南米で大雨相次ぐ 局地的エルニーニョ発生
南米北西部、ペルーとコロンビアで大雨が相次いでいる。ペルー気象局は局地的なエルニーニョ「沿岸エルニーニョ」が発生しているとの見方を示している。しかし、今後、大規模なエルニーニョに発達するかは不透明だ。
わずか3時間で100ミリの雨
南米北西部では今年初めから大雨が頻発しています。先日はコロンビアで大規模な土砂災害が発生し、コロンビア政府によると、これまでに300人を超える方が亡くなりました。コロンビアのモコア市ではわずか3時間で100ミリを超える雨が降ったのです。
もともと、これらの地域は世界的にみても雨が非常に少ない所で、ナスカの地上絵が長期にわたって保存されていたのも、雨によって浸食されない乾燥した気候だからです。
南米北西部の相次ぐ大雨は被害の深刻さに注目が集まっていますが、実はある現象の発生を疑わせます。
南米北西部の大雨とエルニーニョの深い関係
エルニーニョは太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけての海面水温が平年より高くなる現象で、世界的に異常気象を引き起こすことが知られています。
なぜ、これらの地域で大雨が発生するとエルニーニョの発生が疑われるのでしょう。
それは海面水温が上昇すると、空気が暖められて湿り気を帯び、雨雲が発生しやすくなるからです。
通常、ペルー沖では貿易風(東風)と地球の自転効果により、海の深いところから冷水が沸き上がっているため、海面水温が低く、雨雲ができにくい気象状態です。
ペルー沿岸では今年の初めから海面水温の上昇が続いていて、平均よりも10度以上も高くなりました。ペルー気象局の専門家はペルー沿岸でエルニーニョが発生しているとの見方を示しています。
エルニーニョ予測に壁
現在は局地的なエルニーニョですが、今後は大規模なエルニーニョに発達するのでしょうか。
ペルー気象局は局地的なエルニーニョの発生は今回が初めてではなく、1925年のように規模が拡大し、世界的に影響を及ぼすおそれがあると警鐘を鳴らしています。
しかし、現時点で大規模なエルニーニョが発生する可能性はけして高くはありません。それはスプリングバリアーといって、春をまたぐエルニーニョ予測は精度が低いからです。
オーストラリア気象局は今年中の発生確率を50%と見積もるなど、今は状況を注意深くみている段階です。
【参考資料】
世界気象機関(WMO):Heavy rains cause landslides, flooding in Colombia and Peru,published 4 April 2017
ペルー気象局:Temperatura de agua de mar(TSM)
気象庁:南米北西部の大雨について,平成29年4月4日
オーストラリア気象局:ENSO Wrap-Up,El Nino WATCH remains,28 March 2017
石川一郎,2015:海洋予測精度とENSOの再現性,平成27年度季節予報研修テキスト,気象庁地球環境・海洋部,52-64.