バッハ氏来日 韓国報道は? 反日も”一時休止”のブーイング 「日本のどこでも歓迎されない」
日本よりも東京五輪に反対している国…それが韓国だという。
14日、「産経」も「朝日」もこれを報じた。大手調査会社「イプソス」が28カ国で世論調査を実施。東京五輪開催に「反対」と答えた割合が最も多かったのが韓国の86%で、次いで日本の78%だった(いっぽうでこの調査結果によると世界の62%が「パンデミックの世界が一つになる重要な機会」と捉えているという)。
東京五輪の開催反対57% 最高は韓国、次いで日本…28カ国で世論調査
背景には「日本に我が国の選手を送るな」という考え方がある。領土問題、歴史認識問題、旭日旗などの「反日」。そして放射能、新型コロナの感染状況などの「安全面」の説から。昨今の「竹島地図問題」では、これらの韓国にとっての問題を五輪の輪に一つずつ書き込んだプラカードを提示し、抗議デモを行う写真も目にした。
そこに現れたのが1人の人物だ。7月8日、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が来日した。
これが韓国ではどう報じられているのか。そしてネット上のコメント欄の反応は? そこには少し違う流れがある。15日の「スポーツ東亜」はこう報じた
「東京オリンピック ”サンドバック”バッハ委員長、オリンピック強行+相次ぐ”空振り”に非難の洗礼」。
ことバッハ氏のニュースに関しては、氏の”叩かれっぷり”にベクトルが向く面があるのだ。
「中国人発言」には「あいつらにはどうでもいいこと」と怒り
13日の「中国人」の言い間違いの件は、主に下記の媒体が報じた。
MBC、朝鮮日報、東亜日報、京郷新聞、文化日報、YTN、ノーカットニュース、韓国経済、ソウル経済、スポーツ京郷、JTBC
関心は高く、こちらの地上波MBCのニュースにはYouTube上で18万アクセスが集まった。
もちろん、その反応には「また東京五輪で問題が起きている」とからかうようなものもあった。ただし、この動画に対するコメント欄の最上位(いいね!が多いもの)はこういうものだ(15日午前現在)。
”あいつらには関係ないだろ....自分のポケットが札束で分厚くなれば.....オリンピックをやらないと、今まで貯めた金を吐き出さないといけないんだから....”
またこのコメントに対する反応として、こんな書き込みもあった。
”オリンピックを嘲笑している。これがオリンピックなのか? 嘲笑しているのだ。政治的に利用して、それを容認し、オリンピック精神はカネに売り払い、選手たちの命が危険なイベントの開催を躊躇しない。これのいったい何がオリンピックなのか。政治ではないか。IOCはただお金を受けとって、日本を宣伝しなさい。次の宣伝対象は中国。史上最悪のオリンピックシーズンがやってくるのだ”
9日の「東京五輪無観客開催決定」の際には、主要媒体の記事へのコメントは「それ見ろ」と日本を揶揄する内容で溢れかえったから、ずいぶんと違う内容だ。第3国で「中国人と間違えられる」というのは韓国人にも起こりうる事態だから、バッハ氏の言い間違いは笑えないか。
バッハ氏は「明確な答弁避けた」と指摘
いっぽう、国内最大の通信社「聯合ニュース」は現地(東京)特別取材班を編成し、五輪関連ニュースを報じ始めている。
14日には、前日13日に行われた日本の共同通信とバッハ会長のインタビュー内容を細かく報じた。
「共同通信とのインタビューで『オリンピック関係者(海外から来た関係者含む)と日本国民を明確に隔離する処置を強く要求しており、大会の安全性を全幅的に信頼している』と言及した」
しかし、とこの記事は続けた。
「彼は新型コロナの感染が急激に拡散した場合の対応の質問に対しては『推測はしない』と明確な答弁を避けた」
肝心のところは答えない、という点は韓国でも取り上げられている。
IOCは笑っているが…
関連報道のなかで強い口調が目立ったのは、13日の「YTN」だった。
「どこに行っても歓迎を受けられないバッハ…IOCだけを信じて」
映像によるニュース報道は、アンカーの強い言葉から始まった。
「史上初の無観客開催により、莫大な放映権料の収益を確保したIOCは笑っていますが、コロナ拡散の心配に経済的、政治的損失まで抱え込まなくてはならない日本の雰囲気は冷ややかです」
続いてバッハ会長による13日の「IOCを信じてほしい」という発言を紹介。
さらにこの話題を映像とともに伝えてニュースを締めくくった。
「バッハ委員長が宿泊するホテルの前では連日オリンピックに反対するデモが行われています。挙句の果てには16日にバッハ委員長の広島の被爆地訪問を中止しろというデモと署名までも登場しています」
”批判の的”はどう捉えられているか?
トーマス・バッハという人物は、はっきりした批判の的になる(なれる)人物。海外メディアから見てもそう。韓国での関連ニュースに触れ、そういったことも改めて感じる。
そこには「韓国メディアもやはり日本のインターネット記事を見て雰囲気を知るという面が強いですから」(韓国スポーツ専門メディア担当記者)という事情があるのも確かだ。
とはいえ、「単なるネット現象ですね」と片付けては惜しい面もある。
それほどまでの「的」がいることを、日本の大会運営陣側は迷惑がっているのか、はたまた「批判を受けながらも言いたいことを代弁し、任務を遂行してくれている」とありがたく感じているのか。思えばこの点はあまり報じられていない。
社会に何かの不満があるとき、誰かのせいにしたくなるものではないか。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の元会長森喜朗氏が去って以来、そういった「的」は分散されてきた。本来ならもっと前面に立つべきは本来、IOCと開催都市契約を結んだ東京都の小池百合子知事のはずだが、すっかり出てこなくなった。そこにバッハ氏は現れたのだ。
筆者の能力・専門性では「世界一五輪に反対している国の報道も、少し風向きが変わるほどの批判の的っぶり」という点を紹介する点に留まる。今後の報道で、バッハ氏の「内部評価」も掘り下げていけば、この東京五輪開催のまた違った図式が明らかになるのではないか。