給付金3万円の対象となる住民税非課税の高齢者世帯の正体とは?
読売新聞の報道によりますと、住民税非課税などの低所得世帯に一律3万円を給付するのと、低所得の子育て世帯に子ども1人あたり5万円を給付する方針は既定路線のようです。
物価高対策に2兆円超、LPガス補助は「推奨事業」に…低所得世帯に一律3万円 (読売新聞 2023/03/20 07:37)
実は、この給付金の対象となる住民税非課税世帯には、高齢者世帯が多く含まれるのですが、住民税が非課税である高齢者世帯とはどういう世帯なのでしょうか?
厚生労働省「国民生活基礎調査(世帯票)」によれば、日本の全世帯5191.4万世帯に占める65歳以上の高齢者世帯は1506.2万世帯で全体の29.0%となっています(なお、同「所得票」によれば、全世帯5142万世帯に占める65歳以上の高齢者世帯は1771万世帯で全体の34.4%となっています)。
厚生労働省「国民生活基礎調査(所得票)」で見た全高齢者世帯の所得分布は図1のように低い所得に分布が集中する形となっています。
図1 高齢者世帯の所得分布
このうち、高齢者世帯の住民税非課税世帯は767万世帯あり、高齢者世帯の43.3%、全ての住民税非課税世帯1218万世帯の63.0%を占めます。
図2 住民税非課税世帯に占める高齢者世帯の割合
各所得階層に占める高齢者の住民税非課税所得世帯の割合は図3のように、79%が250万円未満までに集中しています。
図3 高齢者世帯・住民税非課税世帯の所得別割合(累積)
一方、やはり厚生労働省「国民生活基礎調査(所得票)」によりますと、高齢者世帯の平均年金受給額は207.4万円となっています。
つまり、今回検討されている3万円の給付を受けられる住民税非課税世帯の3世帯に2世帯弱は高齢者世帯であり、その多くは平均的な年金額を受給している世帯であると言えます。
一方、64歳以下の現役世帯のうち、例えば、所得階層が200~250万円の非「住民税非課税世帯」は同所得階層の61.0%と、高齢者世帯の同じ所得階層が48.2%であるのに比べて高くなっています。
これは稼働所得(給与所得)に比べて年金所得が控除の面で優遇されているからに他なりません。そもそも年金所得を稼ぐのに必要経費はほぼゼロでしょうから控除という概念がおかしいはずです。
同じ所得水準であれば同じ税負担を負うべきという課税の公平性の原則(水平的公平性)に抵触していますので、一刻も早い是正が必要でしょう。
なぜ、高齢世代と現役世帯で等しい負担能力のあるにもかかわらず扱いが違うことが正当化されるのでしょうか?
以上のように、住民税非課税世帯の高齢者世帯の多くは、現役世帯とは違って、年金という安定所得を得ている点、しかも控除の面で優遇されている点を考えれば、現金給付の対象世帯を一律住民税非課税世帯とするのは、統一地方選を控えた選挙目当てのバラマキと言われても仕方ないでしょうし、新型コロナ以降、類似の給付はすでに3回を数えていることもあり、しかもその度ごとに同じことは指摘され続けている訳ですから、スピード重視も言い訳にはなりません。
そろそろ本当に困っている真の低所得層に的を絞った効果的な支給をお願いしたいと筆者は思いますが、読者の皆さんはいかがお考えでしょうか?