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藤井聡太王位、3連覇まであと1勝! 豊島将之挑戦者からの銀捨てに完璧対応し、銀捨て返しでフィニッシュ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月24日・25日。徳島県徳島市・渭水苑において、お~いお茶杯第63期王位戦七番勝負第4局▲藤井聡太王位(20歳)-△豊島将之挑戦者(32歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 24日9時に始まった対局は25日17時48分に終局。結果は95手で藤井王位の勝ちとなりました。

 藤井王位はこれで今期七番勝負は3勝1敗。防衛、3連覇まであと1勝としました。

 第5局は9月5日・6日、静岡県牧之原市・平田寺でおこなわれます。

 藤井王位の2日制タイトル戦番勝負の成績は、これで19勝2敗(勝率0.905)となりました。

 藤井王位の公式戦通算成績は276勝56敗(勝率0.831)です。

銀捨てで始まり、銀捨てで決着した戦い

 藤井王位先手で、戦型は角換わり腰掛銀。銀交換のあと、定跡形をはずれた戦いとなりました。

 封じ手(56手目)で豊島挑戦者は相手の歩頭に銀を捨てる、予想外の強手を放ちます。

 藤井王位がもし銀を打ち返せば、千日手の可能性もありました。しかし先手番の藤井王位は打開。敢然と銀を取ったあと、攻防に利く角を打ち据えます。豊島挑戦者からの攻めを受け流し、機を見て反撃に転じました。

 藤井王位優位で迎えた終盤、91手目。持ち時間8時間のうち、残りは藤井49分、豊島53分でした。

 藤井王位はどういう方針で臨むのか。藤井玉も危険な形に追い込まれており、手堅く受ける順もあるかと見られていました。

 勝ちが読み切れる局面では、最短の勝ちを目指すのが藤井流です。藤井王位は4分消費のあと、タダで取られるところに銀を打ち、豊島玉に王手をかけました。「玉は下段に落とせ」のセオリーにしたがった一手ではあります。しかし銀1枚を渡しても自玉は詰まないと、読み切らないといけません。驚くべきことに、それが詰まない。盤面全体の速度計算を完璧に読み切った、鮮やかな勝ち方でした。

 92手目。豊島九段は31分考えて、タダの銀を同玉と取りました。藤井王位は上から銀で押さえて、豊島玉を受けなしに追い込みます。

 豊島挑戦者は藤井玉に一度、王手をかけます。藤井王位はすぐに玉を逃げて詰まない。

 王手は続いても詰まないとわかっている豊島挑戦者。次の手を指さず、潔く投了の意思を告げました。

 本局は豊島挑戦者の銀捨てで本格的な戦いが始まり、藤井王位の銀捨てで決着がついたと言えるかもしれません。短手数ながら密度の濃い一局でした。

 両者の対戦成績はこれで藤井16勝、豊島11勝となりました。

 将棋界の八大タイトル戦。藤井王位は王位戦を制すると、今年度3回目の防衛を果たすことになります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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