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無料配布される新型コロナの抗原検査キット 使用上の注意点は

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

新型コロナの新規感染者数が急増していることから、政府は、発熱外来を訪れる患者さんに対して無料で抗原検査キットを配布する方針を明らかにしました。抗原検査キットを使用する場合、どのような注意が必要でしょうか。

無料配布の対象者

すでに、濃厚接触者となった段階で抗原検査キットを無料配布している自治体もありますが、7月22日に「発熱外来の逼迫を軽減するため」の無料配布について提言がありました。

この対象になるのは、重症化リスクの低いと考えられる有症状者で、自身で検体を採取することが可能な方に限られます。

現在各社増産体制に入っていますが、発熱外来にはまだ無料配布用の抗原検査キットは届いていません

無料配布を発表したことで、多くの人が抗原検査キットを希望することになるでしょう。もう少し情報発信を整理しないと、発熱外来や薬局が無料の抗原検査キットを希望する人で混雑してしまうかもしれません。

また、帰省前に抗原陰性を確認しておきたい、というセルフチェック目的の人は、無料配布の対象外です。ドラッグストア等で入手していただくことになります。

以前はドラッグストアで購入する場合、抗原検査キット使用の同意書の記載が必要でしたが、現在この規定は撤廃されています。

使用するのは「体外診断用」

自治体から無料配布されるのは、厚労省が承認した「体外診断用」の抗原検査キットです。

ドラッグストアなどでセルフチェック目的で購入する場合、未承認の「研究用」抗原検査キットを買わないように注意してください。購入する前に、パッケージに「体外診断用」と書かれているかどうか、必ず確認するようにしてください。分からなければ、ドラッグストアの店員や薬剤師に尋ねましょう。

ちなみに、現時点で厚労省が販売を承認している新型コロナの抗原検査キットは、表1のようになります。インフルエンザなど他のウイルスと同時に検査できるキットもありますが、それについては割愛しています。

表. 承認済抗原検査キット一覧(筆者作成)
表. 承認済抗原検査キット一覧(筆者作成)

国が買い上げて自治体に配布するのは、シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社のクリニテストCOVID-19 抗原迅速テストです(1)。

抗原検査キットの一般的使用法

唾液で検査ができる抗原検査キットも流通していますが、「鼻腔ぬぐい液」を採取するのが一般的です。

鼻の穴から綿棒を2cmほど入れて、鼻の内側に沿わせて5回ほど回転させます(竹とんぼのようにクルクルするのではなく、鼻の中全体を綿棒でかき回す感じ)。綿球が湿るくらい、しばらく鼻腔に静置します。

その後、搾り取るようにぬぐい液のついた綿棒を検体抽出液へ調整して、液体をキットに滴下すれば検査結果が表示されます(図1)。検査が終われば、一式をごみ袋に入れてしばり封をして廃棄してください。

図1.抗原検査キットの一般的使用法(参考資料2を元に筆者作成)
図1.抗原検査キットの一般的使用法(参考資料2を元に筆者作成)

症状があり抗原検査キット陽性ならば、新型コロナと考えてよいでしょう。しかし、感度が低い検査なので、検査結果が陰性であっても、新型コロナが否定されるわけではありません。また、陽性ラインが薄いなどの判定困難な場合は、陽性と同じように対応してください(表2)。

表2. 抗原検査キットの判定(筆者作成)
表2. 抗原検査キットの判定(筆者作成)

判定に迷う場合、症状があってもかかりつけ医がおらず相談先に迷った場合は、「受診・相談センター」(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html)に相談してください。

まとめ

発熱外来や薬局で抗原検査キットが無料で配布されるのはまだ少し先になるかもしれません。

現時点で抗原検査キット陽性となった場合は全数報告となっています。医療機関や保健所の業務がもう追い付いていないので、せめて陽性となった人がセルフで報告できる仕組みを構築する必要があると思います。

(参考)

(1) 都道府県への抗原定性検査キットの配布について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000968777.pdf

(2) 新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取扱いについて(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000836277.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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