早稲田大学・相良南海夫新監督、突然の引継ぎで感じたこととは。【ラグビー旬な一問一答】
大学選手権では歴代最多の優勝15回を誇る早稲田大学ラグビー部は、創部100周年を迎えた今季、監督を交代させた。相良南海夫新監督は4月14日、東日本大学セブンズのあった東京・秩父宮ラグビー場で抱負を語っている。
2016年度に就任した元サントリーの山下大悟監督は、創部100周年時の優勝を目指してスポンサー企業との連携や強化計画を錬成。前年までの2季は続けて全国4強入りを逃していたが、今度の交代によって前年までの積み上げがどのように捉えられるのかが注目されることとなった。
相良新監督は、前体制時が注力した肉体強化の成果に手応え。以後は、個々の判断力や運動量増加を付与したいという。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――就任受諾のタイミングは。
「1月上旬です。OB会の方から。まぁ、驚きました」
――選手に新監督として顔を合わせたタイミングは。
「リリースされた通り、2月25日の予餞会です。ただ、事前に佐藤真吾がキャプテンになることが大体、決まっていたので、2~3日前には佐藤には会いに行きました」
――3月の英国遠征などを指揮して感じたことは。
「山下がS&C(ストレングス&コンディショニング=管理された肉体強化)、特に身体を大きくすることにこだわってきた部分が成果として出ている。身体は、思ったより強いなと。それは昨季を見ても思いましたが。バックスにはタレントも多い。いい選手は、いっぱいいるなという感じです。山下がやったことは、結果は出なかったけどプロセスには間違っていなかった部分もある。突然、(監督が)代わったということですべてを変えるのではなく、積み上げてきた2年間を(受けて)正しく積み上げていかないといけない。そこに、僕らしさというか、エッセンスを加えていければいいのかなと」
――これから付け加えたい「エッセンス」とは。
「身体が大きくなっていることは、時間をかけたことで成果が出てきている部分。これは(上位の)帝京大学、東海大学を意識した取り組みだと思うのですが、それによって『2人がかりでないと(相手の突進が)止まらない』というところから『1対1でも止められる』と自信を持てる域に入ってきたのかなと。そういう意識を植え付けたい」
――山下前監督は「ダブルタックル」の方法を詳細に定義づけていましたが、今季からは1人で相手を倒し切ることにフォーカスを置くのでしょうか。
「そうですね。アタックも然りで、1人で勝負する、抜く、当たる。そういう部分を強調していきたいなと思います」
――攻撃面では左右のポッド(グラウンドの各所へまんべんなくフォワードが配置されるシステム)へ大きく球を動かしスペースを探っていましたが、今年は。
「ラグビーのスタイルとしては、単純にゲインラインの攻防(に焦点を置く)。ゲインラインを越えられればいい。ストラクチャーを3、4回重ねたなかでどこかで抜くというよりは、常に1回、1回のフェーズのなかでゲインを狙うというマインドセットでいきます。
去年まではストラクチャーにはめ込んでいる部分もあったと思いますが、単純に『空いているところ(スペース)を行けばいい』というところもある。攻守とも、常にそういう(その場の選手が判断できるような)準備をして、アタックであれば空いているところを効果的に攻める。そのためには個々の運動量、ワークレートが必要になってくる。身体を大きくすることと相反する部分も出ますが、走る要素も高めないといけない。ここ(肉体強化計画)はS&Cと相談していきたいです」
――グラウンド外の環境については、どれくらいの要素を引き継がれる予定ですか。例えば、推薦枠の拡張と担当者の設置で改善されていた新人採用については。
「推薦のところ、高校の先生と作ってきた関係は、彼(山下前監督のことか)から聞いて引き継いでいます。そもそも僕も、三菱で高卒採用のために高校を回っていた。顔の繋がりはもともとあるので、そこはあまり困っていません」
――寮の食事などをサポートするスポンサー企業との連携は。
「僕も4月からフルタイムになったばかりなので、そこのところはこれからです。結果が出ていませんが、来たいと思ってくれる学生が増えるようなチームにしていきたいと思います」
相良新監督の言葉通り、前体制1年目で加入した斎藤直人ら有望株は3季目を迎え、新1、2年生にも高校時代に実績を残したタレントが揃う。戦術の変更なども示唆した相良監督は、4月22日、日本体育大学との春季大会初戦に挑む(東京・早大上井草グラウンド)。