【パリ】コロナ禍でも豊かに 星付きレストランをデリバリー
感染拡大が勢いを増しているパリ。28日20時の大統領演説で、2度目の全国ロックダウンが発表になりました。
実施は29日24時、つまり30日0時から。
ずいぶんと急なことですが、感染拡大の予想以上のスピードの速さに、お尻に火がついた決断だったのでは、と想像します。
さて、演説から一夜明けたパリの朝、ノートルダム大聖堂の方へ行ってみましたが、このあたりはそれほどバタバタしていないという印象でした。万聖節の2週間の学校休暇のために、パリを離れて地方で過ごしている家族も多いはずですから、そもそもパリに残っている人が少ないせいかもしれません。
ところが、新都心のラ・デファンス地区のショッピングセンターはかなりの人出とか、日本食材店で米が売り切れていたという声も聞こえてきますので、近所の食料品店やスーパーでは買えないものを備蓄しておこうという動きはやはりあちこちで見られるようです。
星付きレストランの新サービス
さて、ここからはちょっと美味しい話題です。
夜間外出禁止令が施行されてから、高級レストランのなかには休業という選択をするところも少なくないことは前回の記事でご紹介しましたが、こんな状況だからこそ新しいサービスを始めるところも出てきました。
そのひとつがスターシェフ、ヤニック・アレノ率いる「Pavillon Ledoyen(パヴィヨン・ルドワイヤン)」です。
ここには、ミシュラン3つ星の「アレノ・パリ」、2つ星の寿司ガストロノミー「ラビス」、オープンしてすぐに1つ星をとったカウンター式のガストロノミー「パヴィヨン」と3つのレストランがあるのですが、それらを自宅でも楽しめるというサービスです。
3つ星、2つ星のチームが出張料理をするというなんとも贅沢なプランは、それぞれ2,370ユーロ(1ユーロ=122円としておよそ29万円)からと1,680ユーロ(およそ20万5,000円)からで、いずれも6名分を想定した価格設定になっています。
また、10ユーロの単品からオーダー可能なテイクアウト、もしくは配達というサービスもあって、筆者は実際にこちらをトライしてみましたので、体験レポートをお届けします。
オーダーはサイトから。こちらにメニュー一覧と受け取り、もしくは配達可能な日時が明記されています。一応11月1日までのサービスとしてあって、土日を含む毎日、時間帯は11時半から13時半、もしくは17時半から19時半となっています。筆者は友人と一緒にコースメニュー80ユーロ(前菜2品、メイン1品、デザート1品)というのを二人分配達してもらうことにしました。テイクアウトの場合は品代だけですが、配達の場合は15ユーロが加算され、注文と同時にサイト上でカード決済です。前日のオーダーで翌日昼の配達が可能でした。
11時半から待機していると、12時45分に携帯が鳴り、配達人が指定した住所のドアの前に到着していました。こちらでは、ウーバーイーツなどの配達システムを利用している飲食店がとても多いですが、そこは合計6つの星をもつレストラン。車を使った配達で、品物は大きな袋2つに入っての到着です。
取り出してレンジでチンしてテーブルへ、と思いきやさにあらず。袋の中をのぞくと、それぞれの食材が複数別々になっていて、1品ごとに説明書が添えられています。つまり、すぐにいただくことはできず、説明書の解読からスタートです。
初体験で勝手がわからないせいもありますが、一皿食べ終わると台所へ行き、お鍋の前で時間を計ることの繰り返しで、ゆったり優雅にというわけにはいきません。これがお手伝いさんでもいらっしゃる家庭なら別なのでしょうが、食べると作るの両方をこなさなくてはなりません。とはいえ、食材のクオリティとソースの充実ぶりはやはりさすが。味覚の点でも胃袋の充実感をとっても十分に満足のゆくコース。もちろんデザートもしっかりとあります。
星付きのお店でコースをいただくというのは、単に食べるということを超えたイベントだと常々思ってきましたが、デリバリーでも変わりがないことを実感。すべてを平らげたあとは、仕事になどは戻れない、それで一日が飽和する豊かさでした。
このサービス、夜間外出禁止令の期間を想定したものですが、29日時点でのサイトではまだ受け付けている様子。本格的にロックダウンが始まると、もしかしたら今後は変更があるかもしれませんが、料理人たちの可能性に限界はないと期待を持ち続けたいと思います。