なぜバルサは“ビッグマッチ”で勝てたのか?アウベスの帰還とサイドバックの起用法。
チャンピオンズリーグ出場への道が、見えてきた。
リーガエスパニョーラ第23節、バルセロナは本拠地カンプ・ノウにアトレティコ・マドリーを迎えた。4ゴールを奪ったバルセロナが上位対決を制している。
この結果、バルセロナはリーガで勝ち点38を獲得して4位につけた。来季のチャンピオンズリーグ出場に向け、光が差し込んでいる。
バルセロナにとって、今季は苦しいシーズンになっている。
この夏、バルセロナはリオネル・メッシがパリ・サンジェルマンに移籍した。年俸50%減を受け入れていたメッシだが、それでも心のクラブとの契約延長はかなわず。サラリーキャップの問題を抱えるバルセロナはメッシを放出せざるを得なかった。
ポスト・メッシ時代の到来――。予期していたはずの出来事が、突如として現実にあらわれた。アンス・ファティ、ニコ・ゴンサレス、ガビ、ペドリ・ゴンサレス…。近年のバルセロナは、カンテラーノとヤングプレーヤーが“豊作”となっており、才能という点では不足がない。しかしながら、メッシが空けけた穴は大き過ぎた。
昨年11月、ジョアン・ラポルタ会長が監督交代を決断して、シャビ監督が招聘された。ロナルド・クーマン前監督はチームを7位に留めてクラブを後にし、チャンピオンズリーグ出場圏内から遠ざかっていた。
■補強とシャビの思考
状況をひっくり返すため、シャビ監督は何かしらの変化を起こす必要があった。
カンテラを重視しながら、補強を行う。それがシャビ監督の答えだった。ダニ・アウベス、フェラン・トーレス、アダマ・トラオレ、ピエール=エメリク・オーバメヤンと4選手が冬の移籍市場で加入した。
先のビッグマッチで、特徴的だったのがサイドバックの使い方だ。「我々はスペインの王者を上回った。11人と10人では状況が異なった。だが私はどちらにも満足している。3−4−3と5−3−2と2つのシステムを準備していた。アウベスのところで数的優位を作ろうと考えていた。ポジショナルなレベルで、非常に良かった。完璧なゲームだった」と試合後にシャビ監督が語っていたように、バルセロナは本来の4バックではなく3バックを使った。
重要だったのは、アウベスの役割だ。右サイドバックに入ったアウベスが、立ち位置をボランチのところにする。これでアトレティコがプレスの的を絞りにくくなった。中盤で数的優位ができて、バルセロナのビルドアップが容易になった。
そのサイドバックの使い方は、ペップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)のそれに似ていた。グアルディオラ監督がバイエルン・ミュンヘンでフィリップ・ラームやダビド・アラバを偽サイドバックとして起用したようにーーグアルディオラの実験は続き現在ではカンセロロールが発明されているーーシャビ監督もまた、大一番でアウベスのポジションを特殊なものにすることで主導権を握ろうとしていた。
■バルセロナへの敬意
もうひとつ、変わった点がある。それは以前に比べて、ラ・リーガのチームがバルセロナをリスペクトしなくなったということだ。
“ペップ・チーム“と対峙する際、大半のチームが自陣にベタ引きしてバルセロナを迎え撃った。いわゆるゴール前にバスを置く布陣で、スペースを潰して攻撃者の自由を奪おうとした。
だが現在のラ・リーガでは、バルセロナ相手にリトリートを選択するチームは多くない。アラベス、エスパニョール、グラナダといったチームでも前からプレスを掛け、高い位置でボールを奪いにいく。
全体的に戦術のトレンドが変化したというのはある。しかしながらバルセロナを前に、自陣に引いて守るというのを選ばなくなったチームが増えたという事実は軽視できない。
先述の通り、バルセロナは今冬の移籍市場で4選手を補強した。4名中、3名がアタッカーだ。
ポスト・メッシ時代を乗り越えるため、攻撃の選手が必要だった。一方で、マルティン・ブライスワイト、メンフィス・デパイ、ルーク・デ・ヨング、フェラン・ジュグラ、エズ・アブデ、イリアス・アコマック、ウスマン、デンベレと現在のバルセロナではアタッカーが飽和状態にある。「数」で埋め合わせるだけでは、厳しい。そこにシャビ監督の戦術が加わり、初めて高みに望める可能性が生じる。
アトレティコとの一戦で、その一端は見えた。あとは継続だ。何より、勝利しながら持続させる、という大きなミッションが指揮官と選手たちを待ち受けている。