井岡は4階級制覇にあと一歩届かず 得意の距離感を活かせず僅差の判定負け
ボクシングWBO世界スーパーフライ級王座決定戦で、 同級1位のドニー・ニエテスと同級3位の井岡一翔が対戦した。井岡とニエテスはお互いに下の階級から階級を上げて、4階級制覇を目指し対戦した。
長距離なら井岡、近い距離はニエテス
ゴングが鳴って気づいたのは、両者の体格差だ。お互いに下の階級から上げてきたが、体格では一回りほど井岡が大きく感じた。井岡はフライ級では高い身長で165cmある。一方ニエテスは、160cmで両者は5cmほどの身長差がある。そのため長い距離では井岡がリーチを活かし、有利に試合を進めていった。長距離では井岡がジャブをつき、中間距離ではニエテスが強打を振って持ち味を発揮した。
井岡は抜群の距離感を持っている。相手が来る時には間合いを外し、自分が攻める時は長い距離からパンチを打ち込む。打ってもらわない絶妙な距離で戦う能力を持っている。
お互いベテラン同士で、ハイレベルな攻防が繰り広げられた。持ち味を発揮してどちらに採点を振りえるか、非常に悩ましいラウンドが続く。パンチを上下に散らして、打ち分けながら攻める井岡に対して、ニエテスは強いパンチで応戦していった。
パワーのニエテスとヒット数の井岡
ひとつ気になったのは、両者のパワーの違いだ。ヒット数が多い井岡に対して、ニエテスのパンチは1発1発が強くインパクトがある。パッと見の見栄えでは、ニエテスのパンチが迫力があった。井岡のパンチの方がヒットしているが、印象という点ではニエテスが上回った。
ラウンドの前半から中盤までリードしていても、1発のパンチで印象が変わりポイントを挽回されてしまっていた。フライ級とスーパーフライ級では、階級が上がることでパンチの破壊力が変わる。井岡は23勝のうち13のKO勝ちがあり、KO率でいうと56%だ。
一方ニエテスは、41勝のうち23のKO勝ちがある。こちらも56%になる。偶然にも両者同じKO率だが、タイミングと戦略で勝ってきた井岡に対して、ニエテスの方がパワーを活かしている印象があった。そのためパワーがあるニエテスの方が、見栄えが良かった。
得意な距離感を活かせなかった
井岡のボクシングはジャブで相手をコントロールしてペースを掴み、ボディを打って相手を弱らせていく。そして、相手を弱らせたところでタイミングのいいパンチを放ち、手数をまとめてKOに繋げるスタイルだ。
今回も前半から積極的にボディを打つために距離を詰めていった。ボディを打つためには、近い距離に潜り込まないといけない。ボディを打ちにいくと、その距離は相手の間合いに入り込む事でもあった。近づいてボディを攻めた時に、ニエテスは得意のアッパーやフックなどを強振して、勢いを止めるように攻めてきた。
今回の試合でも、ニエテスをボディで弱らせて得意のペースに持ち込もうとしていたが、距離が詰まってしまい思うように攻めきれなかった。
ジャッジの採点基準で分かれた結果
ジャッジの採点は、118-110、116-112でニエテス、116-112で井岡と2-1の判定でニエテスを支持した。ジャッジによって勝敗が割れる際どい試合となった。
私の採点では116-112で井岡だった。1発の強打のニエテスを取るか、井岡の試合運びを取るかで採点も競った印象だ。本人も試合後のインタビューで「今日は僕の日じゃなかったということ」と無念を口にしていたが、まだまだ世界のトップレベルで戦い抜ける実力はあるだろう。
この階級で戦っていくことを考えると、もう少しパワーが欲しいところだ。スーパーフライ級は米国でも人気があり、SUPERFLY4が3月末にアメリカで開催される予定だ。再度のチャレンジに向けて、進化していく必要性がありそうだ。