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米国で露呈した尹錫悦大統領の「失言」癖!米韓のメディアで騒がれた国連での「問題発言」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
国連で懇談した岸田文雄首相と尹錫悦大統領(内閣広報室から)

 恐れていた事態が起きた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の失言のことだ。

 尹大統領は多弁家で、歯に衣着せぬ発言で知られているが、時に脱線し、物議を呼んだことが大統領選挙期間中にもしばしばあった。「(金のない)人は不良食品でも食べなくてはならない」とか、「手足で労働するのはアフリカでやることだ」とか、「極貧生活して学べなかった人は自由が何か分からないだけでなく、自由が個人にとってなぜ必要なのか、その必要性すら感じることができない」と言いたい放題だった。

 そのため金鍾仁(キム・ジョンイン)総括選挙対策委員長(当時)は「これからはッセージも演説も選対が隈なくチェックする」と言わざるを得なかった。尹大統領は金総括委員長から公然と「候補は選対の指示に従い、演技さえすれば良い。そうすれば勝てる」と窘められる始末だった。

 今回は、国連総会出席のためニューヨークを訪問していた尹大統領が国際会議出席後、会場を後にする際に「議会でこの野郎どもが承認しないと、バイデンにとって非常に恥ずかしいことになる」と、朴振(パク・チン)外相ら随行者に語り掛けていたことが判明し、韓国、米国で少なからぬ波紋を呼んでいる。

 韓国では最大野党の「共に民主党」が「恥さらし」と非難の声を上げているが、米国でも主要メディアが「韓国大統領が米国を侮辱」との題目で尹大統領の発言を一斉に報じていた。

 「ABCテレビ」は「マイクに入った尹大統領の米国に対する卑俗な言葉による批判が俎上に上がっている」とのタイトルを掲げ、また「FOXニュース」も「尹大統領の不敬な反応がマイクに拾われていた」との題目を掲げ、尹大統領の「問題発言」を伝えていた。

 「ABC」も「FOXニュース」も尹大統領が「How could Biden not lose damn face if these f****rs do not pass it in Congress?'」と発言したと、伝えていたが、翻訳すれば「この野郎らが議会で通過させなければバイデンはどうやって体面を維持できるというのか?」という風に解釈される。

 一方「ワシントンポスト」は「It would be so humiliating for Biden if these idiots don‘t pass it in Congress」と発言した、と報じていた。若干ニュアンスが異なるが、「idiot」は「馬鹿者」とか「間抜け」と解釈されるので「この馬鹿どもがそれを議会で通過させなければ、バイデンにとっては非常に恥ずかしいことになる」と、言ったことになる。

 「ワシントンポスト」は韓国の野党が尹大統領の発言を「米議会を汚す毒舌、重大な外交惨事として批判している」と、韓国内での騒動も併せて伝えていた。

 「ブルームバーグ」は「(尹大統領が)バイデン大統領と米国の電気自動車補助金を含む問題を議論するために短く会った後、米議員らを侮辱する言葉が偶然に(カメラに)捕捉された」として、韓国メディアの報道を詳しく伝えていた。

 「ブルームバーグ」は尹大統領の発言が論議を呼んだ後、大統領室の高官が記者団に「大統領の発言は非公式なもので検証されていない」と語ったことも伝えていたが、「尹大統領の即興的な発言は韓国野党議員の嘲弄に直面した」と評していた。なお、今年7月に序列3位のナンシー・ペロシ下院議長が訪韓した際に尹大統領が休暇を理由にペロシ議長に会わなかったこともさりげなく言及していた。

 この他にも「CBSテレビ」が「すでに記録的な低い支持率と戦っている尹大統領が米国を卑下する発言が放送社のマイクに捕捉されたことで尹大統領は再び苦境に立たされた」と伝えていた。

 一方、韓国のメディアは大統領の不適切発言をこぞって取り上げたが、この問題を社説で扱った新聞媒体も何紙かあった。

 中立系の「国民日報」は「『卑俗な言葉』だけを生んだ尹大統領のニューヨーク首脳会談」と題して以下のように論じていた。

 「米韓首脳会談はニューヨークでの懇談だけで公式会談はなかった。国連総会に出席のため訪米した尹大統領の首脳外交の核心であった二国間会談はすべて実現しなかった。(中略)韓米首脳会談も韓日首脳会談も行われるとの大統領室の予告は結果として食言となってしまった。最も話題となったのが尹大統領が会場を去る際、米議会とバイデン大統領を念頭に置いてうっかり発してしまったと見られる卑俗な言葉が放送カメラに捉えられたことだ。恥ずかしい限りだ」

 同じく中立系の「韓国日報」も「期待外れの韓日・韓韓米会談、残念な首脳外交」の見出しの記事で「尹大統領はバイデン大統領との懇談後に会場を去る際に侮辱的な言葉を使って米議会について言及した。大統領室は単なる私的な発言に過ぎないと鎮火に努めているが、大統領の無神経な言辞が貧弱な外交成果さえも覆い隠してしまった」と書いていた。

 政府系で知られる「朝鮮日報」も「韓米・韓日首脳外交が残したもやもやした課題」と出した社説で以下のように指摘していた。

 「尹大統領が随行員らと私的に交わした言葉が偶然、テレビカメラにキャッチされたのは他の国の首脳らもしばしば経験するゴシップ性の話ではあるが、韓米首脳会談が不発となり、韓日首脳会談ももやもやした中で行われた後のこのニュースは首脳会談の外交に傷をつけた。新政権の外交の方向性は正しいが、それを裏付ける能力に欠けている印象を与えている。再整備が必要であり、誰よりも真っ先にそれをやらなければならないのは勿論、尹大統領である」

 「朝鮮日報」と並ぶ保守紙「東亜日報」は「30分間追っかけ、48秒待って、土壇場で事故...国格を顧みた外交」の見出しの社説で「大事故は尹大統領から起こった。尹大統領がバイデン大統領と会って出てくる時に卑劣な言葉を使い米議会を侮辱したかのような言葉がカメラに映し出され、それを外信が報じた。下品な言辞は外交の場に出た尹大大統領の緩んだ心と姿勢を余すところなくさらけ出した恥ずべき場面として記憶されるであろう。国民は国格を心配せざるを得ない。自尊心が損なわれた思いだ。重い反省と問責が供なければならない」と、尹大統領に猛省を促していた。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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