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<朝ドラ「エール」と史実>吃音症は同級生のマネから? 実は“やんちゃ”だった古関裕而のこども時代

辻田真佐憲評論家・近現代史研究者
(写真:アフロ)

コロナ禍による撮影中止のため、今週から再放送に入った朝ドラ「エール」。ふたたび裕一のこども時代に注目が集まっています。

実際の古関裕而も身体があまり強くなく、吃音症に悩まされていました。ただ、それでいじめられていたかといえば、そう単純ではなかったようです。

劇作家・菊田一夫との対談に耳を傾けてみましょう(今日では不適切とされる表現も見られますが、古い資料ですのでご了承ください)。

菊田 あんたのドモリ治らない。

古関 緊張するとすぐ出ちまうな、菊田さんもドモリますね。

菊田 僕は、15、6の時からだから長いよ。

古関 僕も小学校の時、クラスにひどいドモリがいて、そのまねをしていたら、こっちがなってしまった。

出典:『鐘よ鳴り響け』。なお一部表記を改めた。以下も同じ。

なんと、吃音症は、同級生のマネからはじまったというのですね。

「女子の教生の先生をずいぶんからかった」

小学生の古関は、実際、けっこう“やんちゃ”でもありました。

5、6年のときは「女子の教生[教育実習生]の先生をずいぶんからかった」と回想しています。

ある日、僕と3、4人が掃除当番で残ったが、教生を驚かしてやろうと、入り口の戸の上にぬれぞうきんをはさみ、足元に水の入ったバケツを置き、机の下にかくれてはいってくるのを待っていた。間もなくガラガラと戸が開いてバケツのひっくりかえる音とともに教生ならぬ担任の先生の大きな声がして僕達もビックリ。

出典:齋藤秀隆『古関裕而物語』

小学生のいたずらというのは、昔から変わらないんですね。

もちろん、古関たちは、担任の先生より「目から火の出るようなおこごと」をちょうだいしました。

その先生は、遠藤喜美治といいます。名前を見てもわかるとおり、これは藤堂清晴先生のモデル(のひとり)です。ドラマでは温厚そうなので、激怒するシーンはむずかしかったのかもしれません。

それはともかく、再放送にあわせて、今後も定期的に「史実ではどうだったか?」を取り上げていきます。評伝執筆者ならではの、多角的な解説にご期待ください。

また、これをきっかけに、古関が活躍した昭和史などにも興味をもっていただければ幸いです。

評論家・近現代史研究者

1984年、大阪府生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。政治と文化芸術の関係を主なテーマに、著述、調査、評論、レビュー、インタビューなどを幅広く手がけている。著書に『「戦前」の正体』(講談社現代新書)、『古関裕而の昭和史』(文春新書)、『大本営発表』『日本の軍歌』(幻冬舎新書)、『空気の検閲』(光文社新書)などがある。

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