ユーチューブ参考にネットで材料調達か 銃の製造、どのような罪に問われる?
安倍晋三元首相を殺害したとして逮捕された男が、警察の取調べに対し、ユーチューブの動画を参考にし、インターネットで調達した材料を使って自ら凶器の銃などを製造したと供述しているという。
武器等製造法違反や銃刀法違反も
人を殺害する目的で銃砲や銃弾を自作したり、それらを隠し持って相手の立ち寄り先で待ち伏せたりすれば、刑法の殺人予備罪が成立する。最高刑は懲役2年だ。ただ、実際にその銃で殺害に及んだら、殺人罪に吸収される。
一方、人を殺害するためか否かを問わず、経済産業大臣の許可を受けずにけん銃や小銃、銃弾などを自作したら、それだけで武器等製造法違反に問われる。最高刑は銃砲で懲役20年、銃弾で懲役7年と重い。完成に至らなくても、部品を手に入れて製造に着手していれば、未遂罪として処罰される。
さらには、たとえ自作のものでも、金属性の弾丸を発射できる装薬銃砲を所持していれば、銃刀法違反が成立する。最高刑は1丁で懲役10年、2丁以上だと懲役15年、その銃に適合する実包をも所持していたら懲役20年だ。
わが国は銃規制が厳しい
武器等製造法違反や銃刀法違反は殺人罪とは保護法益が異なるから、自作の銃で殺害に及んだとしても、殺人予備罪のように殺人罪に吸収されることはない。殺人罪と併せて処罰され、刑が加重される。
このほか、銃の製造や所持だけでなく、火薬を爆発させ、不特定・多数の者がいる場所や乗物で銃を発射すること自体も、命中の有無を問わず、銃刀法違反や火薬類取締法違反、軽犯罪法違反として処罰の対象となる。特に銃刀法の発射罪は、最高刑が無期懲役と格段に重い。
このように、わが国は銃規制が厳しい。これに反対する立場から、インターネットで入手した設計データを基に3Dプリンターなどを使って樹脂製のけん銃2丁を製造し、2014年に神奈川県内の自宅で所持していた大学職員の男性も、逮捕後の報道で職を失ったばかりか、初犯でも執行猶予が付かず、懲役2年の実刑判決を受けている。
インターネットには銃の製造方法など危険な情報もあふれているが、決して真似してはならない。(了)