ブリーフセラピーや解決志向アプローチで使われることが多いスケーリング・クエスチョンの間違った使い方。
こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。
今日は、「スケーリング・クエスチョン」と題して、若い(年齢のことではありません。経験が浅い…という意味です)カウンセラーや、人を援助する立場に身を置いている人に向けて、心理技法の使い方をお話ししたいと思います。
スケーリング・クエスチョンの間違った使い方。
スケーリング・クエスチョンは、ブリーフセラピーや解決志向アプローチやソリューションフォーカストアプローチで使われることが多い心理技法のことです。
スケールとは、英語で、目盛りとか定規という意味です。
クエスチョンとは、英語で、「問いかける」という意味です。
たとえば、
クライアントが「毎日が辛くて苦しい」とカウンセラーに訴えたとき、
カウンセラーが「あなたのその苦悩は、最高のときが10点、最悪のときが0点だったとしたら、いま何点ですか?」と応答したら、そのカウンセラーは、「スケーリング・クエスチョンを使った」ということになります。
理想の展開、続きは、
クライアントが「そうですねぇ、3点ぐらいかなぁー」と答え、
そしてカウンセラーが「そうですかぁ。では4点の状態は、どんな状態ですか? 4点にしようと思ったら、あなたは何をどうすればいいですか?」と返す…というものになります。
とてもわかりやすくて簡単そうに感じるので、安易にこの技法を使うカウンセラーは少なくないのですが、お気軽気分でこの技法を使うと、大失敗を起こし、クライアントを深く傷つけかねません。
たとえば、
クライアントが「点数なんてつけられないですよ」と答えたり、「0点です」と答えた場合です。そんなとき、ポンコツカウンセラーは、「強いて言えば、何点ですか?」とさらに尋ねたり、「0点ということは、もう自殺しているということになるのですが…」とか言って頭をかいたりします。これでは最低ですね。
悩んでいるクライアントの多くは、「4点の状態は、どんな状態ですか?」と訊かれても、うまく答えられません。カウンセラーは、クライアントから、「わかりません」「点数なんてつけられません」「思いつきもしません」と言われてオシマイです。
スケーリング・クエスチョンは、面接の流れが良い方向に向きかけた時にしか、絶対に使ってはダメなのです。←私(竹内成彦)は、絶対という言葉を使うのが嫌いなのですが、今日はあえて使わせていただきました。
そう、カウンセラーが、「使い勝手がいいから」「単純な質問だから」という理由でスケーリング・クエスチョンを使ってはダメなのです。
私(竹内成彦)なら、クライアントが、「毎日が辛くて苦しい」と訴えたら、「そんな辛い中、そんな苦しい中、よくぞカウンセリングに来てくださいました」と、まずはクライアントを十分にねぎらい、「どうもありがとうございます」とお礼を述べます。その上で、優しく落ち着いた声で、ゆっくりと、クライアントに対し、「どう辛いのですか? どう苦しいのですか? もう少し詳しくお話を聴かせていただけませんか?」と言い、傾聴に努めます。
クライアントが「私の話をたくさん聴いてくれた」「私の思いをしっかり受け止めてくれた」「気持ちがとてもスッキリした」「さっきまで抱えていた私の不安は、かなり減少した」と思ってくれたら、初めて私は、スケーリング・クエスチョンを使うことを検討し始めるかと思います。←クライアントの話をしっかり聴きながら、クライアントをよく観察していたら、「カウンセリングの流れが良い方向に向かっているかどうか?」が、わかります。
そう、スケーリング・クエスチョンは、クライアントから、「このカウンセラーなら、私の苦悩を取り払ってくれるかもしれない」と思われるまでは、使ってはいけない技法なのです。どうぞ、そのあたりは、くれぐれもお間違えのないようにお願いします。
心理技法は、クライアントを援助するためにあるものです。カウンセラーの都合で使うものではありません。どうぞそのことを、いついつまでも忘れないようにしてください。
今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。
この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。