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「終わらない愛」の結末は? カカーのミラン復帰に期待と不安

中村大晃カルチョ・ライター

本田圭佑の夏の移籍が破談に終わり、日本の多くのファンが落胆する一方で、ミランはレアル・マドリーからカカーの獲得を決めた。「終わらない愛」。アドリアーノ・ガッリアーニCEOと選手がこう称した関係は、ミランに再び熱気をもたらしている。と同時に、不安があることも否めない。

大歓迎のミラニスタ

「カカーのゴールを見るために、オレたちはここまで来たんだ」。本拠地サン・シーロで何度となくこの応援歌を叫んできたファンたちは、2007年のチャンピオンズリーグでミランを優勝に導いた男の復活に賭けている。

ミラノのリナーテ空港でカカーの到着を出迎えたミランファンは、約400人。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙によれば、今年1月にマリオ・バロテッリが加入した際、マルペンサ空港で出迎えたファンは、100人にも満たなかったという。それだけでも、サポーターのカカーに寄せる期待の大きさがうかがえる。彼らの歓迎は、クラブオフィスやレストランでも続いた。

少なくない不安要素

だが、過去を振り返ると、カカーとミランにとってうれしくない事実が存在する。かつてのレジェンドにも、ミランでの第二の人生で成功できなかった選手たちがいるのだ。古くは元オランダ代表ルート・フリット、最近では元ウクライナ代表アンドリー・シェフチェンコである。サッカー界の歴史に名を残した彼らでも、ミランで再生することはできなかったのだ。

年齢と肉体面への懸念も否めない。本人は好調をアピールしたが、31歳となった今、以前の爆発的なスピードは期待できない。カカーをよく知るカルロ・アンチェロッティ監督でさえ、マドリーで居場所を見つけられないと判断したのだから、一抹の不安が残るのは当然だろう。

活躍できたとしても、周囲の選手への影響もある。『ガゼッタ』『コッリエレ・デッロ・スポルト』の両紙がそれぞれ、ステファン・エル・シャーラウィの立場について報じたのは、偶然ではない。

カカーの獲得(と本田への関心)が、シルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長が好むフォーメーション、「2トップ+トップ下」を実践するためなのは、周知のとおり。だが、エル・シャーラウィは主に左ウィングとして名を馳せたスピードスターだ。実際、新フォーメーションで臨んだ先日のカリアリ戦では、終了2分前からの途中出場に終わった。移籍市場最終日には、土壇場での放出のうわさが出回ったほどだ。

理解を超えた感情

それでも、ミランとミラニスタは、カカーに期待している。不安要素があることは、彼らが誰よりも知っているはずだ。その上で、かつてのアイドルの復帰を喜んでいる。彼は特別なのだ。ガッリアーニCEOはこう述べている。

「カカーとの関係はほかと違う。この28年間、どの選手ともなかったものだ。理解できないこともあるんだよ。感情とは説明できるものではないからね」

不安と期待のどちらが上回るか、メディアの意見も割れている。『ガゼッタ』『コッリエレ』両紙による夏の補強の“通信簿”がその例だ。『ガゼッタ』はミランに合格点となる7点を付けたが、『コッリエレ』の採点は及第点を下回る5.5点だった。カカーの存在が、補強全体の評価をも二分したのだ。

背番号22は先人たちの例を覆し、復活できるのか。ミランファン以外にとっても注目だ。『コッリエレ』紙は、1月に本田が加入した場合にカカーがセカンドトップになる可能性や、1トップの下に本田とカカーを並べる「クリスマスツリー」型のフォーメーションもオプションになると報じた。そう、カカーとともにミランがビッグイヤーを天に掲げた、2007年のフォーメーションだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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