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23シーズン目を終えたJリーグの成果

松岡宏高早稲田大学 教授
(写真:伊藤真吾/アフロスポーツ)

J.LEAGUE PUB Report 2015

2015年Jリーグチャンピオンのサンフレッチェ広島がFIFAクラブワールドカップ3位決定戦に勝利し、その役割を十分に果たした。これでJリーグの長いシーズンが終わり、その2日後に2015シーズン年間総括レポート「J.LEAGUE PUB Report 2015」がリーグから発行された(http://www.jleague.jp/docs/aboutj/pub.pdf)。試合結果という“on the pitch”だけでなく、クラブ収支、入場者数、視聴率、ホームタウン活動などの“off the pitch”、つまりマネジメントの側面についてもデータを用いて総括されている。

2ステージ制の評価

その中で、今シーズン導入された2ステージ制の効果についての考察が気になる。この2ステージ制での開催については、専門家も一般ファンも、各々が評価し、賛否両論あったようだ。「前期優勝した浦和が後期も優勝していたらどうなっていたのか」、「年間勝ち点3位のガンバ大阪が広島に勝ってチャンピオンになっていたら?」など、批判は少なくなかった。一方で、Jリーグのレポートでは、「最終節まで2ndステージの優勝と年間勝点1位がもつれ、最後までエキサイティングな試合が行われたこと…(中略)…が入場者数増加に大きな影響を及ぼし…」や「2ステージ制とチャンピオンシップにより新たな集客の創出がされた」というように、入場者数増加への影響がポジティブにとらえられている。

入場者数の増減には、天候、人気クラブの成績、スタジアム改修、各種プロモーションなど、多様な要因が影響を与える。したがって、入場者数の増加と2ステージ制に因果関係があると言い切ってしまうことは危険である。ただ、1stステージ、2ndステージともに、最終節の入場者数が多かったことも含め、2015年の1試合あたり平均入場者数が前年比3.3%アップ(J.LEAGUE PUB Report 2015より)したことは事実であり、変革を目的としたこの取組には一定の評価ができるのではないだろうか。

チャンピオンシップの視聴率

そして11年ぶりに公式戦が地上波のゴールデンタイムに放送されたことも評価に値する。下の表は12月2日(水)と5日(土)に放送された「サンフレッチェ広島VSガンバ大阪」のチャンピオンシップの視聴率である。メディアの関心は関東地区の視聴率のようであり、Jリーグのレポートでも関東地区の数値が拡大表記されている。この7.6%と10.4%という数字は、見方によって評価が異なるが、首都圏のクラブが出場していないことを考えれば十分な数字であろう。

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広島での高視聴率

しかし、これよりも見るべきは広島地区の視聴率、22.6%と35.1%である。第2戦の最高視聴率は41.7%を記録した。サンフレッチェ広島にとっては、関東地区で高視聴率を得ることは全く重要ではない。ホームタウンでどれだけ注目され、どれだけ支持を得るかが重要であるため、その点でこれらの数字は高く評価できる。これは監督や選手だけでなく、クラブのマネジメントスタッフによる地元での広報活動や地域貢献活動などの成果だと見るべきである。これこそJリーグが目指す「地域社会と一体となったクラブづくり(Jリーグ規約第21条第2項より)」が推進された結果であろう。

実際にはサンフレッチェのようなクラブばかりではなく、ホームタウンでの人気向上に苦戦しているクラブも少なくない。サンフレッチェも、プロ野球の2015年最終戦で瞬間最高視聴率50.5%、平均視聴率44.5%(http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2015/10/08/kiji/K20151008011282060.html)を記録したカープにはまだまだ及ばない。ただ、23シーズン目を終えたJリーグは、全国各地でその目的を少しずつ果たしつつある。

早稲田大学 教授

1970年京都生まれ。京都教育大学卒。オハイオ州立大学で博士号(Ph.D.)を取得。専門はスポーツマネジメント、スポーツマーケティング。特に、スポーツ消費者(実施者、ファン・観戦者)の心理や行動の解明を研究テーマとし、スポーツをする人、見る人が増える仕組みづくりを検討している。現在、早稲田大学スポーツ科学学術院教授。日本スポーツマネジメント学会理事、ホッケージャパンリーグ理事なども務める。著書に、スポーツマーケティング(共著:大修館書店)、図とイラストで学ぶ新しいスポーツマネジメント(共著:大修館書店)など。

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