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東京五輪に挑む韓国代表決定!! ソン・フンミンが最終メンバーから外れた理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

やはりというべきか、当然というべきか。一部のサッカーファンたちの間で期待されていたトッテナム所属のストライカー、ソン・フンミンの東京五輪出場は実現しなかった。

韓国サッカー協会(KFA)は先ほど、東京五輪に挑む最終メンバー18名を発表。

注目のオーパーエイジとして選ばれたのは、元ガンバ大阪で現在はフランスのジロンダン・ボルドーに所属するFWファン・ウィジョ、中国スーパーリーグ北京国安で活躍するDFキム・ミンジェ、そして今季までドイツ・ブンデスリーガのフライブルクに所属するも兵役のために5月に退団し、Kリーグの古巣・水原三星(スウォン・サムスン)に復帰したMFクォン・チャンフンの3人が選ばれた。

元G大阪ファン・ウィジョがオーバーエイジ選出!!

ある意味、順当と言えば順当な結果だ。

例えばファン・ウィジョ。延世(ヨンセ)大学を中退してKリーグの城南(ソンナム)FC入りするも伸び悩んでいたファン・ウィジョの才能を開花させたのが、当時の城南FC監督で現在はU-24韓国代表監督を率いるキム・ハクボム監督だった。

キム・ハクボム監督は2018年アジア大会でもファン・ウィジョをオーバーエイジとして招集。当時ファン・ウィジョが不調だったことから“コネ選出”との陰口があったが、ファン・ウィジョはそんな非難と雑音をゴールでかき消し黙らせる。

バーレーン戦と準々決勝ウズベキスタン戦でハットトリックを決める大活躍で、韓国の金メダル獲得に大貢献した。

ふたりの関係はその後も良好で、キム・ハクボム監督が4月にファン・ウィジョの招集をほのめかすと、ファン・ウィジョ本人も「呼んでくださるのであれば当然行くつもりだ」と断言。KFAとファン・ウィジョが所属するボルドーとの協議もスムーズに進み、今回のオーバーエイジ選出が決定したもようだ。

DFのキム・ミンジェも、かなり以前からオーバーエイジとしての参加が有力視されていた。

“韓国のファン・ダイク”と呼ばれ、今や韓国代表でも欠かせぬム・ミンジェは2018年アジア大会にも参加。以来、キム・ハクボム監督が寄せる信頼は大きく、DFのオーバーエイジ部門では常に最有力だった。

複数の欧州クラブが獲得に興味を示しており、今夏の欧州進出もありうる微妙な時期だけに東京五輪参加は五分五分とされていたが、結果的にはキム・ハクボム監督が望んだ通りの選出となったと言える。

“3度目”はなかったソン・フンミン、クラブ再契約問題も

問題はソン・フンミンだった。

前出の4月の会見でキム・ハクボム監督は「オーバーエイジの候補は11人でその中にソン・フンミンも入っている」とし、ソン・フンミンもその11人とともに5月下旬には来日のための新型コロナ・ワクチン接種を受けていた。

6月4日にはソン・フンミンも「僕が本当に助けになるのであれば拒む理由はない」と発言。ただ、「クラブとも話さなければいけない」と付け加えていただけに、可能性は微妙だった。

(参考記事:ソン・フンミンが明かす「完敗の“日韓戦”」「東京五輪」「今後の去就」【一問一答/後編】)

というのも、東京五輪はFIFA主催大会ではないため拘束力はなく、クラブの了解が不可欠となるが、ソン・フンミンは過去に2度もトッテナムから許可を得ている。

一度目は2016年リオデジャネイロ五輪。オーバーエイジとして出場するも、チームは準々決勝でホンジュラスに敗退。メダル獲得なら兵役免除の恩恵にも授かれたが、それも叶わなかった。ピッチの上に泣き崩れたソン・フンミンはコーチングスタッフに抱きかかえられながら10分以上も号泣していたほどだった。

2度目は2018年アジア大会。前出のファン・ウィジョとともにオーバーエイジとして参加し、見事に金メダルを獲得。兵役免除の恩恵も得た。トッテナムが2度目のオーバーエイジを許可したのも、ソン・フンミンの兵役問題を解決するためであったことは、誰の目にも明らかだった。

それだけに兵役問題が解決した今、トッテナムが3度目のオーバーエイジを許可する義務も必要もなく、東京五輪の予備エントリーにリストアップされていたといえ、「ソン・フンミンの東京五輪行きはない」というが我々韓国メディアの予想だった。

ましてソン・フンミンとトッテナムの契約関係は2023年6月までとなっており、現在は再契約交渉が水面下で始まっているという。

そんな大事な時期に、トッテナムが3度目のオーバーエイジを許可するはずもない。ソン・フンミンの東京五輪参加が立ち消えになったのは、当然と言えば当然なのかもしれない。

注目の技巧派クォン・チャンフン

ただ、ソン・フンミンの招集は流れたが、クォン・チャンフンも韓国ではその名が知られたスター選手なだけにぜひとも注目しておきたい。

Kリーグで頭角を現したあと、2016年リオ五輪に出場。2017年1月からはフランスのディジョンFCOに移籍し、そこで2年半過ごしたあと、2019年からブンデスリーガのフライブルクに所属した。ケガで2018年ロシア・ワールドカップ出場はならなかったが、視野が広く攻撃センスの高さに定評があるテクニシャンだ。

兵役のために5月にフライブルクを退団して国内復帰。古巣の水原三星に帰ってきた。東京五輪でメダル獲得となれば兵役免除の恩恵に授かり、ふたたび欧州Uターンの道が見えてくるだけに、モチベーションも高いと言えるだろう。

なお、そのほか今回発表された18人には欧州組からMFイ・ガンインが唯一選ばれたほか、A代表選出歴のあるFWイ・ドンジュン、FWソン・ミンギュ、MFイ・ドンギョンらが選出。

元Jリーガーでは、MFウォン・ドゥジェ(元アビスパ福岡)、GKアン・ジュンス(元セレッソ大阪、鹿児島ユナイテッドFC)の2人が選ばれた。

U-24韓国代表は今後、7月13日(対戦相手未定)と16日(対U-24フランス代表)に国内で国際親善試合を実施。翌17日に東京へ出国し、本大会への準備を進める計画だ。

2012年ロンドン五輪の銅メダル以上の成績を目指す東京五輪では、ホンジュラス、ニュージーランド、ルーマニアと同じグループBに所属している。

東京五輪・U-24韓国代表 最終メンバー

■GK

ソン・ボムグン(全北現代モータース)

アン・ジュンス(釜山アイパーク)

■DF

キム・ジェウ(大邱FC)

キム・ジンヤ(FCソウル)

ソル・ヨンウ(蔚山現代)

イ・ユヒョン(全北現代モータース)

チョン・テウク(大邱FC)

キム・ミンジェ(北京国安)※オーバーエイジ

■MF

キム・ドンヒョン(江原FC)

ウォン・ドゥジェ(蔚山現代)

イ・ガンイン(バレンシア/スペイン)

チョン・スンウォン(大邱FC)

イ・ドンギョン(蔚山現代)

■FW

ソン・ミンギュ(浦項スティーラース)

オム・ウォンサン(光州FC)

イ・ドンジュン(蔚山現代)

クォン・チャンフン(水原三星ブルーウィングス)※オーバーエイジ

ファン・ウィジョ (ボルドー/フランス)※オーバーエイジ

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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