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ドコモとアマゾン、『通信キャリア+サブスク』という新たな錬金術

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:つのだよしお/アフロ)

KNNポール神田です。

□NTTドコモは11月26日、アマゾンジャパンと協業し、大容量プラン「ギガホ」の契約者は「Amazonプライム」の年会費(税込4900円)が1年間無料になるサービスを始めると発表

□Amazon.co.jpで「d払い」を利用するユーザーが増えており、両社のサービスは親和性が高いと判断したため提供に踏み切った

□Amazon.co.jpでd払いで決済した場合に、「dポイント」の還元率を通常の1%から5%に引き上げるキャンペーンも行う。

□実施期間は12月~2020年3月。キャンペーン利用によるポイント獲得の上限は1カ月当たり3000ポイントで、有効期間は3カ月。

出典:ドコモとAmazonがタッグ 「ギガホ」契約者はプライム会費が1年間無料に

■NTTドコモ『ギガホ』で『Amazonプライム』が無料にそれってお得なのか?

『Amazonプライム』は、年会費4,900円(税込み)(5月に3,900円から値上げ)だ。米国の『Amazon Prime』では119ドルするサービスだから日本では米国の37.7%の安い年間契約だ。送料無料やPrime VideoなやPrime Musicのサブスクがあるので、月額408.3円のコンテンツサブスクと考えることができる。

今回のNTTドコモの契約では、

2年契約『ギガライト(1GB)』一ヶ月2,980円 年間 3万5,760円 税込3万9,336円

2年契約『ギガホ(30GB)』一ヶ月6,980円 年間 8万3,760円 税込み9万2,136円

なので、『Amazonプライム』税込み4,900円は、1年間でギガライトで12.4% ギガホで5.3%の負担分が安くなる。

そして、ドコモの回線ユーザーは、2019年で6,100万(LTE)契約あり、日本の「アマゾン」の利用者数は5,004万人、「楽天市場」は4,804万人(2019年6月時点)だ。

すでにドコモユーザーで、Amazonプライムで重複しているユーザーがいたとしても、amazonはドコモが負担する為デメリットがない。むしろ、ドコモの「dポイント」での支払いがamazonのショッピングでベースになることより、ドコモは「dポイント」の還元率を通常の1%から5%に引き上げるキャンペーンなどをおこないつつもAmazonの売上に深く手数料面で関与できることとなる。

■Amazon5,004万人×ドコモ6,100万(LTE)のシナジー

なんといっても、Amazon5,004万人×ドコモ6,100万(LTE) のべ1億1,104万人ユーザーは巨大だ。なんとなく、ヤフーとLINE統合の1.5億人(1億4,943万人)ユーザー経済圏と相似する規模である。ただ、日本の人口は1億2,600万人なので、おびただしい重複がそこには存在している。

ヤフーとLINE統合の親会社は通信のソフトバンクKKなので、通信とコンテンツ、そしてサブスクがらみにも関係してくることだろう。

一方、ヤフーのサブスクの『ヤフープレミアム会員』は、税込み508円で2,235万人(2019年9月末/2019年度第2四半期決算報告)なので無料キャンペーンを含めなければ、サブスク収益は毎月113億5,380万円となる。また、PayPayが2000万ユーザー(2019年11月18日)を突破しているなどの状況もあり通信キャリアとECコンテンツとペイメントの関係はより寡占状態へ導かれている。

■auはNETFLIX ソフトバンクはYouTubeなど

ドコモはAmazonと同時に、『Disney DELUX(月額税込み770円相当)』でディズニーコンテンツ、auは『データMAXプラン』で『NETFLIX(月額税込み880円〜)』と組んでいるし、ソフトバンクはYouTubeやAbemaTVなどが見放題となる「ウルトラギガモンスター+」を提供している。

総務省からの指導があるたびに、日本の通信キャリア3社は、申し合わせたかのようにいろんな同様の似たようなサービスを展開している。スマートフォン端末のSIMロック解除にはじまり、スマートフォン本体と通信料金の分離などのオファーがある度に同様の差がわかりにくいサービスを登場させる。格安SIMがこれだけ登場しても、安定志向のある国民性は大手通信キャリアを離れない。そして、今度は、サブスクコンテンツと一緒になることにより、さらに強靭にスマートフォンとの接触時間が無限大に広がる。スマートフォンの画面でのショッピング、コミュニケーション、ペイメント、金融とリアルな物理サービスのシェアリングなどが複雑にからみあってくるのだ。

■ガラケー時代のオプションの先祖帰り

ガラケー時代のケータイ販売店代理店は、バックマージン目当てで、いろんな初月無料のアプリのオプションを登録しては、携帯代金を安く提供していた。それぞれのアプリからのコミッションがあるから通信キャリアのバックマージン以上に、携帯本体代金を安く提供できた時代だった。ケータイを購入するといろんなアプリをインストールされ、一月たったら、すべてのアプリを削除する。無意味なようだが面倒くさい人はオプションを払い続けてしまうという期待値がそこにはあるから成立するのだ。

今回の通信キャリアと大手サブスクリプションとの取り込みは、通信データに関係のあるサブスクだけではなく、サービスのサブスクの固定料金と通信料金をあわせた、サブスクリプション同士のあわせ技で、ガラケー時代のオプションの先祖帰りのビジネスに奔走していくような気がしてならない。楽天のような一社でECから通信、金融まで垂直統合できるような企業群でも、いざサブスクリプションサービスというとあまり持ってはいない。サブスクサービスと陣形を形成しなければ追いつけないだろう。

ヤフープレミアム会員のように、無料期間かと思えばいつしか数ヶ月忘れて入っているだけでも毎月113億円の収益をもたらす錬金術は、他のいろんなサブスクとの総和での割安感があれば解約心は薄れる。ヤフオクでの出品やGyao、PayPayでの還元率アップ以上にわかりやすい座組が必要だ。

通信会社にとって『ARPU』は売上を上げるのではなく、よりたくさんのユーザーを獲得し、解約させないことが重要だ。そのためにはスマートフォン本体での差別化が難しい今、通信キャリアと、サブスクコンテンツの抱え込みの陣形でどこの通信キャリアと組むのかというのがとても重要になってくることだろう。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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