えており、日本もかなり近い状況です。この病気は皮膚の症状だけでなく、生活の質にも大きな影響を与えます。

従来の治療法では十分な効果が得られないケースも多く、患者さんは年間9回ほどの症状悪化(フレア)を経験し、136日もの間フレア状態が続くことがあります。

【スマホアプリと遠隔モニタリングがもたらす効果】

そこで注目されているのが、情報通信技術(ICT)を活用した新しい管理方法です。特に、スマートフォンアプリや遠隔モニタリングが有望視されています。

これらの技術は、患者さんの自己管理を助け、治療への取り組みを促進し、医療従事者とのコミュニケーションを改善する可能性があります。例えば、薬の服用を忘れないようリマインドしたり、症状を記録したり、病気について学んだりするのに役立ちます。

最近の研究では、こうしたデジタル技術を使うことで、患者さんの生活の質が向上し、自己管理能力が高まることが分かってきました。具体的には、POEM(患者指向湿疹尺度)やDLQI(皮膚科生活質指数)といった指標で改善が見られています。

【日本での活用と今後の展望】

日本でも、こうしたデジタル技術の活用が徐々に広がっています。特に新型コロナウイルスの流行をきっかけに、遠隔診療への関心が高まりました。

アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、これらのデジタル技術は大きな助けになる可能性があります。特に、遠隔地に住んでいる方や、忙しくて頻繁に病院に通えない方にとっては、便利なツールになるでしょう。

ただし、デジタル技術の活用にあたっては、いくつか注意点もあります。プライバシーの保護や、データの安全な管理が重要です。また、高齢の方など、スマートフォンの操作に不慣れな方への配慮も必要でしょう。

医療従事者の側も、これらの新しい技術の使い方をしっかり学ぶ必要があります。患者さんの個別のニーズに合わせて、適切な技術を選択し、活用していくことが大切です。

今後は、さらに進化したアプリや機器が登場する可能性もあります。例えば、人工知能(AI)を活用して、より精密な症状の分析や治療法の提案ができるようになるかもしれません。日本ではアトピヨというアプリが無料で使用可能です。

アトピー性皮膚炎の治療は、薬物療法だけでなく、日々の皮膚ケアや生活習慣の改善も重要です。デジタル技術は、こうした総合的な管理をサポートする強力なツールになると期待されています。

参考文献:

1. Cherrez-Ojeda I, et al. A Systematic Review and Meta-analysis of Mobile Health Applications and Telemonitoring in Atopic Dermatitis Self-Management. Dermatol Ther (Heidelb). 2024. https://doi.org/10.1007/s13555-024-01213-0

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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