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なぜ、東京は11月に気圧が高くなるのか?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
東京では午前8時、気圧1033.9hPaを記録。今年最も高い気圧となった。

あれ?いつもより気圧が高い

今月4日(水)、いつものように天気図をみていると、東日本にある高気圧の中心気圧に目が留まりました。東京の海面気圧(以下、気圧とします)は午前8時に1033.9hPa(ヘクトパスカル)を記録しています。

ふつうだったら気に留めないことなのでしょうが、なぜか気圧の高さがとても気になってしまい、調べてみることに。

すると、東京の4日の平均気圧は1031.3hPaと2013年10月18日以来、2年ぶりに1030hPaを超えたのです。

気圧の高い記録はない!

東京の平均海面気圧 高い方順位(1961-2014)
東京の平均海面気圧 高い方順位(1961-2014)

調べを進めるうちにあることに気がつきました。気圧の低い記録はあっても、高い記録はどこにも載っていないのです。

よく考えてみれば、気圧と天気には密接な関係があります。悪天をもたらす低気圧や台風は気圧が低く、晴天をもたらすのは気圧の高い高気圧です。

このことに世界で初めて気がついたのはパリ天文台長ルヴェリエで、1854年のことです。クリミア戦争中にフランスの戦艦が暴風のため黒海で沈没。ルヴェリエは各地の気象データを集め、原因が地中海から黒海に進んだ「低気圧」であったことを突き止めました。

このような歴史があることからも、気圧が低いことに必需性はあっても、気圧が高いことにニーズはないのでしょう。

なぜ、東京の気圧は11月に最も高くなるのか?

東京の平均海面気圧の月別変化グラフ(平年値)
東京の平均海面気圧の月別変化グラフ(平年値)

左図は東京の気圧変化をみたものです。夏に低くなり、冬に高くなるという季節変化をしていて、11月に気圧が最も高くなります。

ひとことでいうと、気圧はその場所の空気の重さですから、空気が重たければ気圧が高くなり、空気が軽ければ気圧は低くなります。

館野の層厚(600hPa-400hPa:平年値)
館野の層厚(600hPa-400hPa:平年値)

気温が低い=空気が重たい(密度が大きい)と考えれば、真冬に気圧のピークがきそうです。でも、なぜ11月なのか、腑に落ちません。

空気を層として考えると、11月は4月とほぼ同じ層厚(シックネス)ですが、高さ4000メートル付近(600hPa)から7500メートル付近(400hPa)の温度は11月の方が低い。そのため11月の方が気圧が高くなると考えました。

気圧について改めて考えるきっかけとなった4日の天気図ですが、気圧と天気の関係は奥深く、なかなか見通せないのがもどかしい。

【参考資料】

小倉義光,2002:一般気象学(第2版),43-49.

永沢義嗣,1995:天気図の散歩道,財団法人日本気象協会

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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