「日米は良いが、問題は韓国である」米議会調査報告書
バイデン政権は外交方針として国際社会への回帰と同盟国との関係強化を打ち出しているが、米議員や議会委員会へのアドバイス機構である米議会調査局(CRS)は2月2日に発表した日米関係に関する修正報告書の中で日韓関係について「過去数十年で最低のレベルまで悪化し、このため日米韓3か国の政策調整が弱まっている」と分析し、バイデン新政権が事態を傍観することはないと予測していた。
(参考資料:未解決の「日韓紛争」ランキング「ワースト10」)
CRSはトランプ政権下の日米関係については「2018年~2020年までトランプ前大統領と北朝鮮との外交的試みが日本を不安にさせていた」とみなし、その理由については「多くの日本人は北朝鮮が核兵器とミサイルを放棄するとは確信していないからだ」と分析。
しかし、現在の日米関係については「強固にある」として「日米両国に新たな首脳が就任したことは関係を円満にし、より大きな問題などで協力を深めることができる」とみなしている。また「バイデン大統領と菅総理は制度化された連携により依存する更なる伝統的なパートナーシップに回帰するだろう」と予測した。
そのうえで「日本の政府関係者は日本人拉致問題を優先していることからバイデン政権が北朝鮮と交渉する時にはこの問題を取り上げてもらうことを望んでいる」とも指摘していた。
一方、米韓関係はトランプ前大統領とは異なり、バイデン大統領は同盟との協力を重視する立場にはあるものの北朝鮮への対応を巡る差によって米韓間に「緊張が生まれるかもしれない」と展望していた。
報告書によると、北朝鮮を巡る対応のギャップは一つは北朝鮮に対する制裁問題で、もう一つは米韓合同軍事演習への対応であるとされている。
文在寅政権は北朝鮮に対する制裁緩和には前向きで、米韓合同軍事演習についてもペンタゴンは演習の重要性を強調し、強行する方針なのに対して文政権はこの問題で北朝鮮との協議を提唱し、北朝鮮の対応次第では中止することもやぶさかでないことが米韓不協和音の原因であるとCRSはみている。
肝心の日韓関係の現状分析ではCRSは最悪の関係に陥った原因は「2018~2019年貿易、安保、歴史関連の論争を含め両国の政府が取った一連の措置と報復的手段にある」として、これにより「両国の関係が真っ逆さまに陥る状況を招いた」と診断していた。
このためバイデン新政権は「同盟関係を再生したい」と公約していることもあって「日米韓3か国のより効果的な協力増進のため同盟間の信頼を促進する方法を検討している」とCRSは読んでいた。また、バイデン政権にとっては「中国を圧迫するため同盟の糾合と日米豪印戦略対話(クワッド)を強調していることもあって日韓関係に介入する正当性が提起されている」とも付け加えていた。
CRSは年次的にこの種の報告書を出しているが、一昨年(2019年)には2度にわたって関連報告書を出していた。
最初(6月13日)の報告書では「日韓の葛藤が日米韓3か国の対北共助を妨害している。日韓両国の相互不信で国防分野の協力が捗らない」と米国の懸念を記述し、2か月後の2度目の報告書(8月1日)でも日韓の葛藤で「日米韓の3か国共助は一層難しくなった」と指摘していた。