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「井上尚弥と戦ってみたい?」S・バンタム級王者アフマダリエフに直撃インタビュー

杉浦大介スポーツライター
Ed Mulholland/Matchroom

11月19日 ニューハンプシャー州マンチェスター SNHUアリーナ

WBAスーパー、IBF世界Sバンタム級タイトル戦

王者

ムロジョン・“MJ”・アフマダリエフ(ウズベキスタン/27歳/10戦全勝(7KO))

12回判定(119-109x3)

挑戦者

ホセ・ベラスケス(チリ/32歳/29勝(19KO)7敗2分)

 *今回のムロジョン・“MJ”・アフマダリエフのインタビューは19日の試合後、通訳を通じて収録された

2団体統一王座を2度目の防衛

――大差の判定勝利を飾ったベラスケス戦をどう振り返りますか?

アフマダリエフ(以下、MA) : 良い試合でしたし、私にとっても良い1日になりました。タフな選手と12ラウンドを戦い、良い経験になったと思います。多くのパンチを打ち込みましたが、彼は立ち続け、抵抗をやめませんでした。

――過去にKO負けがない選手とはいえ、格下と目されていたベラスケスがあれほどの打たれ強さを示したことに驚かされましたか?

MA : 正直、驚きました。手応えのあるクリーンヒットは何発もありましたし、耐え抜くとは到底思いませんでした。ただ、おかげでまたフルラウンドを経験できました。先ほども話した通り、プロ10戦目でこのような相手と戦えたことは良い経験ですし、将来に生きてくると思っています。

――岩佐亮佑(セレス)選手を5回TKOで下した4月の試合と比べ、コンディションはどうだったのでしょう?

MA : 岩佐は素晴らしいウォリアー。あの試合も容易な戦いではありませんでした。岩佐は強打者であり、実績豊富な暫定王者だったので、今回よりも一段難しい試合だったことは間違いありません。今戦は度々日程が変わったため、6ヶ月間の中で3度のトレーニングキャンプをこなさなければなりませんでした。約半年にわたってピークを保つのはやはり難しく、それがコンディショニングに少し影響したことは否定しません。

――対戦相手が指名挑戦者のロニー・リオス(アメリカ)からベラスケスに変わっただけでなく、日程、開催地もなかなか定まりませんでしたね。

MA : それに加え、調整期間中の8月下旬に新型コロナウイルスに感染したため、やはり万全な状態ではありませんでした。症状はあり、数週間は休むことを余儀なくされました。練習復帰直後はすぐに息切れしてしまい、おかげで岩佐戦と同様の状態ではなかったのです。ただ、100%のコンディションではなかったとしても、最終的には納得のいく状態までには仕上げられ、ハイペースで12ラウンドを戦えたのは良かったと思います。

ベラスケス(左)の粘りに遭い、戦前の予想に反して容易な試合ではなかった Ed Mulholland/Matchroom
ベラスケス(左)の粘りに遭い、戦前の予想に反して容易な試合ではなかった Ed Mulholland/Matchroom

――こうして最新の防衛戦をクリアし、今後が注目されます。まずは先送りになったリオスとの指名戦をこなし、その後に統一戦となるのでしょうか?

MA : 私の最大目標はスーパーバンタム級の4団体統一王者になること。27日にはWBO王者スティーブン・フルトン(アメリカ)とWBC王者ブランドン・フィゲロア(アメリカ)が統一戦を行うので、その勝者がターゲットになります。ウズベキスタン史上初の4団体統一王者になれたら、私にとって夢の成就です。その一方で、指名挑戦権を持つリオスがチャンスを得るべきであることは理解しています。まずは新型コロナウイルスで陽性になったリオスが早く健康な身体を取り戻すことを願っていますし、WBAから指名戦挙行を命じられた場合、もちろんその通りにするつもりです。

――27日はラスベガスに行き、フルトン対フィゲロア戦をリングサイドで見るつもりでしょうか?

MA : いえ、私はすでに6ヶ月間をアメリカで過ごしてきました。すぐに母国に戻り、家族に会うつもりです。

――WBC、WBOの統一戦はどちらが勝つと思いますか?

MA : フルトンの試合は一戦しか見たことがありませんが、フィゲロアはジムメートなので毎日のように顔を合わせます。友人と言える関係ではありませんが、彼は良い人間ですし、今戦でも勝って欲しいと願っています。ただ、これはボクシングなので、試合当日により優れているものが勝ち残るのでしょう。

井上尚弥との対戦は”目標の1つ”

――一階級下のバンタム級では井上尚弥(大橋)選手が同じく4団体統一を目指しており、統一後にはスーパーバンタム級への昇級が予想されています。いずれ井上選手と戦ってみたいという気持ちはありますか?

MA : 井上は偉大なチャンピオン。世界最高のボクサーの1人です。彼のファイトスタイルは大好きですし、もちろんぜひとも戦ってみたい選手です。私にとって大きな挑戦になるはず。非常に高く評価されている選手でもあるので、彼のようなボクサーと戦うことが私の目標の1つでもあります。対戦が実現するなら、バンタム級でもスーパーバンタム級でも構いません。互いに4団体統一に成功し、統一王者同士で対戦できれば最高ですね。

――あとどのくらいスーパーバンタム級で戦うつもりですか?

MA : 私はスーパーバンタム級では身体が大きい方ではなく、減量などほとんど必要ありません。バンタム級にも問題なく落とせるくらい。体重調整が理由で階級を変えることはないはずです。

――井上選手と実際に対戦することになったら、どのように戦いますか?

MA : 1つ言えるのは、アクション満載の激しい試合になるということです。井上は才能に恵まれていて、パワフルで爆発力がある選手。一方、私もパワフルで爆発力があります。攻撃的なボクサー同士の激突なのだから、すごいファイトになることは間違いないと思っています。

――仰る通り、あなたは非常に攻撃的な選手ですが、幼少期から好きだったボクサー、手本にしたボクサーは誰だったんでしょう?

MA : ずっとマニー・パッキャオ(フィリピン)が大好きで、パッキャオのスタイルを学んでもきました。アマチュア時代にはワシル・ロマチェンコ、オレクサンデル・ウシク(ともにウクライナ)も手本にしましたし、憧れでした。あとはマイク・タイソン、ロイ・ジョーンズ・ジュニア(ともにアメリカ)といったみんなが大好きだった選手は私も好きでした。

――ボクサーとしてのキャリアの最終目標は?

MA : 1歩ずつ前に進んでいきたいと考えていて、今の私の頭にはスーパーバンタム級の4団体統一王者になることしかありません。その先のことは、次の目標を達成してから。おそらく階級を上げたり、他の挑戦を模索することになるのでしょう。ただ、今はまず1戦1戦を大切に戦うことだけを考えていきたいと思っています。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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