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キャサリン妃が半年ぶりに公務復帰、ウィリアム皇太子の広報対応に課題

木村正人在英国際ジャーナリスト
キャサリン妃が投稿した写真(ケンジントン宮殿のXより)

■「化学療法には良い日と悪い日がある」

[ロンドン発]3月22日にがん治療を受けていることを告白したキャサリン皇太子妃が6月14日、X(旧ツイッター)で写真を添えて公務復帰を宣言した。しかし「まだ森を抜け出たわけではない」とがん治療があと数カ月続くことを明らかにした。

「ここ数か月間寄せられたたくさんの心温まる励ましや応援のすべてのメッセージに本当に感激しています。 ウィリアム(皇太子)と私にとって本当に大きな支えとなり、つらい時期を乗り越える助けとなりました」

「私は順調に回復しています。しかし化学療法を受けている人なら誰でも知っているように良い日と悪い日があります。悪い日には弱さや疲れを感じ、体を休ませざるを得なくなります。しかし、良い日には元気になった気分を最大限に生かしたい気持ちになります」

■「チャールズ国王の誕生日パレードに参加する」

「私の治療は現在も続いており、あと数カ月はかかる予定です。体調が良い日は子供たちの学校生活に参加したり、元気や前向きな気持ちを与えてくれることに個人的な時間を費やしたり、自宅で少し仕事を始めたりするのが楽しみです」

キャサリン妃の王立基金「幼児期のためのビジネス・タスクフォース」は5月21日、「より幸せで健康的な社会を築くために幼児期を優先させる」と題した報告書を発表し、キャサリン妃の公務復帰が近いことをうかがわせた。

「今週末は家族と一緒にチャールズ国王の誕生日パレードに参加するのを楽しみにしています。夏にはいくつかの公的な行事に参加したいと思っていますが、まだ森から出ていない(安心できない)ことも分かっています」

■「必要な回復の時間を自分に与えている」

6月15日にはロンドンのホースガーズパレードでチャールズ国王の誕生日を祝う毎年恒例の行事が行われる。英空軍による儀礼飛行とロイヤルファミリーがバッキンガム宮殿のバルコニーに姿を現し、最高潮を迎える。キャサリン妃はこれに合わせて公務に復帰する。

「不確かな状況での忍耐力の身につけ方を学んでいます。毎日を大切に過ごし、自分の体の声に耳を傾け、必要な回復の時間を自分に与えています」

「皆さまの変わらぬご理解に感謝いたします。勇気を持ってご自身の体験を私にお話しくださった皆さまにも感謝いたします キャサリン」

キャサリン妃は森の中の木に寄り掛かる自身の写真を投稿した。体調が回復するまで、そっとしておいてほしいとお願いしているような印象を筆者は受けた。

■1月に手術を受け、2週間入院したキャサリン妃

これまでの経過は次の通りだ。1月17日、ケンジントン宮殿は「皇太子妃は昨日、腹部手術のためロンドン・クリニックに入院した。手術は成功し、10日から14日間入院し、その後自宅に戻って療養する予定だ」と緊急発表。

公務に復帰できるのは復活祭(3月31日)以降で「皇太子妃は子供たちのためにできる限り平常心を保ちたいという願いと、個人的な医療情報が非公開であることを望むことを理解してほしい。今後、皇太子妃について重要な情報があった場合にのみお知らせする」と説明した。

キャサリン妃の動向に長期間の空白が生じたため、さまざまな憶測がネットや海外メディアを駆け巡った。

3月4日、米セレブニュースサイトTMZが実母の車で移動する皇太子妃の写真を報じた。キャサリン妃の写真が報じられたのは昨年のクリスマス、ノーフォーク州サンドリンガムの教会に家族で礼拝して以来だった。

■ケンジントン宮殿の広報対応に課題

母の日の3月10日には、キャサリン妃は子ども3人に囲まれた家族写真を公開したが、加工されていたため通信社から配信を撤回された。

翌11日には「多くのアマチュア写真家がそうであるように、私も時折編集を試みることがある。昨日公開した家族写真が混乱を招いたことをお詫びする」と謝罪した。

3月22日になって、がんで予防的な化学療法を受けていることをビデオメッセージで告白。加工された家族写真と違ってキャサリン妃はかなりやつれて見えた。

「家族全員にとって、この数カ月は信じられないほど大変な時期だった」とキャサリン妃は初めて打ち明け、ネット上の陰謀論はようやく収まった。

しかし十分説明をしないまま王室の立場より家族のプライベートを優先させ、世間の誤解を拡大させたウィリアム皇太子とキャサリン妃(ケンジントン宮殿)の広報対応の課題を浮き彫りにした。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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