【東京都杉並区】荻窪駅前に店を構えて68年!親子四代、家族の絆に支えられて地元に愛され続ける大衆酒場
『酒処 かみや』
まだ黄昏時だというのに、ついつい暖簾を潜ってしまう居酒屋が荻窪駅の南側にある。西口の改札からは、ほんの1分足らずで到着するという駅近にあるロケーション。『酒処 かみや』は、昭和30年(1955年)創業という、荻窪界隈ではレジェンド的存在の大衆酒場だ。
店内は、昭和を感じさせる懐かしい雰囲気で、客の年齢層も幅広い。壁には白や黄色の短冊メニューが整然と貼られており、渇いた喉と空腹の胃袋を惑わせる。
まずは生ビールをグイッと流し込んでから、お目当ての日本酒へと突入するとしよう。
「清酒 富貴(ふうき)」と「デンキブラン」は、古くからの同じ酒造元。「デンキブラン」と聞くと、古参の呑兵衛なら誰しも浅草の『神谷バー』を想像するに違いないが、店によると「暖簾分けだとは聞き及んでいるものの、真偽のほどを今は確かめようがない」との事だった。
豊洲市場から仕入れる新鮮な魚介類などのメニューの短冊がずらりと並ぶ。中でも数種類の刺身を盛り合わせた「海の幸盛り合わせ」(820円)は、人気の高い定番メニューのひとつ。
オーソドックスな居酒屋メニューに加えて、「とんかつロース」(560円)や「ピザ」(690円)「肉きくらげ炒め」(530円)など定食屋風のメニューも多い。豊富なレパートリーも『かみや』の魅力のひとつで、それぞれのボリュームもなかなかのもの。
甘めで酸味の効いた酢味噌が日本酒に良く合うと「ぬた盛り合わせ」(540円)も人気。魚介類が6種類ほど入っており、”酒泥棒”とは、まさにこの一品のことだ。
日本酒は地酒を中心に10種類以上を常備。そこに「旬のお酒」として、西荻窪の『三ツ矢酒店』から仕入れているという全国各地の銘酒が、ほぼ週替わりのペースで登場する。時には、三代目夫婦が蔵元や旅先から直接仕入れてくる銘酒が加わることも。
「私は量は呑めないんですけど日本酒好きです」と、はにかみながら語るホール担当の三代目女将・由香さん。グラスの受け皿に多めに溢すのが昔ながらの流儀。
常連客が秋冬の名物として待ち焦がれているのが、ひとり用の小鍋。例年、「鱈入り湯豆腐」をはじめ、「かき鍋」や「鴨鍋」などの種類があり、運良く遭遇できれば「あんこう鍋」も千円代でとリーズナブルに楽しめる(価格未定)。酒が進むこと請け合いだ。
『かみや』のもうひとつの顔がランチだ。「日替わり定食」(830円)は、常時2種類を用意していて、刺身や焼魚など魚をメインに提供される。他に「まぐろ丼定食」(930円)、「刺身盛り定食」(1180円)などもある。「コスパが良くて旨い!」と、昼も夜も通い続ける近所の常連客が少なくないというのにも納得。
厨房を切り盛りするのが三代目の小山昌宏さん(右から2番目)。二代目の芳成さん・ユキ子さん夫婦も、まだまだ現役で頑張っている。そこに新たに四代目の佳祐さん(左端)が加わることになって、盤石の家族経営が構築されることになった。
昨今、後継者問題に頭を悩ませている老舗の店にとっては垂涎の的に違いない。将来、間違いなく『酒処 かみや』は、名実ともに”百年続く名酒場”となる予感がする。
さてさて、今宵も大満足。ご馳走様!