20日の防衛戦で何を見せるか? 京口紘人、IBFミニマム級チャンピオン

IBFミニマム級チャンピオン、京口紘人(24)。プロデビューから僅か1年3ヶ月、9戦目で世界王座を手にした新鋭である。現在の戦績は9戦全勝7KO。5月20日に、田口良一の前座で同タイトル2度目の防衛戦を行う。

グリーンツダ、新日本大阪、大阪帝拳、八王子中屋、ワタナベと渡り歩きながら、現在、京口紘人を指導する井上孝志トレーナーは言う。
「私が大阪帝拳に勤めていた頃に、中学1年生だった京口がちびっ子ボクシングで来ていました。毎日です。ですから、もう10年以上の付き合いです。後に全日本新人王となる京口の兄貴は目茶苦茶強かったですね。当時は兄貴の方が目立っていました。
辰吉丈一郎が、彼の息子2人と京口兄弟を指導してくれました。京口は左ボディアッパーと右クロスが得意なのですが、左ボディアッパーは辰吉の直伝です」
ちびっ子ボクシングを経て、大阪商業大学ボクシング部3年生だった京口が「卒業後は東京でプロになりたい」と話すのを井上は耳にした。そこで井上は「ならば俺のいるジムに来い」と、ワタナベジムを勧める。

「当初、会長とは3年くらいかけてじっくり育てようと話していたのですが、3戦目で大橋ジムの宮崎拳一を下し、我々は確固たる自信を持ちました。宮崎は10勝2敗で日本ランキング入り目前の選手でしたが、1発のパンチももらわずに、3ラウンドにボディブローで沈めたんです。
4戦目はフィリピンのランカーを呼んだんですが、この選手にも左アッパーで1ラウンド33秒、KO勝ちを収めました。それで、もうOPBFタイトルを狙おう、ということになったのです。トントン拍子にマッチメイクが進み、会長も『行けるところまで、行くぞ』ということになりました。
私はOPBFを獲った試合で、『この子は世界王座に就く』と確信しました。日本人離れしたタイミングでパンチが打てる。常人からは予想できない相手の死角からパンチを出せるのです。OPBFタイトル戦も3ラウンドで相手をノックアウトしました」
京口が上京したばかりの頃、井上トレーナーはジムの合宿所で寝食を共にした。
「京口は気が強い反面、繊細でもあります。物事を良く考えながら、真面目にボクシングに向かっていますね。出来上がった選手ですから、あれこれと教えることは無いんですよ。要所要所のポイントや細かいフェイントなんかを話しています」
今回、迎え撃つのは13戦全勝11KOの19歳、ビンス・バラス(フィリピン)。
「バラスも伸び盛りのいい選手ですが、6ラウンドまでにKOしますよ。京口のパフォーマンスを全国のボクシングファンに見て頂きたいです」
井上はそう語るが、メインイベントである田口良一の試合が早めに終わらない限り、京口の防衛戦は中継されない。
「それが残念なんですよね。大晦日の初防衛戦も深夜枠でのディレイ放送でした。生中継のオンエアはハイライトで1ラウンド分くらいでだったんですよ。今回も田口がフルラウンドまでいったら、深夜枠での放送になります。
軽量級を超越したボクシングを見せられる男ですから、早く全国区にしてやりたいですね。本人も、お客さんを喜ばせる試合をやりたいと、いつも言っています」

京口本人も力強く話した。
「<連打の時に体が流れないように><組み立てを雑にしない>ことをテーマに調整して来ました。バラスは勢いがありますよね。日本人では考えられないような非常に貧しい家庭で育った、ハングリーな男だと聞いています。僕とは噛み合うと思います。中盤までにストップしたいですね」
口調は穏やかだったが堂々のKO宣言である。京口は自信を漲らせている。明後日、どんな戦いを見せるか?