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コロナ禍で「大副業時代」幕開け? アジアで最下位の「自己研鑽しない日本人」が副業で稼げるのか?

横山信弘経営コラムニスト
副業でQOL(クオリティオブライフ)は向上するのか?(写真:アフロ)

■副業するなら「ワークライフバランス」は諦めよう!

一般企業において、社員の「副業」を積極的に認めていく動きが加速している。

副業は、政府が推し進める「働き方改革」の重要なトピックスにも挙げられている。コロナ禍において在宅勤務が一般的になると、「大副業時代の幕開けか?」という報道も目にする。

しかし、私の主張は一貫している。「副業」に関しては反対派だ。副業を望む社員に、その機会を与えるのはいいが、副業を積極的にあっせんする企業の姿勢には疑問を抱く。

「キャリアの複線化」「能力・スキルを有する企業人材の活躍の場の拡大」などが「副業解禁」の目的だろう。しかし、そう簡単に副業で稼げるわけがないし、「働き方改革」の本来の目的であった「ワークライフバランス」や「クオリティオブライフ向上」が遠のく結果になる。

そもそも現代の副業とは何なのか? 

それを理解せずに副業を勧めるのは無責任としかいいようがない。実際に、本業をやりながら、副業をやってみたらいい。どれほど大変かわかるだろう。

■世の中には、どんな副業があるのか?

ところで現在、世の中にはどのような副業があるか、あなたはリストアップできるだろうか。本業ならいくらでも思いつくだろうが、なら副業は、どうだろうか。

いくら時短勤務になろうと、たとえ在宅勤務であろうと、本業をしながらできる副業はかなり限られている。

パソコンやインターネットのスキルが高く、しかもクリエイティブなセンスがある人なら、クラウドソーシングなどを利用して空いた時間で稼ぐこともできる。文章力がある人ならライティング。趣味の写真や映像処理を生かした副業もあるだろう。

副業の書籍や雑誌、ブログを大量にチェックすると、必ず出てくるのが「せどり」だ。古本や家電などを、楽天やアマゾン、ヤフオク!などで転売して稼ぐ方法だ。世の中、DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代なのに、大手経済誌が、いまだにこんな手法を紹介するのかと、がっかりした。

他人の代わりに文章を書いたり、写真を撮ったり、動画編集したり。はたまた転売して、お金を稼ぐだなんて、きわめて労働効率が悪いではないか。時間を切り売りする労働は、最もやりがいを感じられない働き方だ。本業を制限してまでやることではない。

しかも、ライティングや撮影などは、センスが求められる仕事であり、当然のことながら訓練すれば手に入れられる技術ではない(趣味ならいいが、お金をもらえるレベルになれる人は多くない)。

どうしてもそれがやりたいのであれば、それを本業にすべきである。

■副業を軌道に乗せるまでの「最低必要努力量」は?

アフィリエイトや輸入ビジネスで儲けている人も多いだろう。YouTuber(ユーチューバー)になって広告収入を狙うという選択肢もある。民泊などのシェアリングビジネスでもいいだろう。とはいえ、ここまでくると、起業と同じぐらいの覚悟がないと不可能だ。

ハンドメイド品をメルカリで売って月に5万円ぐらい稼いでいる知人がいるが、よく観察してみると、単にメルカリに出品しているだけではないことがわかる。コンスタントに稼ぐためには、マーケティングセンスや、リピート購入するファンとの関係を構築するためのコミュニケーション術も求められる。

また、「儲かる/儲からない」以前に、このような副業を軌道に乗せるまでの「最低必要努力投入量(ミニマム・エフォート・リクワイアメント)」を投下できるのか、ということも考えるべきだ。

たとえばブログを書いてアフィリエイトで月10万円稼ぐのに、どれぐらいのコストが必要か、算出できるだろうか? 経済的コスト、時間的コスト、精神的コスト――この3つのコストを、相当量投下してはじめて成し遂げられることを知っておいてほしい。

そういうことがわからない人は、

「誰でも”せどり”で年収1千万稼げる! 1日10分働くだけ!」

とか、

「輸入ビジネスで、あなたも”億り人”の仲間入り!」

といった煽りのキャッチコピーに騙され、稼げるアフィリエイターの「お客様」になるだけである。

■副業と兼業と投資を区別する

不動産や株式、FXで儲けようとするのは副業ではなく「投資(もしくは投機)」だ。10年、20年といった長期投資ならともかく、短期間で儲けようとするのは簡単ではない。相当な訓練とセンスが求められるだろう。知人の証券アナリストも「株で損しない方法を教えてあげよう。それは株に手を出さないことだ」と言っている。

代行業やポスティング、データ入力で儲ける……というのは、副業というより兼業に近い。自分の時間を投下してお金をもらうわけだから、前述したように本業をやりながらだと、必ず長時間労働の生活になる。

また、このような代行業は、AIやRPAなどのロボット技術が進化したら、消えていくような仕事とも言えるだろう。

そもそも、副業、兼業、投資、節約、ポイント集めを混同している人が多すぎる。副業は副業、兼業は兼業、投資は投資。これらのことが区別できない人は頭を整理することができていない。頭が整理できない人が、独自の力でお金を稼ぐことは難しいのだ。

副業解禁してもいい。しかし期待したとおりに稼げる人は、ほんの一握りだ。

だから「本業」をおろそかにして「副業」を意識しすぎ、騙される人が急増しないか。それが私は心配だ。情報格差、知識格差が、ますます所得格差につながっていく気がするのである。

■副業よりも「自己研鑽」しよう!

パーソルが2019年に実施した「日本の働く意識」の調査結果では、社外で自己研鑽しない人の割合が46%にものぼることが明らかになっている。

日本を含むアジア太平洋地域では、他を大きく引き離して最下位(2位のニュージーランドが約22%)であり、こんな国民が副業で成功するはずがない。

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。いろいろな企業の現場に入るが、実務以外の勉強、スキルアップに精を出している人は本当に少ない。会社に不満を抱きながらも、自分の市場価値を上げようとする努力をまるでしていないのである。

副業している時間があったらその分、自己研鑽したほうがいい。そのほうが確実に生涯年収はアップする。副業よりも、本業に活かせる知識やスキルをもっと身につけるべきだ。

みずから自己研鑽せず、市場価値を上げようとしないものだから、会社に不満があっても転職できないのである。

「人生100年時代」だ。だから、「今の本業」「未来の本業」のために、目先の小銭集めに執着しないこと。そして、”有能な”アフィリエイターたちのカモにならないよう、情報武装することが大事だ。

よほどセンスがない限り、副業で簡単に稼げることなどない。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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累計40万部を超える著書「絶対達成シリーズ」。経営者、管理者が4万人以上購読する「メルマガ草創花伝」。6年で1000回を超える講演活動など、強い発信力を誇る「絶対達成させるコンサルタント」が、時代の潮流をとらえながら、ビジネスで結果を出す戦略と思考をお伝えします。

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