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30代が気をつけるべき「がん」とは?2千万人以上データが明らかにした驚きの数字【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

日本の30代は年間1万6千人が「がん」と診断

「がん」は老人だけの病気だと思っていませんか?

では次の数字はご存知でしょうか?

20代:約4200人/年、30代:約1万6300人/年

これは日本で1年間に「がん」と診断される人を推計した数字です。

割合に直すとそれぞれ10万人あたり約30人と90人です [国立がん研究センター「がん情報サービス] 。

30歳になったら、「がん」は決して無関係な病気ではないのです。

若い人たちで特にリスクの上がっている「がん」が明らかに

そこで本題です。

最新の研究から、若い人たちで特にリスクの高い「がん」が明らかになりました。高齢者よりも若者の方がずっと発症する確率が高い「がん」があるのです。

論文が載ったのは「ランセット公衆衛生版」という国際学術雑誌。著者は

米国がん学会のヒョナ・ソン氏たちです [文末文献1] 。

米国で2000年から2019年の間にがんと診断された、2千370万人弱を解析した結果です。

「年齢による発がんリスクの差」や「その時々の環境が発がんに与える影響」を統計学的に除外)補正)して比較。

若い人たちで急増トップは「小腸がん」

若い人で高齢者に比べ発症リスクが上がっていた「がん」の筆頭は「小腸がん」でした。

1955年生まれに比べ生まれが遅くなるほど発がんリスクは上昇し、'90年生まれでは'55年生まれに比べ、リスクはなんと3.6倍にまで跳ね上がっていました。

もっとも「小腸がん」の患者数は現在、日本では10万人あたり6人のみ。「希少がん」に分類されています [国立がん研究センター「がん情報サービス」] 。しかし上記の数字を見ると、今後は分かりません。油断は大敵です。

困ったことに「小腸がん」は早期発見が難しく、症状が出て発見された時には進行した状態で発見される方がほとんどです。また「これなら確実」という「標準治療」も確立していません。「ベスト」の治し方も分かっていないのです。

そうなると私たちにできるのは「予防」だけ。

でもどうやって?

「超加工食品」を避け「食品添加物」にも注意を

若い人たちで「小腸がん」が増えている理由をソン氏たちは、いわゆる腸内細菌叢の変化ではないかと指摘しています。高度に加工された食品(超加工食品)食品添加物が、それらの細菌叢に悪影響を与えている恐れがあるというのです。

「小腸がん」を予防したければ、そういうものを口にしないよう心がけたほうが良いかもしれません。

「甲状腺がん」リスクも若年者は高い

小腸がんに次いで若い人たちほど発生リスクの上がっていたのは「甲状腺がん」でした。

1955年生まれに比べ1990年生まれでは3.2倍もリスクが上がっていたのです。

この「がん」も自覚症状がないのが一般的ですが、喉に「しこり」を感じる人もいるようです [国立がん研究センター「がん情報サービス」] 。

ただし早期に発見できれば、ほぼ100%、5年間は生存できるようです。しかし発見が遅れると、5年間で約半数の方が亡くなっていました [国立がん研究センター 「がん情報サービス]」] 。

このがんも予防したいところですが、「甲状腺がん」が若者で多い理由は論文中で言及されていません。

肥満傾向が原因となっている可能性の「がん」も

第三位は「腎臓がん」。

1990年生まれの人たちでは1955年生まれに比べ、2.9倍のリスク増でした。

早期に見つければ80%以上が5年間生存できますが、手遅れになると5年生存率は20%を下回ります [国立がん研究センター「がん情報サービス」] 。

そして腎臓癌に続くのが「膵臓がん」です。1990年生まれでは1955年生まれに比べ発症リスクは2.6倍でした。

早期発見してもその後はあまり良くなく、5年間で半数近くの患者さんが亡くなられます [国立がん研究センター「がん情報サービス」] 。

この2つの「がん」発症リスクがが若い人たちで高い理由をソン氏たちは、「肥満度が高くなった」からではないかと考察していました。

肥満でリスクが上がる「がん」としてはこのほかに、乳がん肝臓がんなどをソン氏たちは挙げています。

適正体重の維持は、がん予防の観点からも大切なようです。

生活習慣の変化が発がんリスクを変えた?

このように、甲状腺がんを除き、若い人たちの間でリスクが高まっているがんはいずれも生活習慣の変化(食事や肥満度)が関係していると考えられました。

働き盛りの「がん」は家族や仕事に大きな影響を与えます。治療費だってバカになりません。そうならないためにも今日から、食事や体重を少し気にしてみませんか?

最後に

いかがでしたか?

米国のデータですが、「若い人たちで発症リスクが著しく上昇している「がん」がある」という論文のご紹介でした。しかし幸いなことに、それらの「がん」のほとんどは、生活習慣に気をつければリスク増を避けられるようです。

「がん」については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひご覧ください。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 若い人たちで発症リスクが著増しているがん種がある

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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