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なぜ必要?ジブン手帳公式ガイドブックを通じて手帳本の歴史と存在意義と本質を、普通の人向けに説明します

舘神龍彦デジアナリスト・手帳評論家・歌手

 この9月上旬に実務教育出版から『ジブン手帳公式ガイドブック2023』が発売になりました。この数年は、ジブン手帳の公式ガイドブックの発売は恒例になっています。

 おそらくジブン手帳のユーザーならばあまり疑問を持つことなく、書店で手に取ったり、あるいはオンライン書店でチェックしたり、予約・注文する人も多いかと思います。
 さてでは、なぜ手帳にガイドブックがあるのでしょうか。

 こんにちは。デジアナリスト・手帳評論家の舘神龍彦です。

 今回は、『ジブン手帳公式ガイドブック2023』をきっかけとして、手帳のガイドブックの歴史と存在意義について考えていきます。

手帳は使い方を教えてもらう機会がない

 まずなぜガイドブックがあるかの理由について。
 これには2つの大きな理由があります。
 一つは、手帳の使い方を教えてもらう機会がないこと。一部の進学校などをのぞき、学校でも手帳の使い方は教えてもらいません。

 よく考えたらたとえば、夏休みの宿題をきちんとこなすためにも手帳の使い方は教えてもらっても良さそうなものです。にもかかわらず、そういう機会はないのです。

手帳の使い方のお手本を知りたい

 もう一つは、手帳の使い方の問題です。
 実は手帳には使い方の正解はありません。
 ノートに時間軸OSをインストールしたのが予定管理用の手帳である。
 これが私なりの手帳の定義です。ですが、手帳に予定ではなく日記みたいな事を書いてもいいわけです。

 決まりはありません。

 そして決まりがないゆえに、自分の参考になるようなお手本がほしい。
 そこで、登場するのがガイドブックなのです。

専用ガイドブック登場前夜の状況を整理する

 実は、ジブン手帳公式ガイドブック以前にも、手帳のガイドブックは存在しています。もっとも近いのは、というよりその原型ともなっているのは、ほぼ日手帳のガイドブックでしょう。この2種類は、手帳本体の性格が大きく違う割には、書籍としての存在意義や構成がよく似ています。 

 また、各種神社系手帳(※1)の著者・監修者もそれぞれ手帳のガイド本を出しています。 これは、手帳セールスの誘導ツールとしての役割も担わされていたと思われます。
 ※1 有名なビジネスパーソンや大学教授が、自らの時間術・仕事術をまとめた手帳。ほぼ必ずガイドブックが存在する。

 あるいは、たとえば、モレスキンとか、ロルバーンのような特定ブランドにフォーカスしたものも存在しました。

 また、特定のジャンルの手帳群を対象としたものもあります。
 拙著『システム手帳新入門!』(岩波書店)もそのひとつでした。

 このように、手帳は使い方を教わる機会がなく、手本が必要とされる道具であるがゆえに、ガイドブックが必要なのです。

専用ガイドブックの存在意義とは

 では、『ジブン手帳公式ガイドブック2023』のような、特定の手帳に特化したガイドブックの存在意義はどこにあるのでしょう。以下がその理由です。

 まず、シリーズ内のラインナップを紹介・概観すること。

 ジブン手帳は、複数のタイプを内包するブランドでもあります。

 関東に紹介されているだけでも、 「Standard」(基本タイプ)「Biz」(ビジネスタイプ)「BizSpring」(Bizの4月始まり)「Litemini」(Diary部分のみのシンプルタイプ)「Days」(1日1ページタイプ)の5種があります。またA5スリムが基本サイズですが、中にはmini(B6スリム)があるものもあります。こういうラインナップの概略を把握するのにはガイドブックは不可欠だと言えます。

 これはちょうど自動車のガイドブックのようなものだと言えば分かるでしょうか。

 たとえば、「マツダ3のすべて」((モーターファン別冊 ニューモデル速報) )のようなムックでは、マツダ3の各種ボディタイプやグレードの紹介があります。そして開発を担当した主査が、モデルごとのコンセプトや想定ユーザー、狙いなどを語るインタビューが掲載されています。ジブン手帳公式ガイドブック2023は、いわばこのニューモデル速報の手帳版だと言えます。

 主査に相当するのは、ジブン手帳開発者たる、佐久間英彰氏でしょう。

 もっとも、このガイドブックにおいては、佐久間氏が単独で語る例はあまりありません。それよりは、他の手帳の監修者やユーザーとの対談ページがそれに当たります。2023年版では、手帳オヤジこと白鬚千晴氏との対話が掲載されています。

ユーザーの使い方事例を記入のお手本として

 対談に続くページでは、ユーザーの使い方、記入事例があります。購入直後には真っ白な手帳も、こういうページを参考にすれば、記入(使い方)に迷わないわけです。

 そして後半最後あたりにあるのが、手帳に含まれている記入欄の紹介です。

 手帳のユーザーは、記録ツールとして、どんな使い方ができるのかを、内蔵された記入欄の種類で見ているところがあります。たとえば、読書記録リストが最初から入っていたら便利ですよね。また、予定記入欄の時間軸が何時から何時までなのか、土日は均等なのかなども、店頭ではなく本を開くだけで確認できるとありがたいです。

 この本で唯一ちょっと不親切だなあと思った点もあります。

 それは、巻末部分にある、記入ページの各フォーマットを紹介するページです。
 おそらくこれはジブン手帳のStandardのページについての解説だと思われます。ですが、知らない人にとっては、各フォーマットが、前述の各モデルのどれに入っているのかが、このページだけでは分からないことです。せめて、各フォーマットの下にそれが入っているモデルをアイコンなりで表示してもらえればと思いました。たとえば、ガントチャートは「Lite mini」や「DAYs」に入っているのか。このページだけみてもわからないのです。

 というわけで、今回は手帳の世界にあまり詳しくないであろう、一般の大多数の方むけに解説してみました。

 手帳が好きな人にとっては自明のことでも、そうでない人にとってはわからないことだらけだと思います。私は今後も、手帳にあまり興味がないであろうみなさまにとってわかりやすい解説を書いていこうと考えています。

デジアナリスト・手帳評論家・歌手

デジアナリスト・手帳評論家・歌手。著書『手帳と日本人』(NHK出版新書)は週刊誌の書評欄総ナメ。日経新聞「あとがきのあと」登場ほか大学受験の問題に2回出題。『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)等著書多数。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。講演等も。手帳ユーザーを集めた「手帳オフ」を2007年から開催する等トレンドセッター的存在。手帳活用の基本をまとめた「手帳音頭」をYouTubeで公開中。認知症対策プロダクト「おぼえている手帳」は経産省オレンジイノベーションプロジェクト事業採択。

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