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アトピー性皮膚炎患者さんに朗報!IL-13阻害薬レブリキズマブが皮膚の炎症とかゆみを劇的に改善

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

アトピー性皮膚炎は、慢性的な皮膚の炎症を特徴とする疾患で、患者さんのQOLに大きな影響を与えます。強いかゆみや睡眠障害に悩まされる人が多く、日常生活にも支障をきたします。しかし、最近の臨床試験で、新しい治療薬レブリキズマブがこれらの症状を改善し、QOLを向上させることが明らかになりました。

【かゆみと睡眠障害がQOLに与える影響】

アトピー性皮膚炎患者さんの多くが、強いかゆみに悩まされています。皮膚の炎症によって引き起こされるかゆみは、ときに我慢できないほど激しいものです。夜中に痒みで目が覚めてしまい、十分な睡眠がとれないこともよくあります。睡眠不足は日中の活動にも影響し、仕事の効率が下がったり、学校生活に支障をきたしたりします。

また、かゆみのせいで外出を控えたり、人付き合いを避けたりする人もいます。見た目の問題から自信を失い、対人関係に悪影響を及ぼすことも。アトピー性皮膚炎は身体的な症状だけでなく、精神的にも大きな負担となるのです。

【レブリキズマブによる革新的な治療】

レブリキズマブは、アトピー性皮膚炎の発症に関わるインターロイキン-13(IL-13)というタンパク質を阻害する新しいタイプの治療薬です。IL-13は皮膚の炎症やかゆみに関与しているため、レブリキズマブはこれらの症状を直接的に抑制します。

第III相臨床試験ADvocate1とADvocate2では、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者さんを対象に、レブリキズマブの有効性と安全性が評価されました。その結果、レブリキズマブ投与群では16週目までにかゆみスコアが大幅に改善し、半数以上の患者さんで痒みが緩和されたことが示されました。また、睡眠障害も有意に改善し、プラセボ群と比べて睡眠の質が向上しました。

こうした症状の改善は、患者さんの生活の質にも良い影響を与えました。レブリキズマブ投与群では、QOLを評価するDLQIスコアが大幅に上昇。痒みや睡眠障害が改善した患者さんほど、QOLの向上が顕著だったのです。

【QOL改善のメカニズム】

レブリキズマブは、IL-13を阻害することでアトピー性皮膚炎の根本的な原因に働きかけます。その結果、皮膚の炎症が抑えられ、痒みが和らぎます。痒みが引けば夜も眠れるようになり、睡眠の質が高まります。

また、見た目の改善も QOL向上に寄与するでしょう。炎症が収まれば皮疹や腫れも目立たなくなり、人前に出るのが楽になります。仕事や学校での活動にも前向きになれ、ストレスも軽減されるはずです。こうした直接的・間接的な効果が相まって、患者さんの生活の質が向上するのだと考えられます。

現在、日本でもアトピー性皮膚炎に悩む人は多く、有病率は小児で13%前後、成人で2〜7%程度と報告されています。特に中等症以上の患者さんのQOLは著しく損なわれており、新たな治療選択肢が求められていました。レブリキズマブは欧州では既に承認されており、日本でも2024年5月31日より使用可能となりました。重症の患者さんだけでなく、全てのアトピー性皮膚炎患者さんのQOL改善に貢献する革新的な治療薬として、大きな期待が寄せられています。

参考文献:

Soung, J., Ständer, S., Gutermuth, J., et al. (2024). Lebrikizumab monotherapy impacts on quality of life scores through improved itch and sleep interference in two Phase 3 trials. Journal of Dermatological Treatment, 1-8.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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