Yahoo!ニュース

岩崎投手がプロ初完投勝利!ペレスの決勝HR《7/12 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
最後までマウンドを守った、先発の岩崎投手。内野陣と勝利のハイタッチです。

きのう12日の鳴尾浜は30度を超える暑さだったのですが、日曜日とあってスタンドは満員!相変わらず屋根のないところで見ていた私ですが、思ったより雲が多かったせいか問題なく1試合を乗り切れました。水分も1リットルで。なんといっても、このところ3時間を超えていた試合が2時間29分で終わったことも大きかったですね。確か6回が始まる時に14時10分くらいだったはずなので、7回からは40分足らず。

両チームの投手が揃って完投するのも珍しいでしょう。岩崎投手が9回125球で7安打1失点、しかも無四球完投!松葉投手は8回117球で同じ7安打の2失点完投、四球も1つだけでした。1対1で迎えた8回にペレス選手の放った3号ソロが決勝点となって、チームのオリックス戦負け越しを阻止しています。

《ウエスタン公式戦》7月12日

阪神-オリックス 18回戦 (鳴尾浜)

オリ 000 010 000 = 1

阪神 000 100 01X = 2 

◆バッテリー

【阪神】○岩崎(3勝3敗) / 清水

【オリ】●松葉(1勝2敗) / 斎藤俊

◆本塁打 ペレス3号ソロ(松葉)

◆二塁打 中谷

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]中:江越  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .318

2]遊:北條  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 1) .261

3]指:梅野  (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .322

4]左:ペレス (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0) .357

〃左:柴田  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .351

5]一:中谷  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .288

6]三:陽川  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .191

7]二:黒瀬  (3-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .223

8]捕:清水  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .219

9]右:横田  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .206

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

岩崎 9回 125球 (7-8-0 / 1-1 / 3.18) 143

試合経過

先制タイムリーの黒瀬選手。2安打とも早いカウントで打ったもので、写真がこれしか…
先制タイムリーの黒瀬選手。2安打とも早いカウントで打ったもので、写真がこれしか…

打線は1回に2死から梅野の内野安打(サード奥浪はナイスキャッチで送球、しかしファーストのカラバイヨがぽろり)、2回は陽川と黒瀬の連打があったものの無得点。3回は三者凡退でしたが、4回に中谷の左中間二塁打などで2死二塁として黒瀬が左前タイムリー!1点を先取します。続く清水はセカンド堤のエラー(強い打球を体で止めながら手につかず)で出て、ボークで2死二、三塁と攻めたものの追加点なし。

最少失点、しかも無四球でプロ初完投の岩崎投手。
最少失点、しかも無四球でプロ初完投の岩崎投手。

一方の岩崎は1回、2回と三者凡退。3回は先頭の奥浪にファーストの後方にポトンと落ちるヒット、1死後に斎藤俊の左前打を許しますが後続を断ち、4回はまた三者凡退でした。しかし先制してもらった直後の5回、チャベスから見逃し三振を奪ったあと奥浪、武田、斉藤俊の3連打で満塁(斎藤俊の右前打で三塁を回った奥浪、横田の好守備で急きょストップがかかったのか途中で転ぶ)となり、途中出場の1番・山本の右犠飛で同点。補殺できそうなタイミングでバックホームした横田ですが、少し逸れて奥浪は生還しています。

6回は先頭・谷をショート北條のエラー(後ろに逸らした?横から見ていたら触れずにスルーしたようにも)で出しただけ。あとはフライ2つとチャベスの3打席連続三振で0点。7回は2死から斎藤俊に3打席連続ヒットとなる左前打を許し、山本の三ゴロ(難しいバウンドを前進して捕った陽川)。ここでちょうど100球となりました。8回はフライ3つの三者凡退と危なげない投球を続ける岩崎です。

なお追いつかれたあとの打線は、5回に先頭の江越が内野安打(ショート山本、グラブに入れながら落とす)、北條の犠打、梅野の四球で1死一、二塁とするも無得点。6回、7回は三者凡退と松葉に抑えられていました。そして1対1のまま迎えた8回も、まだ140キロ後半を連発する松葉に対して梅野が二ゴロに倒れ1死。続くペレスは127キロのスライダーを捉えて、レフトへのホームラン!

大きな体を90度に折り曲げて挨拶をするペレス選手。監督、コーチも笑っています。
大きな体を90度に折り曲げて挨拶をするペレス選手。監督、コーチも笑っています。
挨拶のあと、古屋監督(左)に握手を求められて笑顔のペレス選手。
挨拶のあと、古屋監督(左)に握手を求められて笑顔のペレス選手。

9回もマウンドに上がった岩崎は、先頭の川端に中前打されますがチャベスの二ゴロで併殺。最後は奥浪を空振り三振に仕留めて逃げ切りました!なお、この回に川端が打ったヒットを除く6安打はすべて7番~9番に許したもの。7番・奥浪が2安打、8番・武田は1安打、9番・斎藤俊が3安打という内訳です。勝利試合に行うお礼の挨拶は、勝ち越しソロのペレス選手が初担当。帽子を取って「ありがとうございます!」と大きな声で言い、深々と頭を下げてスタンドから大喝采を浴びました。

プロ最長の9回、プロ初完投!

この日は福岡へ移動するため、試合後の練習はなし。みんな早々にグラウンドから引き揚げて荷物を出し、あっという間に着替えて出発していきました。そんな中、この日の主役の1人である岩崎投手は一番最後に、いつも通りゆっくりと戻ってきます。でも考えてみたら、ここ何試合かは登板後も浮かない表情か苦笑いが多かったので、きのうのふんわりとした笑顔は久しぶりだったかもしれません。

試合後にベンチへ戻り、同期の陽川選手から声をかけられて岩崎投手もニッコリ。
試合後にベンチへ戻り、同期の陽川選手から声をかけられて岩崎投手もニッコリ。

プロで完投は?「ないですよ~」と、意外に陽気な返事。いつ以来?大学4年かな?「いつかは覚えてないですねえ。大学でも3回くらいしかないので」。9回ってのも初めてでしょう?「そうですね。1軍でことし8回の途中まで投げたのが最長でした」。かなり納得のピッチングだったのでは?「うーん、普通です。かなり、ではないですね。ただ、あまりボールで苦労することなく、どの球種でもカウントを取れた。そういう面ではよかったと思います」

この日の試合は「たくさんイニングを放れていなかったので、そこをまず目指して。あとはいつも点を取られるから、0点で終われたらいいなと思って臨みました」と岩崎投手。前回(5日、甲子園での中日戦)は危険球退場という結果だったこともあり「左バッターにもうインコースを使えないというイメージを、自分で持ちたくないし、周りにも思われたくないので、左にもインコースを使っていこうと清水さんと話をしていました。右にも使えたし、よかったと思います」と振り返りました。

芯で捉えられた当たりはあまりなかったものの、制球力アップは今後も課題と言います。
芯で捉えられた当たりはあまりなかったものの、制球力アップは今後も課題と言います。

変化球でカウントを取れていたという印象。「変化球の制球と、ストレートのアウトコースの制球を課題に投げ込んできましたので。いつもより多く。きょうはそれが出せて、よかったですね。打たれている変化球も多かったので、そこはまだ課題ですが」。しんどかったところは?「1回」。え、いきなり?でも三者凡退の立ち上がりでしたよ。「冗談は抜きにして、5回に3連打されたあと何とかストライクゾーンで勝負してアウトにできたけど、そこが一番しんどかったですかね」。真顔で冗談を挟んできますね…。

中日・佐伯監督のゲキにも応えて

課題を尋ねられた岩崎投手は「スタミナ面。松葉さんを見ていたら最後まで球威が落ちていなかった。自分はまだまだだなあと思いました」と言いますが、岩崎投手も9回に再び140キロ以上が出ていましたよ。それから「こういうのを継続していくこと。1回で終わらないよう。あとは変化球がアバウトには大分いいけど、もっと細かく。基本的に制球は引き続き課題としてやっていきたい」と話しています。

グラウンド整備中にキャッチボールをする岩崎投手。いつもより穏やかに見えます。
グラウンド整備中にキャッチボールをする岩崎投手。いつもより穏やかに見えます。

最後にこんなエピソードも。前回、5日の甲子園で松井雅選手の頭部に死球を当てて救急搬送されたことを詫びるため、試合が終わった直後に中日・佐伯監督のところへ行ったそうです。「そこで佐伯監督に『こんなんで小さいピッチャーになるな。これを機に成長してくれ』と言われました。励ましというよりは…かなり強めに。目力がすごかった!」。でしょうね。きっと怖いくらいだったと思われます。

「そういう意味でも、きょうは結果を出したかった」。そして、岩崎投手は滅多にこういう言葉を口にしないイメージだったのですが「チームメートでも先発で結果を出している人がいて、刺激されることもある」と。穏やかな笑顔の奥に秘めた闘志、しっかり受け取りました。

久保コーチと清水捕手は…

久保投手コーチによれば「どうなっても最後まで投げさせたいと思っていた」とのこと。「そういう練習をしてきたし、前回あの降板で本人も期するものがあったでしょう。練習の成果が本人の身につけばいいとの思いと、周りのピッチャーにも『岩崎の取り組み方は最近違うよ』というのを見てもらいたかった。そのために最後まで投げさせた。結果が出てよかったよ。練習は嘘をつかないってね。やってきた修正と練習が実を結んだ」

1軍については「そこで投げさせていいところまで来てほしい、という気持ち。いい方向に動き出したなっていう、始まりでいいんじゃないかな」と久保コーチ。焦りは禁物ですかね。後半の1軍でフル回転してもらうために、これが続くよう期待します。

終了の瞬間、マウンドでグータッチを交わす清水選手(右)と岩崎投手。
終了の瞬間、マウンドでグータッチを交わす清水選手(右)と岩崎投手。

岩崎投手の完投勝利をリードした清水選手は「スライダーと真っすぐが、きょうはよかった。もともといいピッチャーなので、今までも普通に投げたらこれくらいいけたはず。本人の調子がよくなかっただけで。きょうはすごくよかったですよ。結果も求められる中で1点に抑えられたし、完投もできた」と、自分のことのように喜んでいました。

◎のペレス、○に黒瀬、△の陽川

値千金の3号ソロホームランを放ったペレス選手は「(松葉投手は)いいピッチャーだと思います。自分だけでなく、みんなにとっても。しっかり見て自分が打てるボールを打ちました。真ん中内よりのスライダーです。左ピッチャーは変化球がアウトコースとかにいっぱい来るので、そんなに好きではないですねえ」と話しています。そして「いい感触で打てました。強く打つことだけ考えて打席に立って、それがよかった」という決勝ホームラン。みんなにバシバシ叩かれるのも「楽しい時間を共有している」とニコニコでした。

HRを打ってハイタッチで迎えられるペレス選手。このひとときも「楽しい時間」と。
HRを打ってハイタッチで迎えられるペレス選手。このひとときも「楽しい時間」と。

10日に寮を出て1人暮らしを始めたばかり。「今はまだ外食です。来週から料理を始めると思います」。へえ~!自炊するんですね。何を作りますか?「ライス&チキン」。いつもペレス選手が言っている、ドミニカ共和国の定番料理を挙げました。それとサラダも?「はい。サラダは毎日!」。買い物にも自分で行く予定らしく「買い物に便利なところなので」と永田通訳。楽しそうに自炊について話す、マメなドミニカンです。

続いて先制タイムリーを含み、この日のチームで唯一マルチヒットだった黒瀬選手は、ナイスバッティング!と言ったら「うーん、2本目はよかったですね。タイムリーになって」と4回の左前打には納得している様子でした。「チャンスにもっと打てるよう頑張りまーす!」とまとめて、福岡へ。

最後に陽川選手。実は1週間前の5日に、中日戦(甲子園)でサヨナラタイムリーを打って以来のヒットだったんですね。2回の第1打席で中前打、いい当たりを放ったものの「あとが悪かったんで…ダメです」と笑顔はありませんでした。でもきっとフレッシュオールスターで頑張ってくれると信じていますよ。その勢いで1軍にも行っちゃいましょう!

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

岡本育子の最近の記事