初回の攻防に新手。いきなりリリーフ投入のオープナー
先発投手はクローザー?レイズが編み出した斬新な継投策
昨季の5月19日、エンゼルスと対戦したレイズの先発マウンドに上がったのはセルジオ・ロモ。2010年から2015年までは6年連続60試合登板、通算109セーブを誇るクローザーだ。スターターを任されたのはメジャー11年目でこれが初、三者連続三振に仕留め役割を果たすと翌日も先発し1回1/3を3奪三振無失点だった。短いイニングに全力を尽くすリリーフ投手が相手の上位打線を抑え、本来の先発投手に比較的楽な状態でバトンをつなぐ、「オープナー」という起用法が誕生した瞬間だった。
斬新な継投策はその後何度も盤石ではない先発陣をサポート、レイズは戦力的に決して恵まれている球団ではないがヤンキース、レッドソックスと同じア・リーグ東地区で90勝を挙げ、開幕前の下馬評を覆した。
初回失点の割合は巨人、ロッテが多く、広島、ヤクルト、日本ハムは初回の攻撃が強い
日本でも初回の攻防が重要であることは言うまでもない。野球は9イニングのスコアを競うスポーツであるからどのイニングも均等なら総失点の中で初回失点の割合は11%前後になるはずだが、広島、日本ハム、オリックス、楽天以外の8球団は13%以上。総失点がセリーグ最少だった巨人もその内15.65%を初回に失っており、初回失点が12球団唯一の3桁、105点のロッテは総失点の16.72%がプレーボール直後に集中してしまっている。これが2回になると全球団割合が下がって10%を切る球団が多くなり、3回以降は11%前後に落ち着く。
攻撃側の視点で見ると初回の得点が多いのは広島、ヤクルトと日本ハム。プロ野球全体の無死走者なしからの得点期待値は0.458点だが、この3球団は初回に0.8点に迫る得点を挙げている。広島は田中、菊池、丸、ヤクルトは坂口、青木、山田、日本ハムは西川、大田、近藤と並んだ上位打線がいかにも強力。巨人が対策としてオープナーを採用するなら適任者は沢村だ。昨季は1勝6敗、防御率4.64と不本意な成績に終わったが広島の3人に対してはトータル10打数1安打5三振、ヤクルトの3人に対しては13打数1安打2三振と全く仕事をさせていない。ロッテなら松永が日本ハムの3人に対してトータル10打数1安打4奪三振と相性が良い。
出場選手登録増はオープナーの追い風に
これまでにも中継ぎ投手を先発させることはたまに見られたが、ローテーションの穴を埋めるためという意味合いが強かった。2013年にはソフトバンクがロングリリーフ要員ではなくリリーフエースの森福を先発させたがこれも先発予定だった大隣が腰を痛めたための代役、チーム状態も上がらない中での苦肉の策だった。オープナーを採用すれば本来の先発投手が相手打線の3巡目に入った辺りで交代期が訪れる。立ち上がりでの上位打線との対戦回避に加え、対戦回数を減らせるメリットもある。終盤でも問題なく抑えられる力を持ったエース級の投手は別として、ローテーションの5番手6番手の投手にとってはかなりの負担軽減になるはずだ。リリーフを1枚消費した状態で終盤を迎えるという大きなデメリットもあるが、今季から出場登録選手が1人増え、ベンチメンバーの枠を圧迫することなくブルペンを厚くすることが可能になった。最初に予告先発で奇襲を仕掛けるのはどの球団か。