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イラク軍が重火炎放射システムTOS-1Aを市街地で使用

JSF軍事/生き物ライター

イラク軍が武装集団・イスラム国(IS)との戦いで、ロシアから購入した重火炎放射システムTOS-1Aを北部の都市ベイジの市街地で使用していました。

  • 2014年11月、ベイジ市街戦に投入されるイラク軍のTOS-1A

TOS-1Aは開発元のロシアが「重火炎放射システム」と銘打っている通り、目標をサーモバリック弾(燃料気化爆弾の進化したもの)の爆発火球で包み込みます。

そして特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)では焼夷兵器の使用の制限の項目があり、人口周密区域での使用は禁止されています。ただしサーモバリック弾がCCWにおける焼夷兵器の定義「物に火炎を生じさせ又は人に火傷を負わせることを第一義的な目的として設計された武器」に該当するかどうかは議論の分かれるところで、あくまでサーモバリック弾が着火目的ではなく爆風効果を第一義目的とした兵器であるとすれば焼夷兵器には該当しなくなります。ですが、開発元のロシアはTOS-1Aの事を堂々と「重火炎放射システム」と銘打っているので、これが焼夷兵器ではないという言い分が果たして通るのでしょうか? 

市街地での焼夷兵器使用に付いての議論は以前にもアメリカ軍やイスラエル軍が使用した白燐弾が問題になった事があります。しかしCCWの定義では「焼夷効果が付随的である弾薬類。照明弾、曳光弾、発煙弾、信号弾は焼夷兵器に含めない」とあり、発煙弾である白燐弾は制限の対象外であることは明白でした。それではサーモバリック弾は、このTOS-1A重火炎放射システムはどうなるのでしょう。TOS-1Aは対人掃討用に設計され殺傷力は非常に高く、発煙弾として設計された白燐弾とは比べ物にならないほど強力な兵器です。

それなのにTOS-1Aを市街地で使用した事がほとんど騒がれていないのは、何故なのでしょうか。

  • ロシア軍の演習でTOS-1Aのサーモバリック弾が着弾する様子
軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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