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血糖値が「高いまま」「上がってきた」で「がん」のリスクが最大4倍にも。25万人データ解析【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

「高血糖」は糖尿病だけの問題ではなかった

「血糖が高い」と聞くと思い出すのは「糖尿病」でしょう。そして糖尿病を放置すると血管がボロボロになり色々な病気のリスクが高くなる——、このあたりはもう耳にタコができていると思います。

でも高血糖を放置して危険性が高まるのは血管の病気(網膜症や腎症、心筋梗塞など)だけではなさそうです。「がん」の危険性も飛び跳ねるように高くなる可能性が明らかになりました。

韓国国立がんセンター・がん科学政策大学院のティ・ミン・トゥー・コン氏たちが英国医学雑誌(BMJ)の糖尿病専門兄弟誌で報告した論文 [文末文献1] をご紹介します。

血糖値には4つの変化パターンがあった

今回コン氏たちが調べたのは韓国の健康診断データベースです。

がんの診断歴がなかった25万6千人を対象に5年間の血糖値の変化を調べ、空腹時に測定した血糖値の変化パターンと発がんの関係を調べました。

こういう調査は一般論として、数が多いほど信頼性が増します。

するとまず、血糖値の変化には4パターンあることが分かりました。

  ・ずっと低い「低→低」パターン

  ・「ちょっと高め」のままの

   「ちょい高→ちょい高」パターン

  ・「ちょっと高め」からさらに上がる

   「ちょい高→高」パターン

  ・ずっと高い「高→高」パターン

です(下図)。

万国著作権条約にのっとり引用。
万国著作権条約にのっとり引用。

血糖値が「高いまま」「上がってきた」で発がんリスクが最大4倍に増加

そしてこのあと8年間観察したところ、7.4%で発がんが確認されました。

そこで上記の血糖値変化パターン別に発癌リスクを比べたところ、

「高→高」パターンと「ちょい高→高」パターンでは、「低→低」パターンに比べ、ある種のがんになる危険性が高くなっていました

具体的には、

 <「高→高」パターン>

   ・消化管がん  1.3倍

   ・肝臓がん   1.7倍

   ・多発性骨髄腫 4.1倍

<「ちょい高→高」パターン>

   ・口腔がん   2.1倍

   ・肝臓がん   1.5倍

   ・膵臓がん   2.0倍

これらの数字はすべて、血糖値パターン以外の発がん因子による影響を統計学的に除去した結果です。

高血糖で細胞が傷つく?

ではなぜ、「高→高」パターンや「ちょい高→高」パターンでは発がんリスクが上がるのでしょう?

コン氏たちは「高血糖」がもたらす「酸化ストレス」(必要以上の酸素が細胞を傷つけがん化促進)や、「インスリン過多」(血糖を下げようと分泌されすぎたインスリンが細胞のがん化を促進)などの可能性を挙げています。

急に下がったコレステロールにも注意

いかがでしたか?

血糖値「高→高」、「ちょい高→高」パターンの人はある種のがんになるリスクが増えていたという論文のご紹介でした。

「がん予防」という観点からも、食事や運動に気を配って血糖は下げておいた方が良いのかもしれません。

そして血糖がなかなか下がらない人は、こまめにがん検診を受けるのも一つの手でしょう。

そうそう、この論文とは関係ありませんが、コレステロール値が何もしていないのに「ガタっ」と下がったら、がんを疑ってみてください。がん細胞はものすごい勢いでコレステロールを消費します。

「何もしないでコレステロールが下がった〜」と喜んでいると、あとで大きなしっぺ返しを食うかもしれません。

さて、血糖については以下のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 血糖値変動パターンにより発癌リスクは異なる

英語論文ですが、DeepLなどの無料翻訳を使ってぜひご自身でも読んでみてください。

【注意】本記事は医学論文の紹介です。研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員。

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