頭が悪い社会人の「勉強」のやり方 オンラインサロンで「勉強になります」と言い続けるのはやめよう!
日本の社会人は、学生時代ほど学習に時間を割かなくなる。
総務省の社会生活基本調査によれば、日本の社会人が自己啓発や勉強(読書含む)に費やす時間は、欧米諸国よりもはるかに少ないという。
とくに年齢を重ねると「仕事に必要な知識やスキル」以外を学ばなくなる。
しかし現代はビジネス環境の変化が激しく、常に新しい知識や能力を身につける姿勢がなければならない。キャリアアップはおろか自分の仕事を守ることさえ難しくなるかもしれない。
そこで今回は「社会人の勉強における勘違い」と「社会人のための超効率的な勉強法」について解説する。リスキリング、人的資本経営などに興味がある人は、ぜひ最後まで読んでいただきたい。
■社会人の勉強における勘違い
第一に指摘したいのは、多くの社会人が「実務スキル」だけを学習対象にしていることだ。たとえばシステムエンジニアならプログラミングやシステム設計、経理なら簿記や会計知識など、仕事に欠かせない能力は、あえて意識しなくても勉強する。会社も積極的に教育する。
しかしこの姿勢が長年続くと、社会人としての学習習慣がどんどん失われていく。ベテランになればなるほど、実務スキルを高めなくてもよくなっていくからだ。
第二に、「リスキリング」と称して、語学や資格取得、ITスキルを学ぼうとする人が多いことだ。
たとえばリスキリングで「プログラミングを習得したい」「ネットワークの知識を身につけたい」という声はよく聞くが、それが本当に自分の業務やキャリアに直結するのかを慎重に考えてほしい。
もし専門的なITスキルが必要であっても、情報システム部門の担当者や若いエンジニアのほうが適任だ。ちょっと勉強しただけでは勝てない。語学の勉強も決して悪くないが、「語学以外にも学ぶべきことはないのか」という視点を持つことが重要だ。資格取得についてもしかり。
業務で必要だからこそ意義があるのであって、単なるリスキリングの名目で遠回りな資格を目指すのは、時間も労力ももったいない。
第三に、「交流目的の勉強会」だ。
人が集まって、「今日はとても参考になりましたね」「勉強になります」と感想を共有するのは決して悪くない。しかし、それだけではスキルアップに結びつきにくい。オンラインサロンなどでも同じ。話を聞いて「気づき」を得るだけでは勉強としての効果は薄い。サロンオーナーの「カモ」にならないよう、十分に気を付けたい。
■社会人のための超効率的な勉強3のポイント
ベテランだけではない。若い人も一緒だ。社会人として正しく勉強しなければ生き残っていけない時代だ。そこで以下の3つのポイントを意識してみよう。
(1)実務スキルだけでなく、ポータブルスキルを学ぶ
実務スキルはマストだ。
前述したように、不可欠なのだから意識しなくても勉強するものだ。
しかしこれからの時代、厚生労働省が推奨する「ポータブルスキル」にもあるように、ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、仮説思考、メタ思考、ダンドリ力などの「コンセプチュアルスキル」と、傾聴力や質問力、コーチング力、交渉力などの「ヒューマンスキル」が不可欠だ。
問題が山積みで何から手をつけるべきか分からない人は、コンセプチュアルスキルが不足している。また、相手の心をつかむ話し方やマネジメント力なども、勉強と練習をしなければ十分に育たない。こうした能力はどの業界でも活用可能であり、いわば「持ち運び可能のスキル――ポータブルスキル」なのだ。
(2)勉強は基本的に一人で行う
仕事終わりのセミナーや勉強会に参加することは決して無駄ではない。
しかし、高校受験や大学受験、資格試験などを振り返れば明白だ。最終的に成果が左右されるのは個人の努力である。グループ学習や勉強会で得られる気づきは悪くないが、本当に身につけるためには一定の負荷をかける必要がある。
単に人の話を聞いてメモを取るだけでは次の日に活かせず、そのまま風化してしまうことが多い。知識を定着させるためには、テストなどで確認しながら、問題を解いたり演習を繰り返したりするプロセスが不可欠だ。
(3)練習とテストを繰り返す
いくら書籍を読んで理解したつもりでも、実際に演習や問題解決に取り組まなければ身につかない。ロジカルシンキングを磨きたいなら実際の課題をピラミッドストラクチャーやロジックツリーを用いて整理する必要がある。ヒューマンスキルを高めたいなら、会議や日々のコミュニケーションを見直し、発言や質問の仕方を改善する「練習」が必要だ。
単発の学習イベントで得た知識を、生きた形に変えていく作業が「練習とテスト」なのだ。
■仕事中にこそ学ぶべき理由
勉強と聞くと、「仕事が終わってから」「週末の空いた時間に」と考える人が多い。しかしポータブルスキルは仕事そのものが最高の実践の場だ。
仕事中に使うことを前提として学べば、すぐに成果やフィードバックを得られ、習得が格段に早まる。
コンセプチュアルスキルを身につければ、自分の抱えている課題を正しく整理し、優先度を見極められるようになる。時間の余裕も生まれるだろう。
ヒューマンスキルが身につけば、周囲との連携がうまくいく。協力関係も深まるため、さらに自分が勉強に割ける時間を確保しやすくなる。こうした好循環は「まず学んで、すぐ使う」からこそ起きるのだ。
■まとめ
社会人として長く活躍するには、勉強を怠らないことだ。「なんちゃって勉強法」はもうやめよう。勉強した気分を味わうのは時間のムダだ。
勘違いされがちな「実務スキルだけに集中する」「リスキリングが目的化する」「交流の場で満足する」という落とし穴を避け、ポータブルスキルを主体的に身につけることが大切だ。
<参考となる動画>