グアルディオラのロドリ獲得は正解だったのか?示される「知性」と「価値」の上昇
プレッシャーを、感じない選手なのかもしれない。
ロドリ・エルナンデスを取り巻く環境は異質だった。ビジャレアルではブルーノ・ソリアーノの、アトレティコ・マドリーではガビ・フェルナンデスの、スペイン代表ではセルヒオ・ブスケッツの後釜として期待されてきた。
つまり、ロドリのキャリアは他者との比較の連続だったと言える。そのロドリに、昨年夏、ジョゼップ・グアルディオラ監督が目を付けた。マンチェスター・シティがフェルナンジーニョの後継者として獲得に動いたのである。
■大学への進学
もともと、ロドリはアトレティコのカンテラ出身選手だ。だがフベニル(高校生年代)所属時、フリアン・ムニョスがアトレティコの育成組織に携わるようになり、ロドリのアトレティコでの日々に暗雲が立ち込めた。フィジカルベースが低く、それが理由でスタメンから外されるようになり、トップ昇格できなかった。
しかしながら神はロドリを完全には見捨てていなかった。ビジャレアルからオファーが届き、彼のキャリアは続いた。彼の身長は190cmまで伸び、フィジカルの問題はなくなった。ただ身長以上に、ロドリが欲していたのは、信頼だった。「ビジャレアルでは重要な監督たちとの出会いがあった。ビジャレアルに行っていなかったら、いまの自分はないと思う」と、のちにロドリ自身が認めている。
また、ロドリのストロングポイントのひとつは、その知性だろう。それはピッチ上でのインテリジェントなプレーに留まらない。大学進学後、ビジャレアルの育成寮を離れ、大学の寮での生活を選択した。そして、ビジャレアルでトップデビューした後も、彼は勉学に励み続けた。大学では経済学を専攻していた。
「高校生の時、僕にとってのプランAは勉強だった。フットボーラーとして、どこまで辿り着けるか分からないと思っていたからだ。プロになれると知ってからも、勉強していた方が精神的に安定していたので、それを続けていた」
■アンカーの素質
グアルディオラはバルセロナでブスケッツをトップデビューさせた監督だ。2008-09シーズン、ブスケッツが初めてリーガエスパニョーラ1部のピッチに立った時、彼を知る者は少なかった。あれは、誰だ。対戦相手の指揮官でさえ、ブスケッツを知らなかった。
ロドリに関しても、マンチェスター・シティ移籍が決まった際、周囲の反応は似たようなところがあった。誰だ、あれは。アトレティコで頭角を現していたとはいえ、世界的に見れば、まだまだ名の通った選手ではなかった。
ロドリの特徴は如何なるプレースタイルにも適応できる点にある。ポゼッションのマンチェスター・シティやビジャレアル、堅守速攻のアトレティコ、いずれにおいてもロドリが欠かせない存在になったのは自明だ。グアルディオラ監督とディエゴ・シメオネ監督が彼を欲しがったのは偶然ではない。
そして、彼はダブルボランチを必要としない。ワンボランチ(アンカー)で快適にプレーする。世界有数の「5番」だ。近年、ユリアン・ヴァイグル、タンギ・エンドンべレ、ルベン・ネヴェス、ルーカス・トレイラといった選手たちが出てきている。だがアンカーの素質においてロドリを上回る選手はいない。
アトレティコはロドリ再獲得に移籍金固定額2000万ユーロ(約24億円)を支払った。シティは契約解除金7000万ユーロ(約84億円)を支払い、ロドリの獲得を決めた。彼の選手としての価値は日を追うごとに増している。