「たった1日で月100万円」で話題の文通費を含めた国会議員の「推定年俸4800万円」
国会議員に支払われる文書通信交通滞在費(文通費)を見直すかどうかについて自民党の茂木敏充幹事長が6日から21日まで開かれる臨時国会で野党側と「まとまらないと思う」と先送りすると報じられました。日割り支給に改める点は合意できても立憲民主党と日本維新の会が使い方の公開まで求めているから無理だと。今回の火付け役となった維新副代表の吉村洋文大阪府知事は「ごまかしだ」と怒り心頭。
改めて可視化された国会議員の懐事情。果たしていくらもらえるのかを検証してみます。
基本給が年間約2200万円
国会議員の身分は特別職の国家公務員。任期があるので「正社員か非正規か」を無理やり当てはめれば非正規雇用です。衆議院議員の定数は465人で参議院が248人(22年の選挙から)。合計713人。
まずは議員個人に支給されるお金から。「歳費」と「文書通信交通滞在費」です。
国家公務員なので税金から給料が出されます。これを「歳費」(基本給に近い)と呼び、月額約130万円(129万4000円)。年2回の期末手当(ボーナスに近い)の628万円を加えると年収は約2200万円。当選回数は関係ありません。所得税が源泉徴収されます。解散がない参議院議員は当選したら6年間この「年俸」が保証されるわけです。
さていくらから「高額所得者」でしょうか。都民住宅を明け渡す基準が年約375万円(月31万3000円)、児童手当の所得制限が年960万円、高度プロフェッショナル制度の適用が年1075万円以上。何の指標から推しても明らかな高額所得者です。
「文書」「通信」「交通」「滞在」それぞれで検討すると
ここに話題の「文書通信交通滞在費」(文通費)が月額100万円(年間1200万円)。使途は法律(国会法)で「公の性質」を帯びた「文書」「通信」「交通」「滞在」に使うとあるものの、それ以上が明文化されておらずきわめてあいまい。非課税の上に領収書の提出もいらないというブラックボックスです。
戦後、「通信費」からスタート。当時は遠距離や海外の電話は長話したら途方もないカネがかかりましたが、今では国内で料金差はなく無料通話アプリメールも充実しています。廉価でビデオ会議ができるのも皆様ご承知の通り。
1960年代に「交通」が加わります。ただし国会議員は1)月4回往復分の航空券(2)月3回往復分の航空券とJRパス3)JRパスのみ、の1つを選択できます。JRパスを使えばすべてのJRがタダ。1)は沖縄県のように選挙区にJRがない議員。2)は選挙区間の往復に航空機が必要な議員が申請できるのです。経費は国会持ち。つまり税金です。
私鉄やバスも乗り放題。こちらは会社側が負担。すなわち乗客ないしは私企業が間接的に肩代わりしています。
なお委員会単位で派遣される海外視察などは「議院の公務により派遣された場合」に該当し、文通費とは別の「旅費」が手当てされるのです。
70年代に「文書」が入ってきました。言うまでもなく今やメールなどで代替できますし郵送にしてもさほどお金はかかりません。そもそも「公の性質」を帯びた「文書」とは何で誰にどんな目的で送付するか謎は深まるばかり。
90年代に最後の「滞在」が連なって完成。国会議員の「滞在」の代表格が首都圏以外で選出された者の東京での「滞在」でしょう。しかし都心の一等地に10万円を切る月額家賃で住める議員宿舎(東京23区に自宅がある議員は除外)が用意されて久しい。主要国で完備しているのは日本ぐらいです。
要するにこの非課税1200万円は単に高いというより使い道が想像できないという点で問題なのです。
「会派」で1人年780万円支給の立法事務費
次に議員個人ではなく「会派」に1人につき月65万円(年780万円)が支給されるのが立法事務費です。国会議員の本職は「法律を作る」だから、そのための研究などに充てるのを目的とします。
「会派」とは国会内の構成単位です。たいてい政党とイコールですけど他党と1つの会派を結んでも構いません。原則として2人以上。2つの会派に同時に属するのは禁止。大きくなると各委員会に所属できる議員数や質問時間などが多く取れる可能性が高まり、議案を発議する要件(衆議院20人以上、参議院10人以上。いずれも予算を伴わない法律案の場合)を満たせば議員立法も可能となります。
問題は月65万円が議員に渡っているか否か。渡っていたら毎月それだけのお金をかけて研究活動をしているか甚だ疑問だし、渡っていなければ誰が何の支出に充てているかが問われましょう。文通費と同じく使い道を公開しなくていいので謎のままです。
政党交付金をザックリ計算すると1人あたり4850万円
「政党」に入ってくるのが年間総額約320億円(国民1人あたり250円)の「政党交付金」。1994年の政党助成法成立にともない新設されました。金権腐敗を除くため国民の浄財で党を運営しようという目的で始まったのです。
ここでいう政党とは「国会議員5人以上」または「国会議員がいて直近の国政選挙(衆参いずれか)で2%以上の得票があった」のどちらかを満たした団体を指します。
法は「国は、政党の政治活動の自由を尊重し」「交付に当たっては、条件を付し、又はその使途について制限してはならない」とわざわざ「べからず条項」を付与。要するに自由に使っていいのです。
制度発足から日本共産党は受け取りを拒否しているので、同党議員と政党に属しない議員(会派は結んでいる者を含む)が衆院20人、参院28人(+欠員3)だから約660人が助成を受けている政党の構成員となります。
配分方法が面倒くさいのでエイッと1人あたりを320億円÷660人で計算すると約4850万円。もちろん入るのが政党だからイコールもらえる金額ではないとしても4分の1~5分の1で1000万円前後となる計算です。
家族でもOKな公設秘書費
さらに政策担当秘書、公設第一秘書、第二秘書の3人を雇えます。いずれも国費から給料が出て3人合わせて年間1680万円から2600万円ぐらい支払われているのです(勤続年数などで幅が出る)。公設第一と第二は資格が要らないのでちゃっかり家族を据えている場合も。こうなると実質的な給与でしょう。
政務三役での上積み
日本は議院内閣制だから与党(首相の味方)議員の場合、国会議員であると同時に行政府の官職に就くのも期待されます。政務三役 就任(国務大臣・副大臣・大臣政務官)です。うち国務大臣(20人まで)はなかなかなれませんが、副大臣(26人)、大臣政務官(27人)は比較的なりやすい。大臣政務官は当選2回で普通にあてがわれます。報酬は歳費+約240万円。副大臣で650万円。
お金もさることながら、三役最下位の大臣政務官でさえ、官僚の最高位とされる事務次官より上にランクされていて専門性が磨けるのです。例えば国土交通大臣政務官を務めたら同省が管轄する公共事業に関わる企業などが近づいてきて知り合い、後々には選挙の際の協力も期待できます。自らが代表を務める政党支部への企業・団体献金が認められているからです。
最大に見積もると年6000万円とも?
さて、ここまで述べてきたデータを一覧すると以下のようになります。
1)歳費……議員本人が受け取る。年約2200万円
2)文通費……議員本人が受け取る。年1200万円
3)立法事務費……「会派」で受け取る。1人あたり年780万円
4)政党交付金……「政党」で受け取る。単純計算で1人5000万円弱
5)3人の政策担当・公設秘書……合わせて年約2000万円ぐらい
3)と4)は全額もらえるわけではないので3)を半額(年360万円)、4)を5分の1(年約1000万円)と仮定して合算すると5)を除いて約4800万円、入れると6000万円超えの声がかかりそうな勢い。
本来ならばここで国会議員の仕事ぶりを述べないとフェアではありませんが長くなるので稿を改めます。