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メッツがリーグ優勝リングを手渡した750人のなかに、球団マスコットのミスター・メットは含まれず!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
五十嵐亮太(左)とミスター・メット SEPTEMBER 13, 2011(写真:ロイター/アフロ)

今年、優勝リング(指輪)を手にしたのはカンザスシティ・ロイヤルズの選手だけではない。昨年のワールドシリーズでロイヤルズに敗れたニューヨーク・メッツの選手も、ナ・リーグ優勝リングを手渡された。ホーム開幕戦の前日となる4月7日、メッツはシティ・フィールドのクラブハウスで優勝リングの授与式を行った。そこには、ニューヨーク州知事のアンドルー・クオモも列席していた。

リーグ優勝チームがリングを製作し、選手や球団職員に配る。これは近年の恒例となっている。ロイヤルズは昨年、ア・リーグ優勝リングを彼らに授与した。今年のメッツは、110個のダイヤモンドと42個のサファイアをはめ込んだジャスティンズ社製のリングを作った。

ただ、メッツのリーグ優勝リングを受け取った750人に、球団マスコットのミスター・メットは含まれていなかった。正確に言えば、リングをもらえなかったのは、ミスター・メットの中に入っていたスティーブン・ボルディスだ。

ニューヨーク・デイリー・ニューズのブライアン・ニーミエッツが報じている。ボルディスは昨年11月にメッツを去るまで、15年にわたって球団で働き、うち12年はミスター・メットとして働いていた。メッツの広報はニーミエッツに「昨シーズンの彼は必要とされる時間の約半分しか働いておらず、基準に達しなかったので、リングを受け取れなかった」と語っている。ボルディスは「顔に平手打ちを喰らったようなもの。僕はこれからもメッツのファンであり続けるけど、今までと同じようにはいかない」と失意を漏らし、「昨年、僕の最後の年に、メッツは僕の後任を雇った。彼らはフルタイムの仕事を得て、たぶん1ヵ月くらいしか働いていないのに、リングをもらった」とも明かしている。

球団職員にはパートタイムやインターンもいる。必ずしも全員が優勝リングを手にできるわけではない。どこかで一線を引かなければならないという、球団の事情は納得できる。とはいえ、ボルディスが落胆したのもわからないではない。メッツは2006年に地区優勝を果たしてポストシーズンに進出したが、この時はあと1勝のところでリーグ優勝を逃している。アダム・ウェインライトのカーブにカルロス・ベルトランが見逃し三振を喫して終わった、あのシリーズだ。

ボルディスが長年演じてきたのが、ファンから愛されるはずの球団マスコットだけに、メッツとしてはイメージも良くない。今後、メッツがワールドシリーズに辿り着けない年が続けば、ボストン・レッドソックスの「バンビーノの呪い」やシカゴ・カブスの「山羊の呪い」のように、「ミスター・メットの呪い」が囁かれることもあり得そうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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