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総額1億ドル以上の延長契約は、今年早くも8人目。一方でその潮流に背を向けた選手も

宇根夏樹ベースボール・ライター
ムーキー・ベッツ(左)とザンダー・ボガーツ Jul 14, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 前年に新人王を受賞したロナルド・アクーニャJr.が、アトランタ・ブレーブスと8年1億ドル(+球団オプション2年)の延長契約を交わした。マニー・マチャドが10年3億ドルでサンディエゴ・パドレスへ入団したのを皮切りに、1億ドル以上の契約を手にした選手は、今年に入って10人を数える。マチャドとブライス・ハーパー(フィラデルフィア・フィリーズ)以外の8人は、いずれも延長契約だ。

筆者作成
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 彼らの他にも、2月から4月にかけて、10人が4000~7000万ドルの延長契約を結んだ。合計すると、4000万ドル以上の延長契約は18人に上る。

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 一連の延長契約は、すべてではないにしても、近年のFA市場の冷え込みが影響している。たいていの選手は、30歳前後でFA市場に出る。マチャドやハーパーのような、20代半ばのFAは例外だ。多くの球団は、すでにピークに達してこれから下降線をたどる可能性のあるFAに投資するのではなく、まだ右肩上がりの成長曲線を描いている(あるいは現在の水準を今後もキープできそうな)選手の契約を延長し、FAになるのを遅らせて長く保有するのが、勝利を手にするための正しい金の使い方だと考え始めている。

 それを受け、早めの長期契約、すなわち安定を望む選手も増えているようだ。アクーニャの契約は年平均1250万ドル、ブレーブスが2027年と2028年の球団オプションをいずれも行使した場合は1240万ドルだ。このまま順調にプレーを続ければ、かなりのディスカウントになる。それでも、アクーニャは記者会見で通訳を介して「後悔はしていない。未来は誰にもわからない。明日何が起きるかは誰にもわからない。この契約を結ぶことができて、とてもうれしい」とコメントした。

 一方で、球団から1億ドル以上の延長契約を提示されながら、それを受け入れなかった選手もいる。最近では、クリス・ブライアント(シカゴ・カブス)がそうだ。ESPNのデーブ・キャプランによると、昨年10月、ブライアントは2億ドルを超える延長契約の申し出を却下したという。今年3月には、ムーキー・ベッツ(ボストン・レッドソックス)が8年2億ドルの延長契約を断っていたとのニュースも出た。こちらを報じたニューヨーク・ポストのジョエル・シャーマンによれば、話があったのは、2017年のシーズン終了後のことだ。その年の4月には、スポーツ・イラストレイテッドのトム・バードゥッチが、約1億ドルの延長契約の申し出をフランシスコ・リンドーア(クリーブランド・インディアンズ)が却下、と伝えた。

 3人は現在の潮流に背を向けた格好だが、アクーニャが言うように「未来は誰にもわからない」のだから、その判断についてあれこれ言うのはまだ早いだろう。たとえ、FA市場が停滞していても、これまでのような活躍を続けていけば、大枚を投じる球団は皆無ではあるまい。

 今シーズンの年俸は、ブライアントが1290万ドル、ベッツが2000万ドル、リンドーアは1055万ドル。現在26歳のベッツは、来シーズンが終わると――それまでに延長契約を交わすこともあり得るが――FAとなる。27歳とブライアントと25歳のリンドーアがFA市場に出るのは、ベッツよりも1年遅く、2021年のシーズン終了後だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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