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深夜、誰もいない「心霊スポット」の廃墟の中で肝試し なぜ軽犯罪法違反か?

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

 肝試しのため、深夜、インターネット上で「心霊スポット」などと紹介されている福岡市内の廃墟の建物に入り込んだとして、18~21歳の男女12人が摘発された。

 この点、こうした廃墟でも、施錠され、警備員による定期的な見回りがあるなど、人が事実上管理・支配していると言える状態であれば、管理者に無断で入り込むことは刑法の建造物侵入罪にあたる。

 しかし、管理者がいても、実際の管理が十分でないなど、事実上の管理・支配が認められなければ、建造物侵入罪に問うことができない。

軽犯罪法違反に問われる

 そこで、そうした場合には、次のような行為に及んだ者を処罰の対象としている軽犯罪法で摘発することになる。

「人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者」

「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者」

 2016年にも、サバイバルゲームをするため、東日本大震災で被災した宮城県の廃校に無断で立ち入った男らが軽犯罪法違反で書類送検されている。

 今回のケースは、教職員用の研修所だった廃墟が舞台だ。肝試し目的で深夜訪れる若者が相次ぎ、ボヤ騒ぎもあり、近隣住民も騒音などの苦情を警察に申し入れていたため、6月1日に管理者が「立入禁止」の表示をしていた。

 にもかかわらず、男女らは5日午前3時ころ、これを無視して入り込んだ。警戒中の警察官が中にいた12人から事情を聴き、摘発に至ったという。

 軽犯罪法違反で21歳の女が書類送検、未成年の大学生ら11人が家裁送致となった。軽はずみな行動が事件に発展する場合もあるということを知っておくとよいだろう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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