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元南アフリカ代表バッキース・ボタ、15日に日本代表と「W杯前哨戦」?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
15日は背番号「5」をつけて先発。

ラグビーの日本代表と世界選抜の試合が8月15日、東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれる。

日本代表は、4年に1度のワールドカップ(イングランド)を9月に控える。19日の初戦では、ブライトンで南アフリカ代表と激突。今季のラグビーチャンピオンシップ(南半球4か国対抗戦)では、8月8日にホームのダーバンでアルゼンチン代表に25―37で敗れるなど最下位に終わったが、強豪との評価は変わらず。パワフルな突進と肉弾戦は世界最高クラスだ。

今度の世界選抜には、その南アフリカ代表経験者も名を連ねている。その1人がバッキース・ボタ。身長202センチ、体重124キロという35歳の巨漢ロックである。同国代表のキャップ(国同士の真剣勝負への出場数)は85を数え、2007年にはフランスでのワールドカップで優勝を果たした。なお、当時のチームには、ジャパンのエディー・ジョーンズヘッドコーチがテクニカルアドバイザーとして参加していた。

ここ4シーズンはフランスのトゥーロンでプレーし、今季限りで現役を引退。今回は異国経験に憧れ、世界選抜入りの誘いに応じた。12日に応じた共同取材での話は、日本代表対南アフリカ代表戦の展望に始まり、文化論にまで発展した。

以下、一問一答。

――8月の暑い東京でラグビーキャリアを終えます。

「6月、フランスでラグビーのキャリアを終える予定でした。ただ、今回のオファーを受けて、東京でプレーできること、せっかくこういう(世界選抜という)機会を与えられたことをモチベーションにしています。きのうからきょうにかけ(取材は8月12日)、いいコミュニケーションが図れています」

――(当方質問)以前、バーバリアンズに参加した日本人選手がこんな意味合いの感想を述べていました。「練習はゆっくりなのに、試合での集中力はすさまじい」。どうしてできるのですか。

「私がいたフランスのトゥーロンも、それほどハードな練習をしないのに、試合になると激しく…という感じでした。ですから今回のチームのスタイルでプレーするのは、問題ありません。ただ、相手の日本代表はワールドカップに向けてしっかりと準備をしてきたチーム。覚悟を持って試合をしようと思っています。プレーを通して、『どれだけ準備ができているの?』という質問を彼らにしていきたいです」

――ワールドカップで、日本代表はあなたの母国である南アフリカ代表と対戦します。

「何が起こるかわからない。ワールドカップでは、ワールドランキングは関係ない。その日の強いチームが勝ちます。私自身、エディー・ジョーンズの指導を受けています。彼が南アフリカに対し、何か波風を立たせるようなことをしようとしているのでは、と思います。日本代表はそれができます。素晴らしいバックスがいるので、フォワードがしっかりマッチアップできれば、何かしらのサプライズをもたらせるでしょう。エディーは南アフリカ代表のスタッフだったこともあるので、南アフリカ代表がどんな選択肢を持ってプレーするのかをわかっている。プランを持ってゲームに臨むと思います。エディーは素晴らしいコーチです。当時にジェイク・ホワイトヘッドコーチは非常に厳しいコーチでしたが、エディーはリラックスする雰囲気をチームにもたらしてくれた」

――スプリングボクスから「日本に関する情報収集を」というリクエストは。

「スプリングボクスは、アルゼンチンに負けたことで厳しい状況に置かれていると思います。私は代表に行くのを拒否して引退を決めた身です。今回、東京にいられるということ自体だけを楽しんでいます」

――最近、日本でプレーする南アフリカ代表経験者が増えています。国内で日本への認識が変わったのですか。

「反対する人もいるでしょうが、私が思うに、ラグビーはグローバルスポーツになりつつあります。国境を越えてプレーをする。文化的側面だけでなく、財政的側面からもそうなるようになっています。私がフランスで4年間プレーしたり、若い選手が南アフリカと日本のチームを二重で契約したり…。チームへの忠誠心だけが美徳とされていた時代がありましたが、いまはそれだけではなく、自分自身や家族の人生を考えることが、ラグビー選手には必要になっています」

――ボタ選手は、他国言語を使えますね。それも海外へ飛び出す気質を作っているのでは。

「南アフリカでは11個の言語が使われています。私の場合、第1言語はアフリカ―ンで、英語も使います。いまはフランス語も覚えました。母国では、はしたないジョークは(相手にわからないように)フランス語で言うようにしています。周りにフランス語を使う人はいませんからね。…まぁ、南アフリカには多様な文化が混在していて、結果、外国の文化になじみやすいという側面はあるかもしれません。今回、東京に来ましたが、ただ観光をするのではなく、その国の人たちがどのような生活様式、仕事をしているのかを観察するのが好きです」

――(当方質問)国内では、南アフリカの選手は真面目と評判です。あなたの国のラグビー選手の特徴について、印象を語ってください。

「その評判が聞けたのは、とても嬉しいです。南アフリカにおけるラグビーはただのスポーツではなく生活の一部です。フランスでも同じようなことがあります。最初に行った時は私を含めて2人だけでしたが、いまは違う。真面目で一生懸命にやるという評判をもらっています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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