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記録的な暑さから秋らしい気温になるも、大型で非常に強い台風14号(コイヌ)が沖縄県先島諸島に接近

饒村曜気象予報士
沖縄県先島諸島に接近中の台風14号の円形の雲(10月2日16時)

記録的な暑さの終焉

 「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句があります。

 厳しい暑さも彼岸の頃には和らぐという意味ですが、記録的な猛暑となった今年、令和5年(2023年)は、彼岸の入りとなった9月20日でも厳しい暑さが続いていました。

 しかし、9月23日の彼岸の中日(秋分の日)の頃には真夏日や夏日を観測した地点数は大きく減りました。

 しかし、今年は、「暑さも彼岸の中日まで」とはなりませんでした。

 彼岸明け(9月26日)後に再び厳しい残暑になったからです。

 とはいえ、10月に入ると、さすがに記録的な暑さも終焉となっています。

 10月2日に最高気温が30度以上の真夏日を観測したのは26地点(気温を観測している全国914地点の約3パーセント)、夏日を観測したのは401地点(約44パーセント)となっています(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(6月1日~10月2日は実況、10月3~5日は予想)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(6月1日~10月2日は実況、10月3~5日は予想)

 10月3日は、移動性高気圧におおわれてきますので、北海道~東北北部では昼頃までは雨の降る所があり、所により雷を伴いますが、次第に天気は回復に向かう見込みです(図2)。

図2 予想天気図(10月3日9時の予想)
図2 予想天気図(10月3日9時の予想)

 また、東北南部~九州は概ね晴れますが、午後は西から次第に雲が広がる見込みです。

 大陸育ちの乾燥した移動性高気圧ですので湿度が低く、晴れても気持ちのよい暖かさになる見込みです。

 真夏日や夏日を観測する地点数が減り、その真夏日や夏日を観測したところでも朝晩の気温が低くなって過ごしやすくなる見込みです。

 ただ、前線に近い九州南部では夜には雨の降る所がありそうです。

 また、大型で非常に強い台風14号の影響で、南西諸島は雨が降り、雷を伴って激しく降る所もある見込みです。

台風14号が沖縄県先島諸島に接近

 大型で非常に強い台風14号が沖縄の南にあって西北西に進んでいます(図3)。

図3 台風14号の進路予報と海面水温(10月3日0時)
図3 台風14号の進路予報と海面水温(10月3日0時)

 台風の進路予報は最新のものをお使いください

 台風が発達する目安の海面水温が27度といわれていますが、台風14号は、これよりも高い29度位の海域を進む予報です。

 このため、発達したまま西進して台湾南部に向かいそうです。

 沖縄県八重山地方は、台風が少し離れて通過する見込みで、暴風域に入る確率は大きくはありません。

 3時間ごとの確率を見ると、竹富島では4日朝が9パーセントと一番高くなっており、この頃が台風の最接近とおもわれます(図4)。

図4 沖縄県八重山地方(竹富島と与那国島地方)が暴風域に入る確率
図4 沖縄県八重山地方(竹富島と与那国島地方)が暴風域に入る確率

 また、与那国島地方では、4日の昼過ぎから夕方が最接近と思われます。

 先島諸島では10月3日から大しけとなり、非常に強い風が吹く見込みです。うねりを伴う高波に警戒し、強風に十分注意してください。

フィリピンの台風災害で「テンビン」から「コイヌ」に

 台風被害を軽減するための国際組織として台風委員会があり、14の国と地域が参加しています。

台風委員会を構成する国と地域(アルファベット順):

カンボジア、中国、北朝鮮、香港、日本、ラオス、マカオ、マレーシア、

ミクロネシア、フィリピン、韓国、タイ、アメリカ、ベトナム

 この台風委員会は、アジア各国の連携強化と相互理解を推進し、人々の防災意識を高めることなどを目的として、平成12年(2000年)から台風に名前(アジア名)を付けています。

 それまでは、アメリカが人名(英語名:最初は女性名、昭和54年(1979年)からは男女交互の名前)を付けていました。

 台風の名前は、台風委員会に加盟する国と地域が10個ずつ持ち寄った140の名前のリストから順番に繰り返し使われますが、日本は星座の名前を10個提案しています(名前の提案は加盟する国と地域の自由な提案)。

 日本が現在提案しているは、コイヌ、ヤギ、ウサギ、カジキ、カンムリ、クジラ、コグマ、コンパス、トカゲ、ヤマネコの10の星座です。

 ただ、この台風の名前は、大きな災害があると、新しい名前に差し替えられるというルールがあります。

 アジア各国のどこかで大災害が発生した台風については、この名前で被害を後世に伝えるため、引退させるのです。

 平成12年(2000年)の台風1号にカンボジアが提案したダムレイが使われてから、今年、令和5年(2023年)の台風9号にベトナムが提案したサオラー(意味は最近発見の動物の名前)で、ちょうど4巡目が終わっています。

 つまり、140の4倍、のべ560個の名前が使われたのですが、このうち、40個が引退となっています。

 宗教上の言葉と似ているなどで変更した台風もありますので、全てが大災害が発生した台風というわけではないのですが、560分の40(約7パーセント)という数字は少ないものではありません。

 現在、沖縄の南を西進している台風14号には、日本が提案した「コイヌ」という名前がついていますが、もともとは、「テンビン」という名前が提案されていました。

 しかし、平成29年(2017年)の台風27号(テンビン)は、12月22~24日にフィリピン南部のミンダナオ島付近を通過し、大雨による地滑りや洪水で、少なくとも230人が死亡するなどの大災害が発生したことから「テンビン」が引退したのです。

 日本が提案した名前でいうと、「テンビン」の他にも、「コップ」と「ワシ」がともにフィリピンの大災害で、「ハト」が中国の大災害で引退となっています。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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