音楽を楽しむという「普通」を一緒に 難民をノルウェー音楽祭に招待
ノルウェーの入国管理局UDIによると、今年7月までのノルウェーでの難民申請者は2380人。これほど少ない申請者数は、90年代までにさかのぼらないと見当たらないそうだ。ノルウェーでは、申請者減少に伴い、各地にある受け入れ施設を次々と閉鎖している。
すでに難民として認定された人々には、新しい生活が待っている。知人もおらず、言語や文化が異なる国での再スタートは大変だ。市民に仲間入りした難民が社会に溶け込めるように、各自治体では様々な取り組みがおこなわれている。
11月初旬にオスロで開催された音楽祭「オスロ・ワールド」では、2009年より毎年難民をコンサートに無料で招待している。
一般市民にも参加してもらおうと、今年は160人の難民にコンサートチケットを有料で購入し、プレゼントする企画を呼び掛けた。
「フェス側がチケットを無料配布するのではなく、人々が難民のためにお金を払うほうが、『シンボル効果』があると考えます」と語るのは、フェスの代表であるストーレンさん。
「音楽をコンサートで楽しむ」ことが、今の暮らしの優先リストの上位に入っていないかもしれない難民を招待する。難民が観客として溶け込むことで、フェスにも新しいエネルギーがうまれるとする。
「難民申請者は受け入れ施設に住んでいます。それは普通とはいえない状況です。音楽を楽しむという普通の体験を、彼らにも提供したい」とプレスリリースで話す。
紛争地の音楽シーンを集めた「BEIRUT & BEYOND」プログラムを楽しみにしていた男性の難民グループを取材した。
シリアやイラクなどからの19~24歳の難民グループを引率していたのは、シリア大使館秘書として働くダニエル・アルホムシさん(27)。難民としてノルウェーに渡り3年が経つ。
コンサートを楽しみ、週末には子ども向けのフェスイベントでシリアコーナーに参加し、みんなで子どもたちにシリアの文化や音楽を紹介するという。
子どもイベントでは各国の人々がスタンドを設け、シリアのコーナーには子どもたちが集まり、アラビア語の文字や見慣れない家庭用品に興味を持っていた。
「ノルウェーに来た時は、時間がかかる書類手続きが多いことが大変でした。私にとって良かったことは、通訳の仕事がきっかけで、ノルウェーで人脈が広がったことです」。
「ここに暮らしていると、どうしてもオリエンタルなものが少なくなってしまう」と語るアルホムシさん。
オスロ・ワールドのような世界中の音楽が集まるフェスに参加できることは驚きであり、嬉しいと語った。
Photo&Text: Asaki Abumi