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メーガン夫人とヘンリー公爵、エリザベス女王とチャールズ皇太子を電撃訪問 英王室“和解”の兆し

木村正人在英国際ジャーナリスト
ニューヨークでの退役軍人を称えるイベントに参加するヘンリー公爵とメーガン夫人(写真:ロイター/アフロ)

■アーチーちゃんとリリベットちゃんは帯同せず?

[ロンドン発]英王室を離脱した2020年3月以来、イギリスを離れていたメーガン夫人がヘンリー公爵=王位継承順位6位=とともにイギリスを訪れ、14日にロンドン郊外のウィンザー城でエリザベス女王に拝謁していたことが英大衆紙デーリー・メールと英BBC放送の報道で分かった。

夫妻はヘンリー公爵の父チャールズ皇太子とカミラ夫人とも面会した。(デーリー・メール紙)

夫妻は4月16~22日までオランダで開催される負傷した退役軍人のための国際スポーツイベント、インビクタスゲームに向かう途中、イギリスに立ち寄った。今年はエリザベス女王の在位70年(プラチナジュビリー)を祝う記念すべき年にもかかわらず、3月29日に行われたフィリップ殿下の追悼式にもヘンリー公爵が欠席したことから厳しい批判を浴びていた。

ヘンリー公爵とメーガン夫人は20年1月、活動と財政上の自由を求めて「王室の上級メンバーから退く」と一方的に宣言。しかしハーフイン・ハーフアウトの地位は認められず、夫妻は英王室から完全離脱した。メーガン夫人は20年3月の英連邦記念日礼拝以来、ヘンリー公爵は昨年7月の母ダイアナ元皇太子妃像の除幕式以来、イギリスを訪問していない。

■ヘンリー公爵とチャールズ皇太子が和解か

夫妻は13日にイギリスに到着し、ウィンザー城近くのフロッグモアコテージに滞在したとデーリー・メール紙は報じている。14日早朝にはウィンザー城に向かうところを目撃されている。今回、長男アーチーちゃんと長女リリベットちゃんは帯同していないとみられる。エリザベス女王は自分の愛称から名付けられたリリベットちゃんとは会っていない。

ヘンリー公爵は昨年4月のフィリップ殿下の葬儀以来、エリザベス女王に拝謁していない。イギリスの欧州連合(EU)離脱を指す「ブレグジット(Brexit)」とメーガン夫人をもじった「メグジット(Megxit)」問題の根底には雁字搦めの王室の伝統や慣習に対するメーガン夫人の反発より、次第に自分の居場所がなくなることへのヘンリー公爵の不安と不満がある。

4月21日に96歳になるエリザベス女王は心の支えだったフィリップ殿下を失い、コロナ感染で体力の衰えが目立つようになった。毎年恒例の英連邦礼拝を含め、最近いくつかの行事を欠席している。夫妻は電話やテレビ通話でエリザベス女王と話していると主張しているものの、家族の一員としてエリザベス女王に直接拝謁してお見舞いする口実があった。

チャールズ皇太子はメグジットをきっかけにヘンリー公爵家への経済的援助を打ち切ったため、チャールズ皇太子とヘンリー公爵は言葉を交わすことはなくなり、絶縁状態になっていた。チャールズ皇太子がヘンリー公爵とメーガン夫人と会ったことは夫妻に対して何らかの“和解条件”が提示されたと考えることもできる。

■英は警護なし、オランダはVVIP待遇

夫妻は英国内では公費による身辺警護を打ち切られ、自費でボディーガードを雇わなければならない。一方、インビクタスゲームで訪れるオランダでは「VIP(最重要人物)」よりさらに重要な「VVIP」待遇の専用身辺警護チームをつけてくれるとアピールしている。

しかし夫妻はオランダのウィレム・アレクサンダー国王夫妻には拝謁できないという。

ヘンリー公爵は今年1月、身辺警護なしでは家族の安全を確保できないとして英政府を相手取り身辺警護の復活を求める法的措置を起こしている。警察による身辺警護で生じた実費はヘンリー公爵が負担すると申し出ている。

英政府の公式見解は公務をしない人には警察の身辺警護は付けられないというものだ。ロンドン警視庁が夫妻に提供していた6人の身辺警護チームの費用は年間約60万ポンド(約1億円)だった。

ヘンリー公爵がフィリップ殿下の追悼式に欠席したのも、このことが理由とみられている。このため身辺警護を巡って、皇太子から何らかの提案があった可能性もある。夫妻はすでにオランダに移動。ストリーミングサービス大手ネットフリックス(Netflix)のシリーズ「ハート・オブ・インビクタス」撮影のため、クルーが夫妻に合流する予定という。

しかし心配なのはヘンリー公爵が兄のウィリアム王子と会うのを避けたことだ。

夫妻は昨年3月、米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏のインタビューで、生まれてくるアーチーちゃんの「肌の色」を巡る人種差別が王室内にあったと告発。今回の訪問で発言者はウィリアム王子だった可能性が強まり、2人の王子の確執は一段と深まったと言えるだろう。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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