ダークエネルギーの史上初観測に成功した可能性!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ダークエネルギーを史上初めて観測に成功した可能性」というテーマで動画をお送りしていきます。
ダークマターとダークエネルギー
今回のニュースに入る前に、簡単にダークマターとダークエネルギーについておさらいしていきましょう。
まずはダークマターについてです。
人類の観測技術が進歩した現在では、宇宙は未知の物質による強大な重力によって支配されていることが明らかになっています。
例えば星々の銀河に対する公転速度や、銀河同士が引き合う速度などは、人間が観測できる通常の物質による重力だけでは説明できないほど、速い速度で運動していることが知られています。
宇宙を重力的に支配している、人間が存在を知覚できない物質のことを、「ダークマター」と呼んでいます。
ダークマターは人間が知覚できる全ての物質の5-6倍程度もの質量に相当するほどたくさん宇宙に存在するようです。
そしてダークエネルギーは、実際に観測されている宇宙の加速膨張を説明するために必要なエネルギーです。
宇宙に存在する物質の重力に逆らって宇宙が加速膨張するには、それらを超えるエネルギーが必要になります。
この宇宙に存在する質量とエネルギーの総量のうち、人間が知覚できる物質はたったの約5%、ダークマターが約25%、そしてダークエネルギーが約70%とされています。
ダークマターも、そしてダークエネルギーはもっと、その正体について全くと言っていいほど理解されていません。
つまり宇宙の95%は全く解明されていないというわけです。
まだまだ宇宙はわかっていないことだらけなんですね。
去年のアクシオン検出例
では本題に入ります。今月、ケンブリッジ大学などの研究チームが、史上初めてダークエネルギーを検出することに成功した可能性があると発表しました!
そしてそのダークエネルギーを発見した可能性のある実験というのが、実は去年6月に「ダークマター」を発見することに成功したと発表され、大きな話題を呼んだ実験となります。
まずは去年発表された内容をおさらいします。
ダークマターの正体候補の一つに、アクシオンという素粒子が挙げられています。
アクシオンは非常に軽く、陽子の100兆分の1程度の質量しかない素粒子なんだそうです。
東京大学などの日本の大学も参加する国際研究チームによって行われたXENON1T実験では、-100に冷却された3.2トンの液体キセノンを使って、ダークマターの存在を探っていました。
ほとんどのダークマターは物質と衝突せず通り過ぎてしまうと考えられていますが、長期にわたって大量のキセノンを監視していれば、ごくまれにダークマターとキセノンが反応する瞬間を観測することができると考えられています。
キセノン原子を構成する電子と原子核の両方にダークマターが衝突する可能性がありますが、原子核との衝突についてはその可能性がある現象についても一度も観測されていないようです。
一方で電子との衝突について調べると、低エネルギーの範囲において実験装置中の不純物から出る放射線などによって起こる背景ノイズ分を除いても説明できないほど、高頻度で電子と何らかの物質の衝突(電子反跳)が起こっていました!
この観測結果について、研究チームは3つの可能性を考えています。
まず第1に、液体キセノン内に原子核内に中性子を2個含んだ三重水素が複数存在し、そこから放射線が放たれる可能性です。
三重水素は存在量が非常に微量であるため液体内にどれほどの個数が含まれているかがわかっていないため、背景ノイズとして除去できていないようです。
そして第2に、ニュートリノという既知の素粒子による影響です。
ニュートリノの持つ磁力とその向きを表す磁気モーメントと呼ばれる要素は0であると考えられています。
ですが、仮にそれが予想されている0より大きな値を持つ場合、今回の過剰な電子反跳を説明できるようです。
仮にこれが正しければ、素粒子にまつわる基本理論である標準理論を超える理論の構築につながるかもしれません。
最後に第3の可能性として、標準理論には含まれていない未知の素粒子アクシオンによる影響が考えられています。
実は太陽でもアクシオンが常に生成されていると予想されていて、この説が正しい場合、今回の過剰な電子反跳を非常に高精度で説明でき、これが偶然起きた可能性は、たったの0.02%程度に過ぎないんだそうです!
原因はダークエネルギーだった!?
XENON1T実験では太陽由来のアクシオンが原因の有力候補として掲げられていましたが、観測された事象を太陽のアクシオンで説明する場合、非常に多くのアクシオンが必要となります。
そしてその場合だと、現在信じられている、太陽よりも大質量でエネルギッシュな恒星の進化の説明に不都合が生じることが判明したそうです。
そこで今回発表を行ったケンブリッジ大学などの研究チームは、XENON1T実験で検出された過剰な電子反跳の原因はダークマターではなく、ダークエネルギーであるという可能性を考察しました。
ダークエネルギーによる力は、宇宙における小さく高密度のスケールでは働かず、大きく低密度のスケールでのみ働くという性質を持っています。
実際に宇宙は加速膨張しているものの、例えば太陽系内のように小さく高密度なスケールでは、重力の理論のみで運動を説明できてしまいます。
ダークエネルギーは宇宙のスケールごとに異なる影響力を持っているわけです。
研究チームはダークエネルギーの持つこのような性質を踏まえたモデルを構築し、仮に太陽内の放射層と対流層の間にある非常に磁場が強い「タコクライン」と呼ばれる領域でダークエネルギーの粒子が生成された場合、XENON1T実験でどのような結果が検出されるのかを調べました。
すると得られた予想と、実際に検出された実験結果とが高い精度で一致したそうです!
現段階ではどの可能性も確実に正しいとは言えないので、さらに確実性を高めるために追加の実験が必要となります。
XENON1Tは現在アップグレード中で、今後より高精度な実験が行われることが期待できそうです。
これが本当にダークマターや、ダークエネルギーの検出例となれば、とてつもない大発見となりますね。
続報が非常に楽しみです!