論理的な考え方を育む「メカニズム思考」のすすめ——深く理解して飛躍を防ぎ、文章力を上げる
日常生活で触れるさまざまな情報やできごと——我々はそれらをどれだけ深く理解しているでしょうか? あらゆることを表面的な理解で終わらせず、物事の本質に迫るために、高い解像度で理解できているでしょうか?
こう提唱しておきながら僕だって表面的にしか理解していないことは多くあるはずですが、それでもできるだけ解像度を上げたいと願い続けています。そのために、「メカニズム思考」というものを提唱したい。
ボールペンはなぜ書けるのか?
まずは身近な例で考えてみましょう。普段何気なく使っているボールペンは、なぜ文字を書くことができるのか、その仕組みを説明できますか?
ボールペンの芯の中には粘度の高いインクが充填されています。このインクは自然に流れ出さないようになっており、芯の先端には小さなボールがはめ込まれています。このボールがインクの出口を塞ぐ役割を果たしているのです。
紙にボールペンを押しつけて書くと、どうなるでしょうか。押しつける力によってボールがわずかに持ち上がり、ボールと芯の内壁との間に微細な隙間が生まれます。
この隙間を通じてインクがボールに付着し、ボールが紙の上を転がることでインクが紙面に移され、文字が描かれるのです。
このように、ボールペン一つ取っても、その内部では精巧なメカニズムが働いています。
ボールペンを使うときに、ただ文字を書くだけでなく、その背後にあるメカニズムにまで思いを馳せてみる。こうすることで、単なる「書ける道具」としてではなく、仕組みや原理という本質的な部分を理解するという思考の癖をつけることができます。
これこそが、「メカニズム思考」なのです。
「メカニズム思考」がもたらす深い理解と論理性
メカニズム思考を身につけると、物事をより深く具体的に理解できます。これは単に知識を増やすだけでなく、思考の幅を広げ、新しい視点を持つきっかけにもなるのです。
論理の飛躍を防ぐ
物事の仕組みをひとつひとつ丁寧に追っていくことで、途中の過程を見落とすことなく、論理的な整合性を保ちながら、正しく理解することができます。
その結果、どうでしょうか。論理の飛躍を防ぐことができ、物事をより精緻に理解し、かつアウトプットの精度を高めることができるのです。
例えば、新規事業の計画を立てる際、雑な資料では誰の共感も得られずに終わってしまいます。しかし、細部まで考え抜いて入念に準備した資料は、聞き手の心を惹きつけます。そのような場面に何度も遭遇してきました。
新しいアイデアの創出
また、物事の解像度を上げた結果、細かい部分から新しいアイデアが生まれることもあります。これは「解像度上げる」という作業を行わないと、たどり着くことができません。
つまり、物事の本質や仕組みを深く理解することで、新たなアイデアや発想が生まれやすくなります。既存の概念や技術を組み合わせたり、応用したりする際にも、メカニズム思考は大いに役立ちます。
「メカニズム思考」で文章力を向上させよう
そして、個人的に「メカニズム思考」の効果を大いに感じているのは、文章を書くとき。
こうして日常的に記事を書いたり、仕事においても国に提出する文書を作ったりすることはよくあります。そのようなときにも、論理の飛躍を防ぎながら、先に頭の中で構造化しておくことで、論理的に整理された文章をいきなり出力することができるようになります。
書いては消して、順番を入れ替えて——を繰り返すのではなく、上から順番に完成された文章を出力できる、ということです。
また、文章力とは単に美しい言葉や表現を使うことではありません。
論理を飛躍させることなく丁寧に説明する力、つまり「メカニズム思考」を使いながら、それと合わせて読者に自分の考えを正確かつ分かりやすく伝えるための「ホスピタリティ(思いやり)」が求められます。
読者への思いやり
読者が理解しやすいように、物事を順序立てて説明することは、文章を書く上で非常に重要です。メカニズム思考を取り入れることで、情報を整理し、伝えるべきポイントを明確にすることができます。
例えば、専門的な内容を説明する際にも、基礎的な原理から順を追って説明することで、専門知識のない読者でも理解しやすくなります。これは、読者への思いやりであり、結果的に文章の説得力や信頼性を高めることにつながります。
論理的な構成
文章の論理性を保つためには、主張と根拠を明確にし、その間を繋ぐ論理的な橋渡しが必要です。メカニズム思考は、この橋渡しをしっかりと築く手助けをしてくれます。
重要なので繰り返しますが、納得感のある丁寧な説明を行うためには、論理を飛躍させることなく、最初から最後まで正しい順番で要素を配置する必要があります。
これはプレゼン資料を作る場面でも全く同じ考え方であるものの、文字だけで内容を伝えなければならない文章においてはさらに難しい。だからこそ、論理を飛躍させないことが極めて重要なのです。
そして、そのような力を養うために、日常的に思考の癖をつけようと。それが「メカニズム思考」の本質です。
日常生活にメカニズム思考を取り入れる方法
では、具体的にどうすればメカニズム思考を身につけられるのか。以下にいくつかの方法を紹介します。
なぜ?を繰り返す
物事に対して「なぜそうなるのか?」と問いかける習慣を持つことが大切です。それも1回ではなく、複数回繰り返しましょう。繰り返すたびにあなたの思考はより深くまで潜っていき、思考の解像度が高まります。
最初は意識的に行う必要がありますが、慣れると自ずとそのような思考パターンになっていきます。そうなると勝ちです。
情報を分解して考える
複雑な事象や問題を小さな要素に分解し、それぞれの関係性を考えることで、全体像が見えてきます。
よくあるマインドマップやフローチャートを使って視覚的に整理するのも効果的ですが、最終的には頭の中だけでその図が描けるようになるといいですね。頭の中に書くのは一瞬でできますが、目の前に書き出すと時間がかかるので。
学ぶ姿勢を持つ
新しい知識を積極的に学ぶことで、理解の幅が広がります。いきなり専門書はハードルが高いので、Wikipediaを読み漁ってみるとか、ひたすらGoogle検索してみるとか、自分の興味のある分野に関する理解を深めてみてください。
知識とは思考を深めるための材料です。知識がないと思考することができないので、解像度を上げる以前の問題。インターネットから無料で手に入れることができるから、貪欲に吸収していきましょう。
おわりに
物事の解像度を上げるためには、表面的な理解にとどまらず、その背後にある仕組みや原理に目を向けることが重要です。
「メカニズム思考」を日常生活に取り入れることで、深い理解だけでなく、新たな発見やアイデアの創出にもつながります。それは自己成長の鍵であり、コミュニケーションを円滑にするための大切な一歩でもあります。
ぜひ、今日から「なぜ?」と問いかける習慣を始めてみてください。きっと、これまで見えていなかった世界が広がるはずです。